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2009年11月26日

食事と運動で糖尿病を長期にわたり予防できる:DPPアウトカム試験

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 食事と運動による生活習慣の改善が、長期にわたり2型糖尿病を予防するとする研究が米国で発表された。糖尿病発症の遅延・予防効果がもっとも大きかったのは食事療法と運動療法で、生活習慣改善や経口薬(メトホルミン)投与による糖尿病の予防効果は、10年が経過しても維持されるという。

 この研究成果は、「糖尿病予防プログラム(DPP)」の長期フォローアップ(DPPアウトカム試験:DPPOS)の結果からあきらかになったもので、英医学誌「Lancet」オンライン版に10月29日に掲載された。

 高血糖、過食や運動不足などは糖尿病発症の危険因子となる。「DPP」は生活習慣改善や経口薬(メトホルミン)の投与によりこれらの危険因子に介入することで、糖尿病の予防や遅延が可能かどうかを調べた大規模試験(実施期間は1996〜2001年)。

 DPPの平均2.8年の期間中に、高血糖で過体重・肥満があり糖尿病の発症リスクが高い成人を、生活習慣を改善する群、メトホルミンを投与する群、プラセボ(偽薬)を服用する群に無作為に割り付けた。その結果、食事のエネルギーと脂肪の摂取量を減らし、週に少なくとも150分間の運動を行った生活習慣改善群では、発症リスクがプラセボに比べ58%低下し、メトホルミンの投与では31%低下していた。

 米国立糖尿病・消化器病・腎疾患研究所(NIDDK)のWilliam C. Knowler博士らDPPOSの研究グループは、DPPの終了後もフォローアップを続けた。今回発表されたのは、フォローアップ期間5.7年を合わせた長期データの解析となる。

10年の糖尿病発症のリスク低下率:
生活習慣病改善群で34%、メトホルミン群で18%
 DPPの終了後、対象となった成人2766人(88%)にDPPの結果について検討してもらい、生活習慣改善についての教育セッションに参加してもらった後に、生活習慣を改善する群(910人)、メトホルミンを投与する群(924人)、プラセボ(偽薬)を服用する群(932人)に無作為に割り付けた。

 その結果、生活習慣改善群の糖尿病発症率は、プラセボ群に比べ34%低かった。これは、メトホルミン群がプラセボ群に比べ18%低かったのに比べ、より低く抑えられたことになる。生活習慣改善の効果は、特に高齢者で良くあらわれた。60歳以上では、2型糖尿病の発症は10年間におよそ半分に減少したという。

 DPP試験期間中の糖尿病発症率は、生活習慣改善群が100人・年当たり4.8例で、メトホルミン群が7.8例/100人・年、プラセボ群は11.0例/100人・年だったのに対し、今回のフォローアップ期間の糖尿病発症率は、それぞれ5.9例、4.9例、5.6例/100人・年だった。

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 研究グループは、「DPPとDPPOS研究にまたがる10年間の糖尿病の累積発症率は、生活習慣を改善した群がもっとも優れていた。DPPとDPPOS研究にまたがる10年間に、糖尿病の発症はプラセボ群に比べ、生活習慣改善群では34%減少し、メトホルミン群では18%減少した。これは糖尿病の発症を、それぞれ4年と2年遅らせることができたと解釈できる。メトホルミンによる糖尿病発症の予防あるいは遅延効果は、少なくとも10年間は続くことが示された」と結論している。

 米国人では過体重や肥満が急速に増加し、成人の3分の2以上が該当する。それに合わせて2型糖尿病も急増している。米国立衛生研究所によると、2400万人の成人の11%は糖尿病で、うち95%は2型糖尿病だという。研究者らは、「体重管理と生活習慣改善を長期的に行うことが2型糖尿病の発症を減らすことがDPPOS試験で確かめられた意義は大きい。糖尿病を予防することの恩恵は、糖尿病合併症の予防にもつながる」と述べている。

10-year follow-up of diabetes incidence and weight loss in the Diabetes Prevention Program Outcomes Study
The Lancet, Volume 374, Issue 9702, 1677-1686, 14 November 2009

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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