9. 薬物療法(経口薬)

2014年9月 改訂

スルホニル尿素(SU)

働く場所
 膵臓。
作用
 膵臓からのインスリン分泌を増やします。それによって肝臓や筋肉でのブドウ糖取り込みが増え、肝臓からのブドウ糖放出は減り、血糖値が下がります。
作用する時間帯
 空腹時・食後にわたって1日の血糖値を全体的に下げます。
低血糖について
 SU薬は血糖降下作用が比較的強く、空腹時などの血糖値が低い時間帯に薬の作用が強く現れた場合に低血糖が起きることがあります。
その他の副作用や注意点
 肥満を促す傾向があるので、食事療法の徹底が大切です。
特徴
 古くから使われてきた薬で、作用の持続時間や効き目の強弱などにより多くの種類があります。また、未知の副作用はあまりないと考えられます。

ビグアナイド(BG)

働く場所
 肝臓、筋肉、小腸。
作用
 肝臓で糖を作る働きを抑えるほか、筋肉や肝臓のインスリン抵抗性(インスリン抵抗性の項参照)を改善して糖の利用を促したり、小腸からの糖の吸収を抑えるなど、総合的な作用で血糖値を低下させます。
作用する時間帯
 1日にわたり高血糖を全体的に改善します。
低血糖について
 インスリンの分泌量は増やさないので、SU薬などとの併用でなければほとんど心配いりません。
その他の副作用や注意点
 一時期、乳酸アシドーシスという副作用の心配からほとんど使われない時期がありましたが、今では見直されています。ただし、からだが脱水になると乳酸アシドーシスが起こりやすいので、下痢や発熱したとき、夏場、または高齢の方は、特に注意して医師の指示を守り、服用・対処してください。
特徴
 古くからある薬なので、未知の副作用はあまりないと考えられます。

α-グルコシダーゼ阻害(α-G?)

働く場所
 小腸。
作用
 食物に含まれている炭水化物の分解・吸収を遅らせることで、食後の急激な高血糖(食後高血糖)を抑える薬です。
作用する時間帯
 主に服用直後の食後血糖値を下げます。このため食後高血糖だけが目立つ比較的軽症の患者さんや、他の薬で空腹時の血糖値は低くなっているのに食後高血糖がある患者さんへの併用薬として使われます。
低血糖について
 インスリンの分泌量は増やさないのでほとんど心配いりません。ただしSU薬などとの併用では低血糖が起こり得ます。その場合、砂糖ではなくブドウ糖の服用が必要です(砂糖では薬がその分解・吸収を邪魔するので、低血糖からなかなか回復しません)。
その他の副作用や注意点
 食事の‘直前’に服用しないと効果がありません。
特徴
 インスリンの作用とは関係ない部分で効果を発揮するので、インスリン依存状態の患者さん(主に1型糖尿病の患者さん)も食後高血糖改善効果を得られます。


チアゾリジン薬

働く場所
 肝臓、筋肉、内臓脂肪。
作用
 肝臓や筋肉のインスリン抵抗性(インスリン抵抗性の項参照)を改善することによって血糖値を下げます。
作用する時間帯
 1日にわたり高血糖を全体的に改善します。
低血糖について
 インスリンの分泌量は増やさないので、SU薬などとの併用でなければほとんど心配いりません。
その他の副作用や注意点
 浮腫〈ふしゅ〉(むくみ)が現れることがあります。骨粗鬆症〈こつそしょうしょう〉や膀胱〈ぼうこう〉がんが増えるとの報告もありますが、その危険性は少ないようです。
特徴
 肥満、特におなかが出ている内臓脂肪型肥満の患者さんはインスリン抵抗性が強いことが多いため、この薬が処方されることがよくあります。

速効型インスリン分泌促進薬

働く場所
 膵臓。
作用
 SU薬と同じように膵臓に働きかけてインスリンの分泌を促す薬ですが、異なる点は、服用後すぐに作用が現われ、作用時間が短いことです。
作用する時間帯
 主に服用直後の血糖値を下げるので、α-グルコシダーゼ阻害薬と同じように食後高血糖の改善を目的に使われます。
低血糖について
 インスリン分泌を増やすので、服用したのに食事をとらずにいたりすると低血糖が起こり得ます。
その他の副作用や注意点
 食事の‘直前’に服用しないと効果がありません。
特徴
 比較的軽症の糖尿病患者さんでは、食後のインスリン分泌の‘量’は足りていても分泌の‘タイミング’が遅いため、食後高血糖になっていることがあります。そのような場合にこの薬を服用すると、インスリン分泌のタイミングが早くなり、食後高血糖が改善されます。

DPP-4阻害薬

働く場所
 十二指腸や小腸。
作用
 インクレチン(十二指腸や小腸の項参照)の分解を遅らせて、その作用を助ける薬です。それによって高血糖のとき(主に食後)にインスリン分泌を増やし、また、グルカゴン分泌を抑えて血糖値を下げます。
作用する時間帯
 1日にわたり高血糖を全体的に改善しますが、食後の高血糖時に、より強く作用します。
低血糖について
 血糖値が高くなければインスリン分泌を増やさないので、SU薬などとの併用でなければほとんど心配いりません。
その他の副作用や注意点
 目立った副作用の報告は今のところありませんが、比較的新しい薬なので、未知の副作用が現れる可能性を否定はできません。これは、どんな新薬にも該当する避けられない点です。
特徴
 インスリン分泌を増やすだけでなく、グルカゴン分泌を抑制するのはこの薬だけです。

SGLT2阻害薬

働く場所
 腎臓。
作用
 腎臓での糖の再吸収(腎臓の項参照)を抑え尿糖を増やし血糖値を下げます。
作用する時間帯
 1日にわたり高血糖を全体的に改善し、食後などの高血糖時には尿糖がより多く排泄されます。
低血糖について
 インスリンの分泌量は増やさないので、SU薬などとの併用でなければほとんど起こりません。
その他の副作用や注意点
 新しい薬なので副作用について十分にわかっていない面もありますが、理論的には尿糖が増える影響で尿路感染症になりやすくなる可能性があります。また、尿糖の排泄に伴い脱水になりやすくなります。その影響で血液が濃くなって脳梗塞や心筋梗塞が増えたり、高浸透圧性昏睡やケトアシドーシスという急性合併症が起きやすくなる可能性が考えられます。ですから、脱水になりやすい下痢や発熱時、夏場、高齢の方は、特に注意して医師の指示を守り、服用・対処してください。
特徴
 インスリンの作用とは関係ない部分で効果を発揮する点が一つの特徴です。また、からだのエネルギー源である血糖が減る分、体重が減る傾向があります。これは肥満糖尿病の患者さんには好ましい変化ですが、反面、筋肉が減ったり栄養状態が悪化することもあるので、注意点とも言えます。

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