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2009年08月27日

医療現場の「ヒヤリ・ハット」過去最多の22万件

 「ヒヤリ・ハット事例」とは、深刻な事故には至らないものの、事故につながりかねない一歩手前の事例をいう。医療の現場での「ヒヤリ・ハット事例」が2008年、全国の236の主要医療機関(参加登録医療機関 1137)で22万3981件に上ったことが、日本医療機能評価機構のまとめでわかった。前年を1万4765件上回り、統計を取り始めた2004年度以来、過去最多となった。

 厚生労働省は2001年10月からヒヤリ・ハット事例を収集・分析し、その改善策など医療安全に資する情報を提供する「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)」を開始した。2004年度からは、日本医療機能評価機構が事業を引き継ぎ行っている。

 医療機関からの自主的な報告がこの調査の基盤で、多くの医療機関で事例を共有して、事故を未然に防いでいこうというのが目的となる。同機構は事例数が過去最多となったことについて、「軽微な事例を報告する姿勢が定着したからで、医療の質が低下しているわけではない。安全に関する意識の高まりがあらわれている」としている。

 ヒヤリ・ハット事例でもっとも多かったのは、薬の「処方・投薬」(4万6,952件、21.0%)で、次いで「ドレーン・チューブ類の使用・管理」(14.3%)、「療養上の世話」(8.4%)、「検査」(5.8%)と続く。原因別では、薬剤名などの「確認不十分」(14万321件、24.4%)、「観察不十分」(12.6%)、「判断の誤り」(8.3%)などのミスが目立つ。

 糖尿病療養に関しては、インスリンの単位数を誤認し過量投与となった事例が報告された。この事例では、患者の低血糖状態が持続したためインスリンの量を確認したところ、通常の10倍量を投与していたことが分かった。その他にも、血糖自己測定器のセンサーを指定のものと取り違えて測定し、間違った測定値が表示された事例。採血用穿刺器具の不適切な使用に関連した事例。腹膜透析を行っている患者に血糖測定を行い、測定器の測定法の違い(GDH法とGOD法)によって血糖値が高値を示し、インスリンを過量投与した事例―などが報告されている。

 当事者の職種でもっとも多かったのは「看護師」(70.4%)、もっとも多い発生場所は「病室」(55.3%)。看護師は医療の最前線で、医師と並び医療サービスの最終的な提供者であることが多いので、医療システム上の問題を反映しやすいとも考えられる。

医療事故情報収集等事業(財団法人日本医療機能評価機構)
  平成20年年報(PDFファイル)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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