糖尿病セミナー

眼科医からみた失明しないためのアドバイス

『生活エンジョイ物語 Vol.7-No.1(平成8年9月30日発行)』より

あきらめることはない!
糖尿病から目を守る方法はいくらでもある


 成人の失明原因の中で一番多いのが、糖尿病網膜症だ。毎年なんと約3,000人が、この病気で視力を失っている。なぜ糖尿病で失明する人がこんなに多いのだろうか。糖尿病網膜症とはどんな病気なのだろうか。失明しないためには、何に気をつければいいのか。今回は、眼科医の日比野久美子先生(真清クリニック)のお話をもとに、大事な目を糖尿病から守るとっておきの方法をご紹介する。

※眼の仕組みや網膜症については 15. 糖尿病による失明、網膜症 のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。
糖尿病網膜症とはどんな病気? なぜ失明者がこんなに多いのか なんと失明していた目が回復 ロービジョンケアとは?

糖尿病網膜症とはどんな病気?

 本題に入るまえに、糖尿病網膜症の特徴や治療法を、まず簡単につかんでおこう。

網膜はこんな働きをしている(網膜の役目)

 網膜は、よくカメラの中のフィルムにたとえられる。眼球の一番内側にあるうすい膜で、瞳孔から光となって入ってきた外界のさまざまな物体のかたちや色は、この網膜の黄斑部とよばれる場所の上で像を結ぶ。できた像は視神経を通り、脳へと送られ、外界の情報として認知されていく。

糖尿病網膜症には段階がある(網膜症の種類)

 糖尿病があると、網膜に栄養や酸素を供給している無数の毛細血管が、高血糖のために変化して、網膜の組織が障害されていく。その障害の進行程度によって、次の三つの段階に分けて考えるのが一般的だ。

■単純網膜症

 病変が、まだ網膜組織の内部の範囲にとどまっている段階の網膜症をいう。この段階では、病気の進行はゆるやかで、自覚症状もないのが特徴。ただ、中には単純型であっても、黄斑部が障害され視力低下する黄斑症という症状もあるので、油断はできない。
写真は単純網膜症。点状出血、硬性白斑が現れている。

■前増殖網膜症

 病変が、網膜の表面にまで進行してきた段階の網膜症。まだ自覚症状はない。

■増殖網膜症

 つまって用をなさなくなった毛細血管のかわりに、新しい血管(新生血管)を次々に増殖するようになった段階の網膜症。だが、新生血管はもろく、ちょっとした衝撃ですぐ出血し、硝子体出血や牽引性網膜剥離をおこして、視力障害や失明の原因をつくる。
 増殖型になっても、初期の頃は自覚症状はほとんどないが、増殖が活発化するにつれて、視力が落ちたり眼底出血などの自覚症状が出て、発見される。進行速度は早い。
写真は硝子体出血が起きている。この状態でもまだ視力がある。

こんな方法で治療する(治療方法)

A. 血糖コントロール

 失明を避けるためには不可欠で有効な治療法。食事療法によるマイルドなコントロールがベスト。薬物療法へ治療法を変更するなど、短期間に血糖が大きく変動した時は、網膜に悪影響を与えることがあるので、注意が必要だ。

B. レーザー光凝固(レーザーと略)

 新生血管や新生血管ができそうな場所を、特殊なレーザーで焼き取り、その発生や進行を食い止める。また視力を回復させる目的でも行う。

C. 硝子体手術

 硝子体出血がひかない状態が長びくと、硝子体がにごって視力障害が起きたり、出血跡が膜になって網膜をひっぱり剥離させ、失明の可能性を高める。そうした原因物質を取り除き、元の状態にもどす手術。

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