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2008年08月26日
2型糖尿病の発症しやすさを遺伝子で解明 日本の2研究グループが発表
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2型糖尿病の発症しやすさに強く関わる遺伝子を、厚生労働省のプロジェクトチーム(春日雅人サブリーダー)と、理化学研究所の研究チーム(前田士郎チームリーダー)が、それぞれ日本人を対象にした2つの研究で突きとめた。研究成果はそれぞれ米国の科学誌「Nature Genetics」9月号に発表された。
2型糖尿病の発症には、生活習慣とともに遺伝的な要素が関連していることがわかっているが、日本人を含む東アジア人の2型糖尿病に強く関わる遺伝子はこれまで分かっていなかった。 両チームは、日本人のDNAを数千人規模で詳しく調べ、糖尿病患者とそうでない人で、遺伝子の塩基配列が1ヵ所だけ違う「一塩基多型(SNP、スニップ)」があるかを調べ、糖尿病の発症との関連を統計学的に解析した。 その結果、「KCNQ1」という遺伝子の変異が深く関わっていることを発見した。この遺伝子は心臓の筋肉で重要なはたらきをすることが知られているが、変異があるとインスリンの分泌低下を招き、2型糖尿病の発症リスクが1.3〜1.4倍に高まるという。日本人の2型糖尿病のおよそ2割が、「KCNQ1」の1塩基の違いが影響していると推察している。 2型糖尿病の遺伝的要素は人種によって差がある。両チームはシンガポール人、デンマーク人などでもそれぞれ数千人規模で調査した。その結果、KCNQ1は日本人をはじめとする東アジア人で強力な関連遺伝子であることも発見した。 今回の研究は糖尿病発症のメカニズムを解明するともに、新たな治療や予防の開発につながると期待されている。2型糖尿病の発症には、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」と、インスリンの分泌が悪くなる「インスリン分泌低下」が関わっている。研究チームは「検査で遺伝子の変異のあることがわかれば、生活習慣の改善に取り組むことで効果的に発症を予防できるようになるかもしれない」と話している
Nature Genetics 40, 1092 - 1097, 2008.
Nature Genetics 40, 1098 - 1102, 2008.
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所