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2024年07月30日

糖尿病の人は「肝臓病」のリスクが高い 気づかないうちに進行 肝疾患の予防・改善では何が必要?

 糖尿病のある人は、肝硬変や肝不全を含む深刻な肝臓病のリスクが高いことが明らかになっている。

 2型糖尿病の人は、とくに肥満をともなう人では、血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性が起こりやすく、肝臓に脂肪かたまり炎症や損傷が起こりやすくなると考えられている。

 早期発見の手かがりとなるのが健康診断の項目にもある肝機能検査。年々体重が増えている人や、お酒をよく飲んでいる人は、とくに検査を受けることが勧められる。

 日本食が中心の食事スタイルにより、脂肪肝疾患の進行を抑えられることが分かった。

気づかないうちに肝臓病が進行していることも

 肝臓は、ヒトの体で最大の臓器。消化管からとりこんだ栄養を利用しやすいかたちに変えたり、毒物を分解したり、体内の物質のバランスを維持するなど、生命を支えるために重要な働きをしている。

 肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ、異変に気づきにくく、知らぬうちに肝臓病が進行してしまうこともある。気づいたときには肝硬変や肝臓がんになっていることもある。

 肝臓病が進行して、疲れやすい、顔色が悪い、お腹が張るなどの症状があらわれて、はじめて肝臓病がみつかる人も少なくない。

 肝臓の機能が低下し、炎症が慢性的に起こるようになると、線維化(かさぶたのような結合組織がたまり、通常の機能を果たせなくなった状態)が起こる。そうなると、「肝硬変」や「肝がん」など、命に関わる病気のリスクが高くなる。

糖尿病とともに生きる人は肝臓病のリスクが高い

 肝臓の病気には、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などが深く関連している。

 カナダのトロント大学などの13年にわたる調査で、新たに糖尿病と診断された人は、肝硬変や肝不全を含む深刻な肝臓病の長期リスクが高いことが示されている。

 研究グループは、糖尿病と診断された30~75歳の成人約44万人と、糖尿病のない成人約206万人を比較した。

 その結果、糖尿病のある人は、深刻な肝臓病の発症率が2倍高いことが明らかになった。

 「とくに糖尿病があり、それにともなう肥満や高血圧のある人は、肝臓病のリスクが高いことが分かりました」と、同大学保健政策・管理・評価研究所のジリアン ブース教授は言う。

生活スタイルを見直して肝臓病を予防

 2型糖尿病の人は、とくに肥満をともなう人では、血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性が起こりやすく、そうした状態が長く続くと、肝臓に脂肪かたまり炎症や損傷が起こりやすくなると考えられている。

 「糖尿病とともに生きる人は、早期から血糖値と体重、脂質などを適切に管理し、検査を定期的に受けることが大切です」と、ブース教授は指摘する。

 2型糖尿病のある人は、そうでない人に比べ、肝臓病のリスクが高いことは、英国のサウサンプトン大学などによる10年間にわたる調査でも明らかになっている。

 糖尿病のある男性は、肝臓病を発症する可能性が3倍高く、女性では5倍高いことが示された。

 「肝臓の合併症は、治療が難しいため、糖尿病の人は食事や運動などの生活スタイルを見直し、予防することが大切です」と、同大学生物医学研究センターのクリス バーン教授は言う。

日本食が中心の食事スタイルにより肝臓病を予防

 日本食が中心の食事スタイルにより、脂肪肝疾患の進行を抑えることができるという研究を、大阪公立大学が発表している。

 過度な飲酒がないにもかかわらず、肝臓に脂肪がたまりすぎた脂肪肝になっている人は、日本食スタイルの食事をすることで、肝線維化が抑制されることが示された。

 とくに「大豆」「魚介類」「海藻類」を食べることが、肝線維化の進展の抑制と関連していた。

 また、納豆・豆腐・煮豆・味噌などの大豆食品の摂取量が多い人では、筋肉量が多いことに関連しており、筋肉量が多いグループは肝線維化の進展が抑制されていた。

 研究グループは、非アルコール性脂肪性肝疾患のある136人の成人を対象に、12の食品・食品群の摂取量から計算される日本食スコアなどを活用し、食事と筋肉量、肝線維化などの関連を調べた。

 「介入研究によるさらなるデータ検証が必要ですが、脂肪性肝疾患のある人の食事療法のひとつの選択肢として、日本食パターンが有効である可能性が示されました」と、研究者は述べている。

「日本食」とくに大豆・魚・海藻の摂取が肝線維化の進展抑制に関与

出典:大阪公立大学、2023年

検査で肝臓の異常がみつかったらかかりつけ医を受診

 2型糖尿病や肥満が増えていることが影響し、日本では1,000万人以上の人が肝臓の病気があると推定されている。

 アルコールの飲みすぎが長期間続いていたり肥満があると、とくに脂肪肝になりやすいが、過度な飲酒がないにもかかわらず肝臓病になる人も増えており、「脂肪性肝疾患(MASLD)」と呼ばれている。

 早期発見の手かがりとなるのが健康診断の項目にもある肝機能検査。年々体重が増えている人や、お酒をよく飲んでいる人は、とくに検査を受けることが勧められる。

 日本肝臓学会は、一般的な健康診断でも肝機能検査として血液検査で広く測定されている「ALT値」が30を超えていた場合、かかりつけ医などを受診することを奨励している。

 ALT(GPT)は、肝臓のなかに多くある酵素のひとつで、アミノ酸代謝やエネルギー代謝で重要な働きをしているが、肝臓になんらかの障害があると、血液中に漏れでてくる。

 同学会では、「血液検査で肝機能を示すALT値が30を超えていたら、慢性肝臓病が隠れているかもしれません」と注意を呼びかけている。

 「とくにALTは、他の臓器にあまり含まれていないため、その血液中の高さは肝障害を反映します」としている。

 かかりつけ医による血液検査や腹部超音波検査などを受け、必要と判断されれば、さらに消化器内科でより詳しい検査を受けることで、肝臓病を早期発見・早期治療できるようになる。

血液検査で肝機能を示すALT値がもしも30を超えていたら、慢性肝臓病(CLD)が隠れているかもしれません

一般社団法人 日本肝臓学会

Adults with newly diagnosed diabetes at risk of liver disease, study finds (Canadian Medical Association Journal 2010年6月29日)
Newly diagnosed diabetes mellitus as a risk factor for serious liver disease (Canadian Medical Association Journal 2010年8月10日)
Liver disease risk increased by type 2 diabetes (サウサンプトン大学 2016年4月12日)
Type 2 diabetes and risk of hospital admission or death for chronic liver diseases (Journal of Hepatology 2016年1月23日)
Fatty liver has stronger association with insulin resistance than visceral fat accumulation in non-obese Japanese men (Journal of the Endocrine Society 2019年5月20日)
大阪公立大学生活科学部食栄養学科・栄養診療学研究室
Severity of Liver Fibrosis Is Associated with the Japanese Diet Pattern and Skeletal Muscle Mass in Patients with Nonalcoholic Fatty Liver Disease (Nutrients 2023年2月26日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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