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2010年12月17日
「バイエッタ」が新たな治療選択肢に 世界初のGLP-1受容体作動薬が発売
バイエッタなどのGLP-1受容体作動薬による治療は、良好な血糖コントロールを実現する新たな2型糖尿病の治療法として注目されている。日本イーライリリーは15日、都内でバイエッタの発売に合わせて記者説明会を開催した。
空腹時および食後血糖値の上昇を抑制、体重減少も
バイエッタは2005年に米国で承認・発売された世界初のGLP-1受容体作動薬で、GLP-1のアナログを製品化した注射薬。80以上の国と地域で承認されており、これまでの使用年数は9年、処方患者数は130万人、公表論文は800以上に上る。日本では2010年12月17日に発売された。
バイエッタは、食事療法と運動療法に加え、経口糖尿病治療薬のSU(スルホニルウレア)薬(ビグアナイド薬またはチアゾリジン薬との併用を含む)を使用しても十分な効果が得られない場合、2型糖尿病患者に対して使用できる。用法・用量は、1回5μgを1日2回朝夕食前に皮下注射する。また、投与開始から1ヵ月以上の経過観察後、患者の状態に応じて1回10μg、1日2回投与に増量できる。
GLP-1受容体作動薬は、食事摂取に伴うグルコース濃度上昇に応じて、膵β細胞からのインスリン分泌を促進し、血糖コントロールを改善する。バイエッタの国内第III相臨床試験では、バイエッタ10μg群投与後24週で、平均HbA1c値はベースラインから1.62%低下したことが示された。
ビグアナイド薬とα-グルコシダーゼ阻害薬を除くほとんどの糖尿病治療薬はインスリン分泌を促す作用があり、結果として「体重増加」を伴うことが糖尿病治療での課題となっている。体重増加は体脂肪の増加、インスリン抵抗性の進行、運動不足などの要因となる。
バイエッタについては、副次的な作用として体重減少が報告されており、期待を集めている。国内第III相臨床試験では、バイエッタ10μg群投与後24週で体重が平均1.54kg減少した。これまでに臨床試験の結果が発表されたGLP-1受容体作動薬のうち、有意な体重減少が認められたのはバイエッタ(10μg/日)のみとなっている。
GLP-1受容体作動薬では血糖自己測定器加算が認められる
記者説明会では、東京大大学院医学系研究科の門脇孝教授(糖尿病・代謝内科)が講演し、「糖尿病治療では、早期からの食後高血糖抑制を含めた厳格な血糖コントロールによる合併症抑制が重要」と説明し、バイエッタについて「糖尿病治療で使用する最初の注射剤としての使用が期待される」と述べた。
食事療法と運動療法に加え、SU薬(ビグアナイド(BG)薬またはチアゾリジン(TZD)薬との併用を含む)を使用しても十分な効果が得られない場合、「バイエッタ+SU薬」にBG薬やTZD薬を加える治療法が考えられるという。
日本イーライリリー マーケティング本部長のニール・オーブション氏は会見で、バイエッタがSU薬、BG薬やTZD薬の2剤との併用が可能であることを強調し、「既存のGLP-1受容体作動薬にない特徴だ」と説明した。同社が医師を対象に行った調査では、2剤以上の経口剤で治療を受ける患者に対し、GLP-1受容体作動薬の処方を検討している医師が多かった。
また、海外でのバイエッタとインスリングラルギンとの比較試験で、バイエッタによる治療で有意に食後高血糖が抑制されたことや、国内第III相臨床試験で空腹時血糖値が有意に低下(10μg群で-29mg/dL)したこと、血糖自己測定(SMBG)で血糖値の日内変動幅が抑えられたこと、治療下で中程度以上の低血糖が少なかったことなどが紹介された。バイエッタには膵β細胞の保護効果も期待されている。
インクレチン関連薬は新しい作用機序のある薬剤として2009年12月から使用が可能となった。インクレチン関連薬は、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬がある。
DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の違いとしては、DPP-4阻害薬が経口薬で、GLP-1受容体作動薬が注射薬であることに加え、GLP-1受容体作動薬の自己注射を行っている患者に対しては、血糖自己測定値に基づく指導を行うために血糖自己測定器を使用した場合に、診療報酬点数の算定が認められている点が大きい。その場合の所定点数はインスリン製剤の自己注射を行っている患者に準じる。
「バイエッタ皮下注5μgペン300」、「バイエッタ皮下注10μgペン300」の薬価は、それぞれ300μg1キット9661円。
インクレチンの適正使用を勧告
GLP-1受容体作動薬のリラグルチドについて2010年11月、インスリン療法からの切り替えで糖尿病ケトアシドーシスを発症し、死亡に到った2例に加え、著明な高血糖をきたした7例が報告されたのを受け、「インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会」(委員長:清野裕・関西電力病院院長)は、「リラグルチドはインスリンの代替とはならないため、インスリン治療中の患者では、患者がインスリン依存状態にあるか、非依存状態にあるかについて評価を行ったうえで使用の可否を判断する(インスリン依存状態にある患者では本剤への切り替えは行われるべきではない)」との声明を発表した。
会見では門脇教授はバイエッタが新薬であることにふれ、「SU薬併用時にはより慎重な取り扱いが必要だ。SU薬で治療中の患者に追加投与する場合、SU剤の用量をあらかじめ減量して使うことが望ましい。当面は糖尿病専門医に委ねられるべきだ」と述べた。
関連情報サイトByetta.jp - 医療関係者向け糖尿病情報サイト(日本イーライリリー)
糖尿病治療薬「ビクトーザ皮下注18mg」に関する医薬関係者向け注意喚起等について(厚生労働省、2010年10月12日)
「インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP4阻害薬)の適正使用に関する委員会」から((社)日本糖尿病学会、2010年12月17日)
使用薬剤の薬価(薬価基準)等の一部改正について(厚生労働省、2010年6月11日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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