運動を習慣として行うことで得られるメリットはたくさんあるが、体重の減少を期待するときは工夫が必要だ。
運動で体重を減らせる人は3割程度
体重を減らす事を目的に運動に取り組む人は少なくない。しかし、実際には、多くの人がさまざまな方法を試みているにも関わらず、体重減少に成功し維持できた例は多くないという調査結果が発表された。
アリゾナ州立大学の研究チームは、体格指数(BMI)が25以上の過体重の女性81人を対象に実験を行った。実験に参加した女性は1年以上、運動する習慣がなく、体脂肪率は平均で38%だった。
参加者に、1回30分のランニングマシンによる有酸素運動に週に3回取り組んでもらい、最大酸素摂取量(VO
2max)の80%程度の「ややきつい運動」を続けてもらった。
また、12週間の運動プログラムを続けている間、研究チームは食事については「なるべくふだん通り、食べたいものを食べて良い」と指導した。
その結果、運動を行うことで、体重が減りやすい女性と、減りにくい女性に分かれることが判明した。プログラムに参加した女性の30%では、平均して体重が11.7kg、体脂肪が11.8kg、それぞれ減少していた。70%の女性では体重が変化しないか増えていた。
体重を1日1回以上はかると減量に成功しやすい
「運動と体重コントロールについて調査した研究の多くで、運動を続けることで減量に成功するのは全体の3分の1程度であることが示されています」と、健康プロモーションを専門とするアリゾナ州立大学のグレン ガエサー教授は言う。
「食事のコントロールが伴わないと、体重は減らないことが多いのです。ただし、良い知らせもあります。減量に成功する人には共通する条件がみられることです」。
体重が減ったグループでは、体重の測定を毎日行い、自分の体重の増減を気にかけている女性が多かったという。
「運動をする習慣がなかった人が新たに運動に取り組みはじめたときは、体重を少なくとも1日1回以上はかると効果的です。体重計をバスルームに置いて、毎日の体重の推移を記録し、体重が増えたときは何が原因かを思い返すことが重要です」と、ガエサー教授は説明する。
一方、体重が減らなかったグループでは、「運動をしたのだから、いつもより多く食べても良い」と考え、食事の摂取カロリーを増やした女性が少なくなかったという。
なお、運動を続けた女性のほとんどは、12週間の研究の終了後も「体調が良くなった」と答え、自主的に運動を続けているという。「体重の変化に関わらず、フィットネスが健康に良いことは確実です」と、ガエサー教授は述べている。
1回10分の運動でも回数を増やせば効果がある
基本的に体重が減るメカニズムは単純だ。身体活動や運動などで消費するカロリーが、食事で摂取するカロリーを上回っていると、数ヵ月で体重は減る。
運動の量を増やして、カロリーを燃焼しやすいコンディションを維持できれば、体重は減りやすくなる。
これから運動を始めるという人にとって、もうひとつ効果的な方法がある。まとめて30分の運動の時間をとるのではなく、朝・昼・晩と1日3回10分間ずつといったように、運動時間を小分けにする方法も効果的だという。
ガエサー教授らは過去に行った研究で、最大酸素摂取量(VO
2max)の60~65%の「中程度の運動」を1回10分、1日に3回取り組むことで、収縮期血圧(最高血圧)がどれだけ下がるかを調べた。
ウォーキングマシンで1回10分の運動をした場合、1日に行う回数を増やすと、1日30分のまとまった時間の運動をした場合に比べ、血圧はより低下することが判明した。
このやり方であると、食事の管理が伴わないと体重を減らすのは難しいが、筋力の増加は期待できるという。
筋肉は、体を動かしていないときでも、脂肪の数倍のカロリーを消費しているので、筋肉をつけることで体の基礎代謝量を増やせる。
腹筋運動(レジスタンストレーニング)を取り入れれば、運動によって腹部の脂肪が少なくなり、腹部を細くする部分やせが可能になる。
健康増進プログラムでは「1日に必要な運動時間は30分程度」と指導されることが多いが、多忙なビジネスパーソンにとって、毎日30分の運動時間を確保し続けるのは難しい。
そんなときは、昼の休憩時間の空いた時間に、1回10分だけでも良いので、ウォーキングなどの運動をはじめてみてはいかがだろう。
Predictors of fat mass changes in response to aerobic exercise training in women(Journal of Strength & Conditioning Research 2014年10月28日)
Effects of Fractionized and Continuous Exercise on 24-h Ambulatory Blood Pressure(Medicine & Science in Sports & Exercise 2012年12月)
[ Terahata ]