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2019年08月09日

朝食をスキップすると糖尿病が悪化しやすくなる 朝食は重要な食事

 忙しい毎日を過ごしている現代人の中には、朝食を食べずに済ませ、昼食まで空腹でいるという人が少なくない。しかしこれは、「1日でもっとも重要な食事」をスキップすることになり、肥満や2型糖尿病、心臓病の発症リスクの増加につながる。
朝食のスキップは若い世代でより深刻
 朝食のスキップは、若い世代でより深刻だ。ブラジルのサンパウロ大学の研究によると、体重増加につながりやすい食事スタイルは、若年期に定着することが多い。肥満につながりやすい生活スタイルが、年齢を重ねてから2型糖尿病や心血管疾患などのリスクを高める。

 若年期に朝食をスキップする食習慣が定着すると、胴囲とBMI(体格指数)が増加しやすくなる。そうなると、年齢を重ねてから、2型糖尿病や心血管疾患などを発症しやすくなるという。

 「世界中の数百万人もの子供や若者が、朝食をスキップし、学校や登校途中で間食として、栄養価の低い高カロリーの加工食品を食べています。揚げパンやスナック菓子、炭酸飲料、インスタントフードなどを食べ過ぎると、肥満や2型糖尿病のリスクが上昇します」と、サンパウロ大学医学部予防医学科のエルシ デ オリヴェイラ フォルカート氏は言う

 調査は、サンパウロ研究財団の支援を受けて、オーストリア、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、イタリア、スペインの科学者が協力して行われた。

 そのうち欧州のデータは、10の主要都市の3,528人の若者を対象に実施された横断研究「欧州の若年者の栄養と健康的な生活スタイルについての研究(HELENA-CSS)」のデータを解析したものだ。ブラジルのデータは、「ブラジルの若年者の循環器の健康研究」(BRACAH)の解析結果がまとめられた。

関連情報
朝食をスキップする若者は生活全体も不健康
 調査の結果、朝食をスキップすることで肥満に関連する指数が上昇することが明らかになった。

 朝食をスキップする頻度の高い男子の平均腹囲は、朝食を毎日食べている男子に比べ、欧州で2.61cm大きく、ブラジルで2.13cm増加していた。BMIの平均も、欧州の男子では1.29、ブラジルの男子では1.69増えていた。

 女子でも、朝食のスキップにより平均腹囲は欧州の調査で1.97cm増加していた。また、座ったままの時間が長い(1日2時間以上)女子では、平均腹囲は1.20m増加した。

 朝食をスキップする頻度の高い若者は、生活全体も不健康である傾向があることが示された。学校や通勤中、自宅、レジャーなどでの身体活動レベルが低く、テレビ、パソコン、ビデオゲームで遊ぶ頻度が高く、座ったままの時間が長い傾向がみられた。

 「家でテレビを見たり、パソコンを使ったり、ビデオゲームをする時間が長く、座りがちな生活をおくっている若者は、就眠時間が遅くなり、結果として朝食を抜く頻度が増えると考えられます。これらは肥満や2型糖尿病の直接的な原因になります」と、フォルカート氏は言う。

 「肥満や糖尿病のリスクを減らすために勧められるのは、食事のバランスを良くすること。乳製品、全粒穀物、野菜、果物などの健康的な食品を、家庭で摂ることです。さらには子供にも1日60分の中強度から活発な運動が勧められます」と、フォルカート氏は指摘する。
朝食はもっとも重要な食事
 スペインのグラナダ大学の調査によると、朝食を毎日摂っていないか、栄養やエネルギーの少ない朝食しか食べていない子供の13%が、血中のコレステロール値と尿酸値が高く、インスリン抵抗性が進展していることが明らかになった。

 朝食で十分なエネルギーを摂っている子供ほど、1日に身体活動の推奨量を満たしており、グルコース代謝も良好な傾向がみられた。

 「朝食は、その日の最初の食事であるというだけでなく、もっとも重要な食事とみるべきです」と、グラナダ大学保健科学部のイドイア ラバエン氏は言う。

 「現実には多くの子供たちが朝食を食べないで学校に通い、昼休みまで空腹に過ごしています。すると、昼食に食べ過ぎてしまい、肥満になりやすくなります。朝食をきちんと食べる事を、小児肥満の予防のための戦略に含めるべきです」と、ラバエン氏は言う。
成人でも朝食抜きは危険
 朝食を抜くことで健康を損ないやすいことは、成人を対象とした調査でも確かめられている。米国心臓病学会(ACC)の発表によると、朝食をスキップすると心臓病による死亡リスクが上昇する。ACCは「朝食を毎日食べることが重要です」と提言している。

 研究チームは、1988~1994年の米国民健康・栄養調査の平均18年間の追跡調査で得られたデータから、40~75歳の6,550人の男女の食事摂取状況を解析した。朝食を「まったく食べない」人が5.1%、「ほとんどの食べない」人が10.9%、「毎日食べている」人が59%だった。

 その結果、心血管疾患により死亡リスクは、朝食を食べない人では毎日食べている人に比べ87%上昇した。朝食をスキップすることは、食欲の不安定化、満腹感の低下、血圧の上昇、および脂質値の上昇などと関連していた。
朝食を抜くと血糖値が上昇しやすくなる
 2型糖尿病患者が朝食を抜いて昼食まで空腹でいると、昼食と夕食の後の血糖値が上昇しやすくなり、血糖コントロールの悪化につながるという研究も発表されている。

 朝食を摂らないことが、その後の食事後の血糖値の急な上昇(食後高血糖)につながるだけでなく、その日のインスリン反応が悪くなることが、イスラエルのテルアビブ大学糖尿病ユニットの研究で示された。

 「朝食をきちんと摂ることが減量につながり、体重コントロールに良い影響が出ることを示した研究は多くあります。今回の研究では、朝食を摂ることが、その日の血糖コントロールにも好ましい影響を及ぼすことが分かりました」と、イスラエル大学糖尿病ユニットのダニエラ ヤクボウィッチ教授は言う。

 研究は、過体重の2型糖尿病患者22人(平均年齢57歳、罹病期間8.4年、BMI28.2、HbA1c7.7%)を無作為に割り付けるクロスオーバー試験として行われた。参加者に1日目は3食を摂取してもらい、2日目は朝食を抜き昼食と夕食だけをとってもらった。それぞれ食事の内容は、ミルク、ツナ、パン、チョコレートバーで、正確にカロリーを等分してあった。

 その結果、朝食を抜いた日の血糖値のピークは、昼食後268mg/dLで、夕食後は298mg/dLだった。これに対して、朝食を食べたときの昼食および夕食後の血糖値のピークは、それぞれ192mg/dL、215mg/dLで、血糖値の急な上昇が抑えられていた。さらに、インスリン分泌のピークは、朝食を抜くと30分遅れることが判明した。
朝食を抜くとβ細胞にダメージが
 「結果として、朝食を摂らないことが、その日の昼食や夕食の後の血糖値の急な上昇をまねき、1~2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cの悪化につながることが示されました」と、ヤクボウィッチ教授は言う。

 研究者によると、朝食を抜くと、昼食後にβ細胞がインスリンを分泌する機能を回復するために時間がかかり、インスリン反応に低下と遅延が起こり、結果として1日の血糖値が上昇しやすくなるという。

 さらには、前日の夕食から昼食までに空腹の時間が長く続くと、血中の遊離脂肪酸が増加し、血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなる可能性がある。

 「朝食を抜くことがβ細胞の機能に大きなダメージを与える可能性があることが示されました。たとえ昼食と夕食を食べ過ぎなかったとしても、朝食を抜くと高血糖になりやすくなるのです。"朝食を抜かない"という食事スタイルを、2型糖尿病患者さんにお勧めします」と、ヤクボウィッチ教授はまとめている。

Adolescents who skip breakfast may develop obesity(サンパウロ研究財団 2019年7月22日)
Skipping breakfast is associated with adiposity markers especially when sleep time is adequate in adolescents(Scientific Reports 2019年4月23日)
Poor breakfast quality has a negative effect on cardiovascular health in childhood(エルフヤル財団 2018年10月16日)
Influence of Physical Activity on Bone Mineral Content and Density in Overweight and Obese Children with Low Adherence to the Mediterranean Dietary Pattern(Nutrients 2018年8月12日)
Skipping breakfast associated with increased risk of cardiovascular death(米国心臓学会 2019年4月22日)
Association of Skipping Breakfast With Cardiovascular and All-Cause Mortality(Journal of the American College of Cardiology 2019年4月30日)
Diabetics Who Skip Breakfast Provoke Hazardous Blood Sugar Spikes(テルアビブ大学 2015年7月28日)
Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial(Diabetes Care 2015年7月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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