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2024年09月27日

野菜などのポリフェノールは糖尿病・肥満リスクのある人の強い味方 ポリフェノールの最新情報

 ポリフェノールは、植物性食品(野菜・果物・大豆・キノコ・ナッツ・カカオなど)に豊富に含まれている、苦み・渋み・色素・香りのもとになっている天然化合物。

 ポリフェノールには抗酸化作用や抗炎症作用がある。ポリフェノールを多く摂取している人は、死亡リスクが30%低いという調査結果が発表された。

 ポリフェノールの苦味による刺激が、糖尿病や肥満のリスクを低減させていることも、新しい研究で明らかになった。

ポリフェノールの抗酸化作用・抗炎症作用

 ポリフェノールは、植物性食品(野菜・果物・大豆・キノコ・ナッツ・カカオなど)に豊富に含まれている、苦み・渋み・色素・香りのもとになっている天然化合物。コーヒーや緑茶などの飲みものにも、ポリフェノールは含まれている。

 ヒトの体のなかに活性酸素が増えると、細胞が傷つけられるが、ポリフェノールには、この活性酸素の働きを抑える抗酸化作用がある。これまで、動脈硬化や糖尿病、肥満やメタボリックシンドロームなどを予防・改善する働きが報告されている。

 ポリフェノールには抗炎症作用もある。血管に炎症があると、血管が狭くなり血液の流れが悪くなるが、ポリフェノールを摂取することで血管の炎症が軽くなり、血管が広くなるとみられている。

ポリフェノールをとる食事スタイルは健康長寿につながる

 スペインのバルセロナ大学の研究で、ポリフェノールを多く摂取することは、高齢者では死亡リスクの30%の低下と関連していることが示されている。

 研究グループは、イタリアのトスカーナ地方の65歳以上の高齢者807人を12年間追跡し、食事質問票による調査を行い、尿中ポリフェノールの検査によりポリフェノール総摂取量を調べた。

 その結果、ポリフェノールを豊富に含む(1日に650mg以上)食事を摂取している人は、摂取量が少ない(1日に500mg未満)の人に比べて、全体的な死亡リスクが30%低いことが示された。

 「野菜や果物などの植物性食品をよく食べている人は、糖尿病や肥満などの慢性疾患や死亡のリスクが低い傾向が示されました」と、同大学栄養・食品科学部のラウル サモラ ロス氏は述べている。

 スペインやイタリアに多い「地中海式ダイエット」は、肉類を少なめに、魚介類を多めにとり、季節の緑黄色野菜やキノコ類、果物やナッツ類を食べ、チーズやヨーグルトなどの乳製品も利用し、オリーブオイル、適量の赤ワインを飲むのが特徴で、健康長寿食として人気が高い。

加齢にともない増える慢性炎症の予防・改善に有用

 ポリフェノールを含む野菜などを食べる食事スタイルは、加齢にともなう慢性疾患や炎症の予防・改善に有用であることが、英国のリバプール大学の研究でも示されている。

 T細胞(Tリンパ球)は白血球の一種で、体内を循環して、細胞の異常や細菌などの感染を検出する働きをしている。

 これらは、体の免疫反応での細胞間コミュニケーションを助けているが、炎症の重要な調節因子であるサイトカインのリンパ球による放出の調節を、ポリフェノールが高めていることを実験により突き止めた。

 「炎症は体内で自然に発生しますが、長期間続いたり、重症化すると、病気を引き起こす可能性があります。慢性的な炎症は、心臓病、糖尿病、がん、アルツハイマー病など、多くの病気に関わっています」と、同大学老化・慢性疾患研究所のシアン リチャードソン氏は言う。

ポリフェノールの苦味で糖尿病や肥満を予防・改善

 野菜や果物などのポリフェノールの苦味による刺激が、耐糖能を改善し、糖尿病・肥満のリスクを低減させている可能性があることが、芝浦工業大学の新しい研究で明らかになった。

 耐糖能は、血糖値を正常に保つためのブドウ糖の処理能力のことで、血糖値を下げるインスリンの分泌量が低下したり、インスリンが効きにくくなると、耐糖能異常が起こり血糖値が上昇しやすくなる。

 ポリフェノールは、消化管にある苦味受容体を活性化し、耐糖能や食欲を調整するインクレチンなどの消化管ホルモンの分泌を促進することで、血糖値や満腹感を調整している可能性が示された。

 インクレチンは、食事をとると腸から分泌されるホルモンで、膵臓からのインスリンの分泌を促したり、血糖を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を少なくする働きをしている。インクレチンにはGLP-1などがある。

 「研究成果は、ポリフェノールの苦味刺激が、血糖値と食欲の調整を通じて、肥満や糖尿病のリスクを減少させる可能性を示しており、健康を維持するための新たな知見を提供するものです」と、研究者は述べている。

 研究は、芝浦工業大学システム理工学部生命科学科の越阪部奈緒美教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Food Bioscience」に掲載された。

New research suggests that high dietary intake of polyphenols are associated with longevity (バルセロナ大学 2013年10月9日)
High Concentrations of a Urinary Biomarker of Polyphenol Intake Are Associated with Decreased Mortality in Older Adults (Journal of Nutrition 2013年9月)
What foods can help fight the risk of chronic inflammation? (リバプール大学 2016年5月16日)
Identification of (poly)phenol treatments that modulate the release of pro-inflammatory cytokines by human lymphocytes (British Journal of Nutrition 2016年3月17日)
Deciphering the Role of Bitter and Astringent Polyphenols in Promoting Well-Being (芝浦工業大学 2024年3月18日)
Sensory Nutrition and Bitterness and Astringency of Polyphenols (Biomolecules 2024年2月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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