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2015年12月12日
2種類のインスリンを配合した「ライゾデグ」 1日1回注射で低血糖が減少
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- 医療の進歩 医薬品/インスリン 糖尿病の検査(HbA1c 他)

治療の強化が必要であっても注射回数を増やせないと、血糖コントロールの目標を達成できなくなる。これまでの試験で、持効型インスリン製剤で治療を受けている2型糖尿病患者の50%以上が目標とするHbA1cに達しておらず、強化インスリン療法が適切な時期に開始されていない課題が示されている。
「ライゾデグ配合注」は1日1回の注射から治療を始められ、インスリン療法で基礎分泌と追加分泌の両方を補う必要がある患者や、中間型・持効型インスリン製剤で治療しており追加分泌を補う必要がある患者で、よりシンプルな治療による改善を期待できるという。
「トレシーバ注」は皮下注射後は皮下組織で可溶性で安定したマルチヘキサマーとして一時的にとどまり、モノマーはマルチヘキサマーから徐々に解離するため、皮下投与部位から緩徐かつ持続的に血中へ移行し、長い薬物動態および薬力学的プロファイルを示す。
また、「ノボラピッド注」は皮下注射後は組織間液で希釈されることにより、ヘキサマーから急速にダイマー、モノマーへと解離して速やかに血中に移行し、短時間で血糖降下作用を発現する。
「トレシーバ注」と「ノボラピッド注」の作用は互いに干渉することはなく、「ライゾデグ配合注」は、明確なピークを示すノボラピッド注と平坦で安定した作用を示すトレシーバ注の特徴を併せもつ。
「Treat to Target試験」は、新規のインスリン製剤群と従来の対照薬群を比較し、同様の血糖コントロールを目指し治療を行う試験。新規薬の有用性を、対照薬に対する非劣性(HbA1c)を検証した上で、低血糖の頻度や重症度などの項目により評価した。
2型糖尿病を対象とした臨床試験(Treat to Target試験)により、1日1回、カロリーや炭水化物の摂取量の多い1日の主たる食事の直前に注射することで、対照薬である従来の持効型インスリンに対する非劣性(HbA1c)が確かめられ、低血糖や夜間低血糖の発現頻度を高めないことが確認された。
また、1日2回、朝・夕食直前の注射で、低血糖および夜間低血糖の発現頻度を高めずに、対照薬である二相性インスリン アスパルトに対する非劣性(HbA1c)が確かめられた。
ライゾデグ配合注はこれまでに日本を含む6ヵ国で発売されている(11月13日現在)。同社は、シンプルな治療の強化を実現し、低血糖の発現頻度を高めず、より良い血糖コントロールの達成を可能にするための新たな選択肢となるとしている。

アメリカとカナダで1980年代から1990年代に行われた大規模研究「DCCT」では、1型糖尿病患者が発症早期から強化インスリン療法を行うことで、HbA1cの改善により網膜症などの血管合併症のリスクが減ることが示された。しかし、その代償として、患者には生涯にわたり低血糖への恐怖や日常生活上の制約(頻回注射による不便、苦痛など)がつきまとうようになった。
また、2型糖尿病における心血管合併症の抑制を目指した大規模介入研究「ACCORD」や「VADT」では、インスリン療法では重症低血糖や体重増加といったリスクを減らすことが重要であることが示された。血糖コントロールの管理目標の達成するために"患者毎の管理目標の設定""HbA1cの量と質の改善を目指した良質な血糖管理の達成""早期介入による病態進行の抑制"が必要となることが示唆された。
加来氏は、従来のインスリン治療の問題点として、▽効果が一定しない(個体内での日々の効果のばらつきがある)、▽厳格な血糖コントロールに伴う低血糖、▽利便性(皮下注、日常生活の制限など)の悪さからくるアドヒアランス不良、▽患者に一定の理解力が求められ、導入には制限が伴う――といった点を指摘。
その結果、インスリン療法導入を適切な時期に開始できず、治療目標達成とその維持が困難になっている。これからのインスリン療法には「低血糖リスクの抑制」「注射の回数やタイミングなど、患者が治療を継続しやすいよう配慮されている」ことが求められるという。
加来氏は、「ライゾデグ配合注」の特徴として、▽基礎インスリンと追加インスリン補充が可能、▽基礎補充と追加補充の役割が明確、▽長い持続時間、▽個体内変動が少ない――といったポイントを指摘。
「ライゾデグ配合注」の第3相臨床試験の結果を紹介して、▽厳格な血糖コントロールに伴う(特に夜間の)低血糖が減少する、▽注射回数は1日1回(主たる食事の前に注射)から始められ、注射タイミングを患者ごとに選べる――などのベネフィットが多いことを解説した。
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