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2016年05月27日
高齢者の糖尿病の目標が決定 低血糖を避けながら血糖コントロール

高齢者の糖尿病で、今年から新しい治療目標が決まった。また、治療のためには、加齢とともに減ってしまう筋肉を維持することも大切だ。
高齢者の低血糖は重症化しやすい
糖尿病有病者の数は950万人。糖尿病は高齢者に多く、60歳代の3割以上、70歳以上で4割前後が、糖尿病またはその予備群だ。治療の基本は血糖値の上昇を抑えることだが、高齢者の糖尿病治療では特別な注意が必要となる。
日本糖尿病学会と日本老年医学会は合同委員会を設け、高齢者が目指すべき血糖コントロールの目標を定めて、5月の糖尿病学会の年次学術集会で発表した。
一般成人の目標は、過去1~2ヵ月の血糖の状態を示すHbA1c値が「7.0%未満」だが、これに対し高齢者では、健康状態や使用している薬の種類に応じて、目標となるHbA1c値が「7.0%未満」「7.5%未満」「8.0%未満」「8.5%未満のいずれかになる。
高齢者の目標がやや緩めなのは、低血糖を予防しながら治療するためだ。高齢者糖尿病の健康寿命を維持するためにはどのような治療が必要なのかを明らかする目的で行われた「J-EDIT研究」などの成果を参考にしている。
60歳以上の糖尿病のある人を対象に、HbA1cと合併症が起こる危険度の関連を調べたところ、HbA1c値が高いほど合併症の危険性は高くなっていた。ところが、脳卒中の危険性について調べると、7%台がもっとも危険性は低く、値が高いほど危険性は上昇したが、6%未満でも脳卒中などの危険性はむしろ上昇していた。
こうした結果が出たのは、HbA1cが低い人の中に低血糖をしばしば起こしている人がいるからだと考えられている。
高齢者が低血糖を起こしやすい理由
低血糖を起こしやすい薬を知る
低血糖を防ぐために、自分が使用している薬について知ることが大切だ。低血糖を起こしやすいのは、「インスリン製剤」「スルホニル尿素薬(SU薬)」「速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)」だ。これらの薬をいつも通りに使用していても、食事量が少なかったり、食事の時間が遅れたり、いつもより激しく体を動かしたりすると、血糖値が下がり過ぎることがある。
高齢者の血糖コントロール目標は健康状態や治療薬で決まる
高齢者の血糖コントロールの目標値は、健康状態と使用している薬の種類で変わる。健康状態は、認知機能の状態と、日常生活動作(ADL)をどの程度できるかで、3種類のカテゴリーに分類される。
薬については、低血糖を起こす可能性のあるインスリン製剤、SU薬、グリニド薬などを使用しているかどうかで目標値が変わっていく。
カテゴリー1
認知機能で正常で、日常生活動作(ADL)も安定しており、自立して生活できる人。DPP-4阻害薬やビグアナイド薬(メトホルミン)など、低血糖が心配される薬を使用していなければ、HbA1cの目標値は7.0%未満だ。
低血糖を起こす可能性のある薬を使用している場合は、65~74歳なら7.5%未満、75歳以上なら8.0%未満が目標値となる。
認知機能で正常で、日常生活動作(ADL)も安定しており、自立して生活できる人。DPP-4阻害薬やビグアナイド薬(メトホルミン)など、低血糖が心配される薬を使用していなければ、HbA1cの目標値は7.0%未満だ。
低血糖を起こす可能性のある薬を使用している場合は、65~74歳なら7.5%未満、75歳以上なら8.0%未満が目標値となる。
カテゴリー2
認知機能に軽い障害があるか、日常生活活動(手段的ADL)が低下している人。「手段的ADL」は、買い物や洗濯、掃除などの家事全般や、金銭管理や服薬管理、外出して乗り物に乗ることなど、社会生活を行う上で必要となる動作を自分でできる場合をさす。
低血糖が心配される薬を使用していなければ、HbA1cの目標値は7.0%未満だ。低血糖を起こす可能性のある薬を使用している場合は、8.0%未満が目標値となる。
認知機能に軽い障害があるか、日常生活活動(手段的ADL)が低下している人。「手段的ADL」は、買い物や洗濯、掃除などの家事全般や、金銭管理や服薬管理、外出して乗り物に乗ることなど、社会生活を行う上で必要となる動作を自分でできる場合をさす。
低血糖が心配される薬を使用していなければ、HbA1cの目標値は7.0%未満だ。低血糖を起こす可能性のある薬を使用している場合は、8.0%未満が目標値となる。
カテゴリー3
認知症がある程度進んでいたり、日常生活活動(基本的ADL)が低下している人。「基本的ADL」は、移動、階段昇降、入浴、トイレの使用、食事、着衣、排泄などの、身の回りのことをするために最低限必要なことで、これができないと日常生活活動が大きく低下してしまう。
低血糖が心配される薬を使用していなければ、HbA1cの目標値は8.0%未満だ。低血糖を起こす可能性のある薬を使用している場合は、8.5%未満が目標値となる。
認知症がある程度進んでいたり、日常生活活動(基本的ADL)が低下している人。「基本的ADL」は、移動、階段昇降、入浴、トイレの使用、食事、着衣、排泄などの、身の回りのことをするために最低限必要なことで、これができないと日常生活活動が大きく低下してしまう。
低血糖が心配される薬を使用していなければ、HbA1cの目標値は8.0%未満だ。低血糖を起こす可能性のある薬を使用している場合は、8.5%未満が目標値となる。
血糖コントロールの下限値も決められている
低血糖が心配される薬を使用している場合に限り、目標値の下限も決められている。これより低い値では低血糖のリスクが高まると考えられているからだ。カテゴリー1の場合、65~74歳のHbA1cの下限値は6.5%、75歳以上は7.0%だ。カテゴリー2は7.0%、カテゴリー3は7.5%となっている。
高齢者では筋肉が減ると糖尿病も悪化しやすい
高齢者の糖尿病対策では、筋肉を減らさないことも大切だ。高齢になると、加齢や生活習慣などにより、筋肉の量が減ったり、筋力が低下することが多い。これが進んでしまった状態を「サルコペニア」といい、糖尿病がさらに悪くなる原因にもなるので避けなければならない。
筋肉はエネルギー源として多くのブドウ糖を消費する臓器だ。筋肉が減ってしまうと、体でのブドウ糖の消費が減ってしまい、血糖値が上がりやすくなってしまう。
第59回日本糖尿病学会年次学術集会
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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