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2009年11月26日

健康食品の表示、消費者庁が検討会の初会合

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 消費者庁は25日、健康食品について有識者が議論する検討会の初会合を開いた。一般の半数が特定保健用食品(トクホ)を、約4分の1が栄養機能食品を利用しているという報告があり、食品の安全性への関心が高まっている。

 消費者庁は「健康食品の表示に関する検討会」(座長:田中平三・甲子園大学長)の初会合を開き、特定保健用食品(トクホ)など健康食品の表示制度の今後のあり方について議論を始めた。検討会のメンバーは研究者、消費者団体関係者、弁護士ら13人。
トクホなど健康食品の表示制度を見直し
 トクホは、実験データなどをもとに製品の安全性や有効性を国が承認、「食後の血糖値の上昇を緩やかにする」「食後の血中中性脂肪が上昇しにくい」など通常の食品には認められていない特定の保健の用途の表示が許可されている。トクホ許可第1号が誕生したのは1993年、現在までに900品目近いトクホが誕生し、市場規模は約6800億円と推定される。

 「体に脂肪がつきにくい」という効果を掲げたトクホの食用油「エコナ」に、今年7月に体内で発がん性物質に変わる可能性が指摘された成分「グリシドール脂肪酸エステル」が微量、含まれている疑いが出てきたのがきっかけとなった。

 グリシドール脂肪酸エステルの安全性に関する研究や報告はほとんどなく、現在調査が行われている。同製品は9月に一時販売が自粛され、出荷も停止されたが、安全性を確かめている段階のトクホ品目をどう扱うかが問題になった。

 国が食品に健康表示を許可するトクホ制度は、世界的にみても保健政策での先駆けとなった。欧米でも日本の制度にならって、健康食品の表示制度の導入が進められている。米国では1990年に制定された栄養表示教育法(NLEA)で健康強調表示が定められており、EUでも栄養・健康強調表示規則が2007年より適用された。

 会合では「健康食品の定義が国民には分かりにくい」「より分かりやすい表示制度が必要ではないか」といった意見が出され、健康食品の虚偽広告や誇大広告を規制している健康増進法の規定についても、より実効性を高めたい考えが示された。トクホを含めた健康食品表示の見直しへ向け、来年3月までに一定の見解を示すよう求める方針。

トランス脂肪酸 表示義務付けへ
 消費者庁は24日、多量摂取を続けると勤脈硬化を引き起こし心臓疾患の危険を高めるとされるトランス脂肪酸について、商品への含有量の表示義務付けを検討することを決めた。

 トランス脂肪酸は、トランス型の二重結合を有する不飽和脂肪酸。天然の植物油にはほとんど含まれないが、水素を添加して硬化するマーガリンやショートニングでは製造過程で発生する。トランス脂肪酸は「悪玉」のLDLコレステロールを上昇させ、「善玉」のHDLコレステロールを減少させるという報告があり、米国などでは含有量の表示が義務づけられている。

 消費者庁によると、平均的食生活を営む日本人はトランス脂肪酸の摂取量が少く、ほぼ心配はないが、トランス脂肪酸を含む食用油を使ったスナック菓子や揚げ物を大量にとるなど偏った食事をしていると摂取量が増えるおそれがあり、注意を促す必要があると判断したという。

 食事の栄養バランスや摂取エネルギー量については、文科省や農水省などが推進する「食育」も関連してくる。また、さまざまな加工食品にトランス脂肪酸が含まれている可能性があり、食品ごとの含有量の表示は難しいという指摘もある。福島瑞穂・消費者行政担当相は会見で「表示するに当たり、何が困難かを検証したい。国際的な動向もふまえ、国民の健康の増進を図る観点から検討する」と述べた。

健康食品の表示に関する検討会(消費者庁)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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