糖尿病セミナー

8. 小児の糖尿病(1) [基礎]

2007年6月 改訂

III.何に気をつければよいか

低血糖の予防と対応

低血糖が起きた時の対応
低血糖(通常、血糖値が60mg/dL以下の状態)の症状が起きたら、次の対応をすばやくとってください
症状 I だるさ、ふるえ、冷汗、ものがかすむ、顔面そう白など
対応
(1) 血糖測定し、低血糖を確認
(2) ぶどう糖錠(ジュースか砂糖でも可)をとる
(3) しばらく安静にし、血糖測定で確認
症状 II けいれん、昏睡状態など
非常事態のため自分で対応できないので、家庭や学校の先生に、対応を頼んでおきます
対応
(1) グルカゴン1mgを筋肉注射
(2) 救急車で近くの病院へ
(3) 主治医に連絡
 健康な体では、血糖が下がればすぐにインスリンの分泌が低下し、血糖を上げるホルモンが分泌されます。しかし、インスリン注射の場合には、そんな調節はできません。血糖が下がると、低血糖の症状が出てきます(右表参照)。低血糖の症状を、自分でよく覚えておき、症状があればすぐに炭水化物をとります。

シックデイの対応

 シックデイとは、風邪や下痢、嘔吐、大けがなど、糖尿病以外の病気になった時のこと。通常、血糖値が高くなり、また、よく尿ケトン体が陽性になります。1型糖尿病では、このような時に糖尿病昏睡を起こしやすいので、慎重に対応します。
 ふだんから、病気になった時の対応を主治医に相談しておき、いざ病気やけがといった時には、すぐ電話で指示を受けたほうがよいでしょう。

IV.保護者へのアドバイス

思春期の対応について

 思春期(10代)後半から、1型糖尿病の子どもの合併症の発症者が急増してきます。これは、思春期前半に、コントロールが悪化する子どもが増えることと、大きく関係しています。思春期には、体の急激な成長やホルモンの分泌があり、血糖コントロールは悪化しやすくなります。心理的にも、激動げきどうの時代です。
 この時期は、誰でも劣等感れっとうかんが強まる時期ですが、とくに1型糖尿病は理想と現実のギャップが大きく、将来を悲観して、治療の意欲を失う子どもが増えます。この時期を精神的にどう乗り越えるかが、子どもの将来を決定するといってもよいでしょう。
 日常の学校生活はもちろん、遠足、運動会、旅行などの行事も、できるだけ、ふつうの子どもと同じ体験をさせてください。特別あつかいせず、子どもの自己管理を支援し、理解ある態度で見守ることが、社会的な適応力てきおうりょくを育てます。

Q&A

Q. 中学に入ってから、治療を怠なまけるようになり、困っています

A. コントロールを怠けて、一番困るのはだれなのかを考えさせてみてください。コントロールが悪化すれば、合併症が発症しやすく、合併症になれば、その後の社会生活が大きく制限されます。その時になって、どんなに後悔しても間に合わないのです。自己管理をしっかりやっていれば、ふつうの人と変わらない社会生活ができ、能力を発揮できる場も与えられます。その可能性を自分から捨てないように、社会人として、どのような進路を選択できるかを、話してみてください。

Q. 就職や結婚が心配ですが...

A. 就職は、会社によっては、受け入れてくれないところも確かにあります。しかし、治療も勉強も前向きにがんばれば、かなりのことができるはずです。それを証明すれば、もっと明るい将来が開けるでしょう。職業選択は、運転手やパイロット、高所で仕事をする職業以外は、制限ありません。また、結婚、妊娠・出産も、正常に近いコントロールを続けていれば、問題ありません。今を大切に生きることが、将来につながります。

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