糖尿病セミナー
32. 糖尿病予備群
2014年9月 改訂
監修・編集
東北大学名誉教授 後藤由夫先生
糖尿病予備群のゆくえは...
糖尿病、心臓病、脳卒中になりやすい!
糖尿病予備群――。最近、テレビや新聞、雑誌でよく見かける言葉です。「予備」とは、ある状態になる前段階ということですから、糖尿病予備群は、糖尿病になる準備が整いつつある人たちという意味。まだ糖尿病と診断はできないけれども、そのままではいずれ糖尿病になる確率が高いということです。本当の糖尿病になってしまうと、食事療法、運動療法、薬物療法(飲み薬やインスリン注射など)を、毎日しっかり続け、定期的に通院しなければなりません。糖尿病になってから治療し始めるよりも、今の段階で健康に気をつけ、糖尿病にならないようにしたほうが、ずっと'得'です。
また近年、糖尿病や糖尿病予備群の人の中には、メタボリックシンドロームに該当する人が増えてきました。メタボリックシンドロームは、動脈硬化が進みやすく、心臓病や脳卒中などの命にかかわる病気が起きやすい状態です。心臓病や脳卒中を防ぐためには、予備群のときから注意・予防が必要です。
糖尿病は血糖値が高くなる病気
「糖尿病」という病名
糖尿病という病名は、血液中に糖があるとわかっていなかった時代に、尿に糖が現れることからつけられた病名です。医学の進んだ現代では「高血糖症」と言うべきでしょうが、昔の病名がそのまま使われています。
糖尿病の人たちの間からは「病名を変えてほしい」という声も出されています。
糖尿病は、血液中の糖分(ブドウ糖)が増え過ぎ、血糖値が高くなる(高血糖になる)病気です。高血糖が長期間続くと、血管に障害が起こり、目、腎臓、神経、心臓、脳などに「合併症」と呼ばれる病気が起こります。
合併症を抑えるために、糖尿病を治療する
今の医学では、合併症が発病してから治すのは、なかなか困難です。ですから、血糖値が高いとわかったなら、それを正常にして合併症が起きないようにすることが大切です。血糖値をきちんとコントロールしていれば、合併症の発病・進行は抑えられます。ところが、高血糖自体には自覚症状はほとんどなく、また、合併症もだいぶ進行するまで苦痛がないことが多いのです。失明したり人工透析が必要になったり、心臓病や脳卒中の発作が起きるまで、放置されてしまうことも少なくありません。患者さん自身が病気であることを自覚しにくく、治療がおろそかになりがちなこと、それが、糖尿病で最も注意しなければならないポイントです。
コンテンツのトップへ戻る ▶
糖尿病3分間ラーニング 関連動画
糖尿病3分間ラーニングは、糖尿病患者さんがマスターしておきたい糖尿病の知識を、 テーマ別に約3分にまとめた新しいタイプの糖尿病学習用動画です。
- 01. 糖尿病とは「基礎編」
- 02. 食事療法のコツ(1) 基礎
- 03. 運動療法のコツ(1) 基礎
- 04. 高齢者の糖尿病
- 05. インスリン療法(2型糖尿病)
- 06. 血糖自己測定とは
- 06_1. 生活の中にどう生かす血糖自己測定 『生活エンジョイ物語』より
- 07. 肥満と糖尿病
- 08. 小児の糖尿病(1) 基礎
- 09. 薬物療法(経口薬)
- 10. 糖尿病生活Q&A
- 11. 糖尿病用語辞典(より簡潔に)
- 12. 病気になった時の対策 シックデイ・ルール
- 13. 結婚から、妊娠・出産
- 14. 糖尿病による腎臓の病気
- 15. 糖尿病による失明・網膜症
- 15_1. 眼科医からみた失明しないためのアドバイス 『生活エンジョイ物語』より
- 16. 糖尿病と脳梗塞・心筋梗塞
- 17. 足の手入れ
- 18. 糖尿病による神経障害
- 18_1. 糖尿病からの危険信号神経障害 『生活エンジョイ物語』より
- 19. 糖尿病の検査
- 20. 低血糖
- 21. 食事療法のコツ(2) 外食
- 22. 糖尿病の人の性
- 23. 口の中の健康
- 24. 動脈硬化と糖尿病 メタボリック シンドローム(代謝症候群)
- 25. 糖尿病と感染症
- 26. 食事療法のコツ(3) 腎症のある人の食事
- 27. 糖尿病と高血圧
- 28. 小児の糖尿病(2) 日常生活Q&A
- 29. 運動療法のコツ(2) 合併症のある人の運動
- 30. 骨を丈夫に保つには
- 31. 痛風・高尿酸血症と糖尿病
- 32. 糖尿病予備群
- 33. 小児2型糖尿病
- 34. 糖尿病とストレス うつとの関連、QOLの障害