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2013年08月07日
薬局でHbA1c値を測定し3割に受診勧奨 糖尿病診断アクセス革命
プロジェクトは2010年10月にスタート。現在は東京都足立区と徳島県内のそれぞれ10店舗の薬局で展開した。参加薬局に、1マイクロリットル(1,000分の1ミリリットル)という微量の血液でHbA1c値を測定する小型検査機器を設置した。
検査を希望する人は、薬剤師の説明を受けた上で、指先で自己穿刺採血を行い測定する。結果はその場でわかり、糖尿病や予備群が疑われる場合には、薬剤師が連携医療機関への受診を勧め、早期治療へ導くという仕組み。医療機関や健診施設よりも身近な場所にある薬局を活用し、地域医療連携を活性化するのが狙いだ。
検査を受けた2,514人のうち、糖尿病と強く疑われた人(HbA1c6.5%以上)は約12%、予備群の可能性が高い人(HbA1c6.0〜6.4%以上)は約16%で、3割に医療機関へ受診勧奨を行い、症状が悪化する前に治療を始められる可能性が開けた。全体の43%は定期的な健康診断を受けておらず、「糖尿病診断アクセス革命」が新たなスクリーニング検査の場を提供した。
日本では、糖尿病が「強く疑われる人」は890万人、「可能性を否定できない人」は1,320万人で、合計2,210万人が糖尿病の危険性が高いと推定されている。実際に医療機関を定期受診している糖尿病患者数は約270万人とみられており、糖尿病有病者の約4割はほとんど治療を受けていない。
「糖尿病の検査と治療を受けていない人の方がずっと多い現実があり、目の前の患者さんの治療だけを行っていれば十分というわけではありません」と矢作先生は話す。
「糖尿病は初期には自覚症状が乏しいため、早期発見のために血液検査は特に重要です。薬局と医療機関の地域連携によって、早期発見・受診勧奨をするシステムが有用であることが示されました」としている。
ただ、薬局で検査を受けることは臨床検査技師法の運用で制限される場合がある。これまでプロジェクトを展開する上で、保健所の許可を得られるかどうかが地域ごとに異なるという課題も浮かび上がった。今後、このような活動がより広く展開されるよう、規制緩和の必要性を指摘している。この点については現在、国の規制改革会議や産業競争力会議などで検討が進んでいるという。
糖尿病診断アクセス革命(矢作直也代表)は、「指先微量採血によるHbA1c測定」を用いて血液検査へのハードルを下げ、広く検査の機会を提供することで、未発見・未治療の糖尿病の患者さんや糖尿病予備群の方々をすくい上げ、糖尿病を減らすことをめざす地域医療連携プロジェクト。
筑波大学と糖尿病診断アクセス革命事務局を中心に、東京都足立区では、NPO法人ADMS・足立区薬剤師会・足立区医師会、徳島県では徳島文理大学との共同研究として行われている。
http://a1c.umin.jp/
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