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2025年06月13日

豆が糖尿病を改善 豆は栄養が豊富で食事の質を高める 血糖管理が良くなり合併症リスクが低下

 豆類は、植物性タンパク質が多く含まれ、体に悪い飽和脂肪酸やコレステロールは少ない、食事療法に適した「高タンパク・低脂肪」食品だ。

 2型糖尿病のある人が、豆類を食べると、血糖値の管理が改善し、心臓病などの合併症のリスクが減少することが明らかになっている。

 豆類を1日に1回食べるのを習慣にすると、心臓と代謝の健康を改善する効果を得られるという新しい研究も発表された。

 「豆を毎日の食事に取り入れることは、糖尿病などの慢性疾患のリスクを軽減する、シンプルで費用対効果の高い方法になる可能性があります」と、専門家は述べている。

豆は高タンパク・低脂肪 古くからなじみの深い食材

 豆は、日本を含む世界中で古くからなじみの深い食材だ。日本では大豆が、納豆や豆腐、味噌、醤油といった加工品の原料として利用されている。

 大豆に加えて、インゲンマメ・ソラマメ・エンドウマメ・グリーンピース・ヒヨコマメ・レンズマメなど、世界で食用とされている豆は、70~80種類あると言われている。

 米国心臓学会(AHA)によると、豆類は、植物性タンパク質が多く含まれ、体に悪い飽和脂肪酸やコレステロールは少ない、食事療法に適した「高タンパク・低脂肪」食品だ。

 肉などの動物性食品の代わりに、植物性タンパク質をとると、心臓病の危険因子であるコレステロールを下げることができる。豆には食物繊維やミネラル、ポリフェノールなども豊富に含まれる。

糖尿病の人が豆を食べると血糖管理が改善

 2型糖尿病のある人が、豆類をより多く食べると、血糖値の管理が改善し、心臓病などの合併症のリスクが減少することが、カナダのトロント大学などの研究で明らかになっている。

 研究グループは、2型糖尿病患者121人を対象にランダム比較試験を実施し、豆類を食べることで、血糖値や血圧値の管理、脂質などにどのような影響があらわれるかを調べた。

 その結果、豆類を1日に1カップ以上多く食べたグループは、1~2ヵ月の血糖値の平均をあらわすHbA1cの値が、3ヵ月間で0.5%低下した。

 豆類を食べたグループは、収縮期(最高)血圧なども低下し、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクは0.8%減少した。

豆は低GI食品 血糖値を上げにくい

 「食後の血糖値の上昇度を示す指標として、グリセミック インデックス(GI)を提唱しています。豆は代表的な低GI食品です。GI値が低い食品は、血糖値の上昇をゆるやかにします」と、同大学栄養科学部のデビッド ジェンキンス教授は言う。

 豆類には糖質も含まれるが、その量は米やパンなどの炭水化物を多く含む食品より大幅に少なく、その主体は血糖値の上昇がゆるやかな多糖類であるデンプンとしている。

 「かつての伝統的なスタイルの食事では、豆類をよく食べていましたが、現在はコレステロールや脂肪を多く含む欧米型の食事が主流になっています」と、ジェンキンス教授は指摘している。

 「こうした地域で、2型糖尿病が大きく増えている現状をみると、豆類を食べる食事スタイルは重要と考えられます」としている。

豆を1日1回食べるとコレステロール値や炎症マーカーが改善

 豆類を1日に1回食べるのを習慣にすると、心臓と代謝の健康を改善する効果を得られるという新しい研究結果を、米国栄養学会(ASN)が発表した。

 研究グループは、糖尿病予備群と診断された72人の男女を対象に、12週間の試験を実施。参加者をランダムにわりあてて、クロマメ、ヒヨコマメ、米のいずれかを1カップずつ12週間摂取してもらった。

 その結果、ヒヨコマメを食べたグループでは、総コレステロール値が200.4mg/dLから185.8mg/dLに大幅に減少した。クロマメを食べたグループでは、炎症反応を促進する炎症性サイトカインの値が、2.57pg/mlから1.88pg/mlに減少した。

 「糖尿病予備群の人は、脂質代謝障害と低レベルの慢性炎症を示すことが多く、どちらも2型糖尿病や心臓病などのリスクを高めます」と、イリノイ工科大学の食品栄養科学部のモーガン スミス氏は言う。

 「今回の研究では、豆類を食べるのを習慣にすると、コレステロール値が低下し、炎症を軽減できることが示されました」。

 「豆を毎日の食事に取り入れることは、糖尿病などの慢性疾患のリスクを軽減する、シンプルで費用対効果の高い方法になる可能性があります」としている。

健康的な食事は脳の老化を防ぐ
健康的な食事を続けると認知症リスクが大幅に減少

 米国栄養学会(ASN)が発表した別の新しい研究では、健康的な食事を続けることで、アルツハイマー病などの認知症のリスクが大きく減少することが示された。

 「中年期から老年期にかけて、健康的な食事を続けると、アルツハイマー病や関連する認知症を予防できる可能性を高められることが分かりました」と、ハワイ大学がんセンターのソンイ パーク氏は言う。

 「これは、認知症を予防するために、健康的な食事を開始するのが遅すぎるということはないことを示しています」としている。

 研究グループは、米国で1990年代にはじめられた多民族コホート研究に参加した、約9万3,000人の45~75歳の米国成人のデータを解析した。うち2万1,000人以上が期間中に、アルツハイマー病や関連する認知症を発症した。

 その結果、10年間にわたって健康的な食事を続けた人は、そうでない人に比べて、認知症のリスクが25%減少したことをが示された。不健康や食事をしていた人でも、健康的な食事に変えることで恩恵を受けられることも分かった。

 効果の高い食事法は、「MINDダイエット」だった。MINDダイエットは、健康的であることが知られる「地中海式ダイエット」と「DASHダイエット」をかけあわせて、心臓病だけでなく、認知症などの予防も含めて考えて開発された食事スタイル。

 地中海式ダイエットは、野菜・豆類・果物・全粒穀物などの植物性食品と、新鮮な魚介類、地中海地域の特産のオリーブオイルなどを組み合わせた食事スタイルで、肥満やメタボの予防効果があること証明されている。

 一方、DASHダイエットは、高血圧の予防・改善のために開発された食事スタイルで、減塩しながら、脂肪分の少ない肉や魚、玄米や全粒パンなどの全粒穀物、緑黄色野菜・豆類・ナッツなどを積極的にとるのが特徴だ。

健康的な食事を続けた人は認知症リスクが大幅に減少した

出典:米国栄養学会、2025年

豆のこと、もっと知りたい。(農林水産省)
豆の栄養 (公益財団法人 日本豆類協会)
The Benefits of Beans and Legumes (米国心臓学会 2023年10月27日)

Eating more legumes may improve glycemic control, lower estimated heart disease risk (JAMA 2012年10月22日)
Effect of Legumes as Part of a Low Glycemic Index Diet on Glycemic Control and Cardiovascular Risk Factors in Type 2 Diabetes Mellitus: A Randomized Controlled Trial (JAMA Internal Medicine 2012年10月26日)
Diabetes Mellitus Nutrition Therapy: Beyond the Glycemic Index: Comment on "Effect of Legumes as Part of a Low Glycemic Index Diet on Glycemic Control and Cardiovascular Risk Factors in Type 2 Diabetes Mellitus" (JAMA Internal Medicine 2012年10月26日)

米国栄養学会年次学術集会2025
Study finds daily cup of beans boosts heart and metabolic health (米国栄養学会 2025年6月3日)
It's not too late to start eating better for your brain (米国栄養学会 2025年6月2日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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