糖尿病セミナー

13. 結婚から、妊娠・出産

2014年11月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
東京女子医科大学名誉教授 大森安惠先生


糖尿病と妊娠の今と昔

 今では信じられないかもしれませんが、1960年代ごろまで、「糖尿病の人は結婚や妊娠・出産が難しい」と言われていました。糖尿病の治療がまだ十分でなかったために、妊娠・出産に伴いさまざまなトラブルが起きていたからです。医学が進歩した現在はもちろんそのようなことはありません。その一方、近年では2型糖尿病の女性が血糖コントロール不十分なまま妊娠するケースや妊娠糖尿病の増加など、昔とは別の問題が起きています。
 このページでは、初めに糖尿病女性の妊娠(糖尿病合併妊娠)を取り上げ、続いて妊娠糖尿病を、最後に出産と産後のケアについてお話しします。

I. 糖尿病合併妊娠

 糖尿病合併妊娠とは、糖尿病患者さんの妊娠のことです。糖尿病には大きく分けて1型と2型がありますが、そのタイプは問いません。ただ、理解しておく点が少し異なるので、最初にそのことに触れておきます。
    ※1型と2型の違いについては、このコーナーのNo.82833を参照してください。

1型糖尿病女性の結婚と妊娠

 冒頭で述べたように、かつて(1960年代ごろまで)、糖尿病女性の結婚や妊娠には高いハードルがありました。今では血糖コントロールが守られている限り、医学的な問題はほとんどなくなってます。ところが、ご本人が糖尿病であることにハンディを感じてしまうためか、今なお結婚をためらう若い1型の患者さんが少なくないようです。
 良好な血糖コントロールを続けていれば糖尿病でない人と違いはなく、人生を気兼ねがちに送ることはありません。たとえ糖尿病でなくても、結婚生活には苦難が伴うものです。
 結婚は、二人の愛情と理解の通過点。糖尿病であることを相手にきちんと伝え、理解を得られたなら、パートナーとして妊娠や出産を支えてもらい、新しい幸せを互いに育んでいってください。お二人で主治医をたずね、面談してもらうのもよいでしょう。ご家族の方も、二人の未来に向けて、温かいエールを送ってあげてください。

ポイントは血糖コントロールと計画妊娠

 糖尿病女性の安全な妊娠・出産のために最も重要なことは、ふだんからより良い血糖コントロールを維持しておくこと、そして「計画妊娠」です。計画妊娠とは、妊娠を希望した時点で検査を受け、医師が大丈夫と判断してから妊娠することです。
 これらの注意点は1型に限らず2型でも同じなのです。
血糖コントロールが悪いために起こるトラブル

赤ちゃんのトラブル
奇形 巨大児
子宮内胎児死亡
未熟児 低血糖
呼吸障害 黄疸
低カルシウム血症 など

母体のトラブル
糖尿病網膜症と
腎症の悪化
妊娠高血圧症候群
羊水過多症
膀胱炎 など


2型糖尿病女性の妊娠と出産

 2型糖尿病は発病から長年、全く無症状に経過するため、時には妊娠して初めて糖尿病を発見されることがあります。そのうえ、もう既に糖尿病合併症をもっていることすらあり、これが大きな問題です。
 2型糖尿病は1型と異なり生存のために治療が欠かせないわけではないので、きちんと治療していない人や糖尿病に気付いていない人が少なくないのです。その結果、血糖コントロールが良くない状態が長年続いていたり、計画妊娠(前項参照)によらずに妊娠してしまい、合併症の悪化や胎児の奇形などのトラブルが起きてしまうことが多いのです。

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