「ガソリンの価格が高騰すると、歩いたり運動する時間が増え、レストランなどでの外食が減る。その結果、肥満の割合が低くなる可能性がある」という研究結果が米国で発表され話題になっている。
原油価格の高騰が発端となり、ガソリン価格や原材料、生活必需品の高騰など、さまざまな問題が生じている。しかし、米国ではエネルギー価格の上昇がもたらすメリットにも目を向けようという試みが行われてい
る。
この研究はノースカロライナ大学のチャールズ・コートマンシェ助教授(医療経済学)が発表したもの。1984年から2004年までの米国の数州のデータをもとに、平均体重や肥満率とガソリン価格の関連を調査した
。
その結果、ガソリン価格が1ドル下がるにつれ、米国の過体重や肥満が増えていったことが分かった。米国では1979年から2004年に肥満率が8%上昇した。これは、この期間にガソリン価格が安くなったことに起因しているという
。
「ガソリン価格が高騰すると、出費を抑えようとして乗用車を使う頻度が減る。公共機関を利用したり、ウォーキングやサイクリングで移動する機会が増える。車で外出しなければならないレストランでの外食も減るだろう。家庭での食事が増えれば、高カロリー・高脂肪の食事を控えるようになるかもしれない」としている
。
米国成人の肥満率は、1970年代に比べ2倍以上に増えた。肥満は高血圧、2型糖尿病、心筋梗塞などの発症増加につながる。患者や家族だけでなく医療経済への負担も大きい。
研究者はガソリン高の医療経済への影響を試算し、「ガ
ソリンが1ドル高くなると、7年で過体重は7%、肥満は9%減少する計算になる。肥満を減らすことで毎年1万1000人の死亡を防ぎ、110億ドル(約1兆2000億円)の医療費を節減できる」としている。ガソリン高は悪いことばかりではなく、結果的に健康増進に役立つ面もあるということのようだ
。
人々が燃費の良い乗用車を利用するようになり、運転速度を落としてガソリンの消費を控えるようになれば、結果として交通事故の発生率が減るかもしれない。大気汚染による呼吸器病が減る可
能性も指摘されている。
明るい希望? ガソリン価格と肥満の関連(英文)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所