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2021年03月24日

オフィスを活動的にすると「座り過ぎ」が減る 糖尿病やメタボの検査値も改善 オフィス環境づくりは大切

 オフィス環境改善による働き方改革に関する実証実験の結果を、明治安田厚生事業団 体力医学研究所とオカムラが報告した。
 座り過ぎがオフィスワーカーの新たな健康リスクとして注目されている。実験では、座り過ぎを減らして活動的に働くことができるオフィスに移転することで、従業員の健診データが維持・改善することを明らかにした。
 新型コロナの拡大にともない、オフィス環境の見直しが迫られている昨今で、健康に働くことができる新しいオフィスづくりを提案している。
活動的なオフィスへの移転により健診データが改善
 座り過ぎが、オフィスワーカーの新たな健康リスクとして注目されている。仕事中に座ったままの時間が長かったり、身体を動かす時間が少ないのは、オフィスワーカーの健康に悪影響を及ぼし、2型糖尿病や心血管疾患のリスクを高め、死亡リスクの上昇にもつながる。

 2型糖尿病の人は、座ったままの時間が続くときには、30分に一度立ち上がり運動をすると、高血糖が改善しやすいことが知られている。座位時間が30分を超えたら、一度立ち上がり、軽い運動を行うことが勧められている。

 明治安田厚生事業団 体力医学研究所とオカムラは、オフィス環境改善による働き方改革に関する実証実験を共同で実施し、座り過ぎを減らして活動的に働くことができるオフィスに移転することで、従業員の健診データを維持・改善できることを明らかにした。

 移転後のオフィスには、昇降デスク、自由に選べる共用席、歩きやすい回遊型の通路を設置した。

 その結果、オフィス移転後は座っている時間が減少し、少し早めに歩くなどの中高強度の身体活動が増加した。健診では、対照群との比較により、腹囲、善玉のHDLコレステロール、HbA1cが維持・改善したことを確認した。

 新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、オフィス環境の見直しが迫られている昨今で、今回の試験で得られた知見は、健康に働くことができる新しいオフィスづくりに役立つと期待される。

 研究成果は、産業衛生と環境医学分野の国際学術雑誌「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載された。

出典:オカムラ、2021年
仕事内容に適した場所を選択できる働き方
 現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、オフィスや働く環境を見直そうという機運が高まっている。オフィス改装や移転はまれな機会であるため、従業員の生産性や健康に影響するさまざまな点について熟考する必要がある。

 とくにオフィスワーカーでは、⾧時間の座り過ぎによる心身の健康や、生産性に関連した指標への悪影響が指摘されており、効果的な施策が必要となっている。

 しかし、オフィス施策と座り過ぎの研究は欧米諸国を中心に行われており、世界一座っている時間が⾧いとされる日本からの知見はなかった。

 そこで研究グループは、オフィス移転にともなう健診データへの影響について実証実験を行った。研究グループはこれまでも、オフィス施策による座り過ぎ解消効果について報告している。

 実証実験では、「ABW」(Activity Based Working)という新しい働き方を取り入れたオフィスへの移転に着目した。ABWは「従業員がその時の仕事内容に適した場所や作業席を選択できる働き方」を示しており、オフィスの省スペース化も狙いのひとつだ。

 オフィス移転前後で、座り過ぎや身体活動の変化をみるとともに、定期健康診断データの変化を対照群と比較することで、心血管・代謝性疾患のリスク因子への影響を検証した。オフィス移転により、2型糖尿病や脂質異常症、心血管疾患などの発症と関係する血圧、糖・脂質代謝の指標がどう変化するかを調べた。
オフィスを変えたら座り過ぎが減り、身体活動が増えた
 対象とするオフィス移転は、都内のオフィス4拠点から、1拠点に集約した事例だ。従来型のオフィスから、オカムラが推進する働き方改革プロジェクトのコンセプトにもとづき、心身の健康保持増進などを実践・検証する場となる「ラボオフィス」のひとつに移転した。

 通常、オフィスの執務スペースは6~7割程度しか使用されていないことが知られている。これをふまえ、移転後オフィスでは従業員数当たりのデスク数が削減された。分析対象となったのは健診の有効データがあった95人。

 ABWの考え方を取り入れ、▼立位作業が可能な昇降デスクを導入し、▼自由に選択できる共用席を増設し、▼さまざまな目的地にアクセスできる回遊型通路を設置した。作業する場所や姿勢を自由に変えられることや、広い通路で歩きやすい点が特徴となる。

 その結果、次のような結果になった――。

■ オフィス移転により座り過ぎが減り、身体活動が増えた

 オフィス移転の対象となった従業員に活動量計を装着してもらい、座位行動や強度別の身体活動データを取得した。測定時期は、オフィス移転の約2ヵ月前と約10ヵ月後とした。各時期、2週間にわたって、睡眠・入浴時等を除いた終日測定を行った

 その結果、オフィス移転前と比較して、座位行動が1日13分減少した。また、少し早めに歩くなど、中高強度の身体活動が1日9分増加した。

■ 腹囲、HDLコレステロール、HbA1cが維持・改善した

 移転実施から平均5ヵ月後に健診を受診してもらい、オフィス移転をした群と一般的な群とを比較した。その結果、オフィス移転をしたオフィスワーカーの健診データは、対照群に比べ、腹囲の増加が抑制され、善玉のHDLコレステロールとHbA1cは良好に変化した。

 このうち、1~2ヵ月の血糖値の平均を反映するHbA1cは、身体活動の変化と弱い相関を示し、中高強度身体活動量の増加が大きいほど、改善が大きい傾向がみられた。

出典:オカムラ、2021年
座り過ぎにならず、活動的に働けるオフィス環境が必要
 このように、昇降デスクを含むABWオフィスへの移転は、心血管・代謝性疾患リスクの改善に有効であることが示された。今回の実験は、オフィス環境改善という新しいアプローチによる従業員の健康増進の可能性を示唆するものだ。

 オフィス環境を見直す際には、従業員が座り過ぎにならず、活動的に働くことができるよう配慮されることが期待される。

 「今回維持・改善が確認された心血管・代謝性疾患リスク因子の項目は限られており、改善幅も小さいため、オフィス環境改善による健診データへの効果について結論付けるにはさらなる検討が必要といえます。また今後は、新しいオフィスや働き方が従業員のコミュニケーションにも影響を及ぼすかという点についても検討し、より良いオフィス環境づくりに関する知見の発信を目指します」と、研究者は述べている。

明治安田厚生事業団 体力医学研究所
オカムラ
Impact of ergonomics on cardiometabolic risk in office workers: Transition to activitybased working with height-adjustable desk(Journal of Occupational and Environmental Medicine 2021年2月25日)
[ Terahata ]

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