いま、1型糖尿病は

2006年01月15日

小児ヤング糖尿病治療の小児科から内科への移行の問題

 小さい時に発症した1型糖尿病の場合、どうしても最初は小児科医のもとを初診することになるでしょう。もちろん、はじめから小児の糖尿病にも慣れている糖尿病専門の内科医を初診することもよくあります。

 以前、当センターに通院している18歳までに発症した1型糖尿病のみなさんに、発症したとき、何科の先生にかかって、糖尿病のことをインスリン治療のことを勉強したか、をお聞きしたことがありました。小児科病棟に入院した、いや内科病棟に入院した、といろいろありました。おもしろいことに内科病棟に入院した方の方が入院日数の短いことがわかりました。

 小児期に発症した慢性疾患であれば、「小児科から内科への移行」はどの疾患であっても避けて通ることができない問題であります。今なお、移行がうまくいかなかった、移行したとたん血糖が悪くなった、内科の先生とうまくいかないなどの問題が生じていることも確かでしょう。うまく小児科の先生から内科の先生に移行できて、内科の先生も気にいっているという方はラッキーです。

 ヤングの会やサマーキャンプを実施している先生は小児科の先生もいますが、内科の先生もいます。内科の先生のお話を聞くと、小児科から紹介されてくる皆さんの自立心が乏しいことを危惧しておられます。親まかせにしているとか、自分で血糖コントロールするという意識が弱いと言われます。インスリン注射量の調節のしかたを知らない(たとえば速効型や超速効型インスリンがどれくらい効いているのか知らない)、ただ血糖測定している、どのように有効利用するのか、なんのために測定しているのかよくわかっていない、などなどは、糖尿病センターに初診された18歳や20歳のヤング1型糖尿病の皆さんを拝見して、良く感じるところです。

 一方、みなさんのご意見を聞くと、内科医はよく話しを聞いてくれない、1型糖尿病のことをよく理解していない(2型糖尿病と一緒にしているのではないか?)、血糖コントロールに関してきびしいことをいわれてしかられる、やさしくない、高齢者ばかりで若者が外来にいるとじろじろみられてしまう、という声とともに、また小児科にもどる方も少なくないと聞いています。

 思春期の食欲旺盛な時期の子どもの扱いになれていない糖尿病専門内科医がいることは事実。2型糖尿病と同じ食事療法を1型糖尿病に応用してしまう内科医がいることも事実です。

 さて、ここにひとつ、大きな問題がこの移行期にひそんでいます。糖尿病の合併症です。合併症はたとえ血糖コントロールがとても悪くても小児科時代には発症してきません。20歳を超えて内科の先生に代わったころから発症してきます。

 糖尿病性合併症を発症させたくない、これは小児科医も内科医もみなさんもご家族もみな共通の認識です。しかし、合併症を発症してくるのが20代、30代以降のため、小児ヤングの時期はインスリンを注射できて元気に学校にいっていれば満足してしまうことになっていないかと、とても心配です。女性の場合、結婚、出産を控えております。良い血糖コントロールのまま、大人になりたいものです。

 小児の1型糖尿病の治療に慣れている小児科の先生は、1型糖尿病治療に慣れている内科医がいないから成人になっても小児科で診ているのだと、おっしゃいます。その通りかもしれません。しかし、乳幼児から小児、ヤング、成人、高齢者までの1型、2型糖尿病の患者さんの治療をしている糖尿病センターでは、大学卒業後や就職、転勤、転居などで、多くの若者が全国に行かれます。そのつど、お近くの糖尿病専門の先生を探して紹介状を書きます。日本糖尿病協会の友の会に携わっている先生を頼りにすることもあります。

 何か困ったことがありましたら、日本糖尿病協会にお尋ねください(Tel.03-3437-1388)。そのまえに、協会にぜひ入会しておいてください。
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