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2011年10月28日
メタボは危険因子 体に蓄積した脂肪の“質”がカギ
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同じくらいの肥満であっても、2型糖尿病や心疾患などを発症する人と発症しない人に分かれる。生活習慣病を発症する原因は、実は肥満にともなう脂肪の“量”ではなく“質”にあるという研究が、米カリフォルニア大学デービス校のIshwarlal Jialal教授(糖尿病・内分泌内科学)らによって発表された。
メタボの人ではマーカー蛋白質が増加
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満、高血圧、高血糖、高コレステロールという危険因子が複数重なった状態をさす。これらの危険因子が2型糖尿病や心疾患の引き金となることが知られる。
研究者らは、脂肪組織内のマーカーとなる蛋白質に着目した。これまでの研究で、メタボリックシンドロームになると、インスリン抵抗性と慢性炎症に関連するバイオマーカーが血中に増えることが知られているが、マーカー蛋白質がどこから分泌されるか良く分かっていなかった。
「肥満は全てが同じではなく、体脂肪が有害である場合とそうでない場合がある。メタボリックシンドロームの人の脂肪と単なる肥満の人の脂肪では、質的な違いがある。メタボのある人では脂肪の機能不全が起こっており、そのためにメタボは危険因子となる」とJialal氏は説明している。
Jialal氏らは、メタボリックシンドロームと診断された39人と単なる肥満の26人の、脂肪組織内のマーカー蛋白質の濃度を比較した。その結果、メタボ診断群の方が肥満群より著しく高いことが示された。これにより、マーカー蛋白質がメタボリックシンドロームの人の脂肪組織から分泌されることが示された。
研究者らは、空腹時血糖値、腹囲周囲径、体格指数(BMI)を比べるとともに、被験者の脂肪組織中のマクロファージを数え、糖尿病と心疾患の11のバイオマーカーを調べた。メタボリックシンドロームの人では、脂肪組織でマクロファージと呼ばれる免疫細胞が活性化し、その数も増加していることが分かった。これは、心血管疾患の原因にもなる炎症反応が起こっていることを示している。
Jialal氏らは昨年、今回と同じ65人の患者で、血管内皮を形成し正常な心血管の指標となる「血管内皮前駆細胞(EPC)」を比較した。こちらも、メタボ診断群は肥満群より数が少ないことを発見している。
米国疾病管理予防センター(CDC)の推計によると、米国成人の35%がメタボリックシンドロームをもっており、有病率は小児や若年者でも増加している。メタボリックシンドロームは心疾患リスクを2倍に増やし、心臓発作や脳卒中の危険性も高まるだけでなく、2型糖尿病の発症も5倍以上に増える。
同氏は「心疾患や糖尿病合併症を発症してからでは、治療は困難になり費用もかかる。これらの発症に先だって起こるメタボリックシンドロームの段階で対策をすると効果的だ。食事や運動などの生活習慣を改善することが望ましいが、簡単なことではない。脂肪の質を改善するための治療も必要かもしれない」とJialal氏は述べている。
この研究は米医学誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」(電子版)に発表された。
Disease-causing fat cells linked to metabolic syndrome(カリフォルニア大学 2011年8月24日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所