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2011年07月28日

被災患者の支援にソーシャル・ネットが活躍 【東日本大震災】

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 2011年3月11日に日本の太平洋三陸沖を震源として発生した東日本大震災と津波により、医療体制も深刻なダメージを被った。災害時の糖尿病や高血圧症、腎症などの慢性疾患のある患者に対する医療支援は大きな課題となっている。ソーシャル・ネットワーキング・サービスの利用が支援活動に大きな役割を果たしたという報告が医学誌「Lancet」に発表された。

 ツイッター(Twitter)は、インターネット上で個々のユーザーがツイートと称される短いテキストを投稿し、双方向の会話ができるコミュニケーション・サービス。パソコンだけでなく、携帯電話などからも利用できる。東日本大震災ではツイッターが役にたったと、災害時に派遣された医療チームの医師らが報告している。この報告は医学誌「Lancet」に発表された。

 「医療支援を迅速・適切に行うために、ツイッターの活用は有用だ」と慶応義塾大学医学部循環器内科の田村雄一氏、福田恵一氏らは話す。災害発生時に電話回線網は混乱していたが、インターネットのアクセスは比較的安定していたのが功を奏した。このことは肺高血圧症など重篤な患者にも連絡することができ、情報を共有できることを意味している。

 「災害の初期段階では、医薬品のサプライ・チェーンの形成は困難だった。そうしたときにソーシャル・ネットワーキング・サービスの利用は有用だった。被災し避難している患者に、どこに行けば医薬品があるかを教えることができた。そうした情報は患者のネットワークを介してすぐに広がり、適切な医療提供へとつながった。震災被害は深刻なものだったが、物質的な支援と同様に、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの利用は障害を克服する上で重要な役割を果たした」としている。

 また、震災により600人の透析患者を、福島原発からわずか40kmほど離れたいわき市から新潟市の病院へ、速やかに移送しなければならなかった。「多くの患者を複数の医療機関に受け入れてもらう必要があった。患者は自分の診療記録をもっていない。医療機関に到着すると急いで検査と問診を行い、治療内容を確認する必要があった。600人という多数の透析患者を、速やかに透析施設に移送し治療を開始した例はこれまでにない」と新潟大学の風間順一郎氏と成田一衛氏は話す。

 慶応義塾大学の前田正一氏らは、災害時のプライマリ・ケアの問題を指摘している。「地震、津波、原発事故による深刻な影響があり、医療を必要としている多くの患者が受診できなくなった。糖尿病や高血圧症といった疾患のある、緊急ではなくとも継続した診療を必要とする患者が適切な治療を受けられるよう、日本は災害時のプライマリ・ケア対策を強化する必要がある」としている。

Japan: Accounts from doctors of the tsunami disaster, including the positive effect of Twitter and the moving of 600 dialysis patients(EurekAlert)
Earthquake in Japan
The Lancet, Volume 377, Issue 9778, Page 1652, 14 May 2011

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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