ニュース
2013年05月29日
魚油サプリメントで2型糖尿病に対策 血中のアディポネクチンを増加
DHAやEPAが含まれる魚油サプリメントを摂取すると、糖尿病や心臓病の危険性が低下するという研究が米国で発表された。ハーバード大学公衆衛生学部のジェイソン ウー博士らが、米国内分泌学会誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に発表した。
アジやイワシ、サンマなど青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸は「オメガ3脂肪酸」と総称されており、「アディポネクチン」を増やすことが知られている。適度に摂取すると、動脈硬化の予防や、血糖の調節や炎症といった代謝に有益に働くと考えられている。 内臓の脂肪細胞などから分泌される生理活性物質「アディポカイン」は、2型糖尿病や、冠動脈疾患、脂質異常症などに深く関わっている。アディポカインには善玉と悪玉があり、善玉アディポカインには、動脈硬化を予防する「アディポネクチン」や、食欲を抑制するレプチンなどがある。 血中のアディポネクチンが増えると、傷ついた血管を修復したり、免疫細胞(マクロファージ)が血管壁へ付着するのを防ぎ、動脈硬化が改善される。さらに、全身の細胞内のエネルギー代謝を調節する「AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)」活性化し、糖の取り込みや脂肪酸の燃焼が促され、インスリン抵抗性が改善すると考えられている。 今回の研究では、オメガ3脂肪酸が高濃度に含まれる魚油サプリメントが、血流中のアディポネクチンの量をわずかに増やすことが示唆された。 「魚油を摂取するとアディポネクチンが増加することは、過去に行われた動物実験では確かめられていました。同様の効果がヒトでも当てはまるかどうかはよく分かっていませんでした」と、ウー博士は述べている。 ウー博士らは、14件のランダム化プラセボ対照臨床試験をメタ解析し検討した。682名の参加者が魚油を摂取し、641名にオリーブ油やひまわり油などがプラセボ(偽薬)として与えられた。 魚油を摂取したグループではアディポネクチンレベルは0.37ug/mLに増加した。「研究では、魚油を摂取すると血中のアディポネクチン濃度が上昇し、結果として血糖コントロールと脂肪細胞の代謝に対し良い効果がもたらされることが示唆されました」とウー博士は述べている。 「血中のアディポネクチン濃度が高いと、冠状動脈疾患を発症する危険性が低下することが知られていますが、血糖コントロールや2型糖尿病の発症との関連についてはまだ分かっていません」、とウー氏は付け加えている。 魚油がアディポネクチンに与える効果は実験によって大幅に異なっており、魚油サプリメントはある特定のグループには効果があったが、他のグループでは効果が弱い可能性があることも示された。 「今後の研究で、魚油のアディポネクチンレベルへの影響を定量化し、魚油サプリメントの恩恵を受ける可能性がありそうな集団を調査する必要性があります」と強調している。 なお、内臓の脂肪細胞が肥大化すると、善玉のアディポネクチンの分泌が減り、悪玉のアディポカインの分泌が増えていくことが知られている。また、ウォーキングなどの運動を習慣として続けると善玉のアディポネクチンは増える。アディポネクチンを増やす秘訣は、肥満の解消と運動であることはほぼ確実だ。 Fish oil supplements may help fight against Type 2 diabetes(米国内分泌学会 2013年5月22日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
おすすめニュースの関連記事
- 【座談会】先生たちのSAP体験談2 インスリンポンプの新機能を使って
- 糖尿病のインスリン療法(BOT)で注射量の調整を自分で行うことに不安を感じている人は半数 ネットワークアンケートより
- インフルエンザを防ぐ最善の方法は「ワクチン接種」を受けること 糖尿病のある人はとくに重要
- 糖尿病とともに生きる 糖尿病は人生の妨げにならない WHOの「グローバル糖尿病コンパクト」
- 糖尿病の人の足を守るために 気づかず進行する「足の動脈硬化(LEAD)」にご注意 日本初の研究を開始
- 糖質量からお店や商品が探せるアプリ「ドコカボ」〜開発者の赤坂さん夫妻に聞く[PR]
- 【座談会】先生たちのSAP体験談 ~ご自身のこと、患者さんのこと~
- 糖尿病が「治る」病気に? 100⼈に1⼈は⾎糖値が正常化し薬が不要に こんな人が「寛解」しやすい
- 【新型コロナ】糖尿病の人はワクチンの追加接種が必要 ワクチンはもっとも安全で効果的な方法
- 「低炭水化物ダイエット」は植物ベースだと糖尿病に良い 1万人以上を34年調査