甘草根と甘草根を刻んだもの
カンゾウ(甘草)はマメ科の多年草
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理化学研究所などの共同研究チームは、カンゾウ(甘草)から抽出される甘味成分「グリチルリチン」を合成する酵素遺伝子を発見したと発表した。研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences」オンライン版に掲載される。
マメ科の多年草「カンゾウ(甘草)」から抽出される成分(カンゾウエキス)の主要成分である「グリチルリチン」は、砂糖の150〜300倍の甘さをもつ。生薬として用いられるほか、低カロリーの天然甘味料など数多くの食品に添加されている。肝機能補強
機能や抗ウィルス作用などの薬理効果からの需要も高く、最近では、メタボリックシンドロームやガンの予防に効果的な食品としても注目されている。「甘草根」の輸出額は世界中で年間4200万ドルに上るという。
栽培されたカンゾウのグリチルリチンの蓄積量は低いため、供給は野生のカンゾウの採取に依存している。中国や中近東などの乾燥地域に自生しているが、近年では、乱獲や環境破壊、種の絶滅が深刻な問題となっている。カンゾウ1kgの採取で5m
2の草原が破壊されるとの報告もあり、生産国では輸出規制が始まっている。
栽培されたカンゾウでは、「グリチルリチン」の蓄積量が少なく、安定的に供給するために「グリチルリチン」を合成する仕組みの解明が求められていた。そこで理化学研究所、横浜市立大、千葉大、京大、日大、常盤植物化学研究所の共同研究チームは、「グリチルリチン」を産生する根や地下茎での発現性が高く、産生しない地上部での発現がほとんどない5つの遺伝子を選び、これらの機能を解明する研究に取り組んだ
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その結果、5つの遺伝子のうちの1つが、「グリチルリチン」を生合成する中間体である「11-オキソ-β-アミリン」に変換する活性をもつことがわかった。この遺伝子を「CYP88D6」と名付け、その産物が植物の合成で重要な働きをする「チトクロームP450」と呼ばれる一群の酸化酵素の1つであることを突きとめた。
「グリチルリチン」の生合成の鍵となる酵素遺伝子を同定し、生合成の中間体を酵母で高蓄積させることに成功したことで、今後はカンゾウへの品種改良や栽培条件の最適化の研究が可能になるとしている
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独立行政法人理化学研究所
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所