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2006年10月12日
生体腎臓移植の指針を策定へ 愛媛の臓器売買受け
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愛媛県の病院で昨年9月に行われた生体腎臓移植手術をめぐる事件で、腎臓移植を受けた患者と、売買を仲介した女性の2人が逮捕された。
容疑者の患者は、糖尿病性腎症が進行し腎不全となり、腎臓移植を望んでいた。そこで、仲介した女性は知人の女性に、臓器の提供者(ドナー)になってくれたら謝礼を渡すと、臓器売買をもちかけたという。
容疑者の患者は、糖尿病性腎症が進行し腎不全となり、腎臓移植を望んでいた。そこで、仲介した女性は知人の女性に、臓器の提供者(ドナー)になってくれたら謝礼を渡すと、臓器売買をもちかけたという。
臓器提供のルールが必要
今回の生体腎臓移植をめぐる臓器売買事件を受けて、厚生労働省は臓器移植法の運用指針(ガイドライン)を改正し、生体臓器移植について初めて国の指針をつくる方針を固めた。
臓器移植法では、臓器を提供する場合のみ脳死者からの臓器の摘出と移植を認めるよう定められている。日本臓器移植ネットワークがあっせんを行い、臓器売買が起きないよう患者とドナーについての個人情報を相互に伝えないことを原則としている。
しかし、生体間移植については法律による明確な規定はなく、日本移植学会が定めた生体臓器移植についての「倫理指針」しかない。指針では提供者を原則として患者の親族に限定し、親族でない場合は、医療機関の倫理委員会が報酬目的でないか、自発的な意思によるものかなどを留意し、承認することなどを求めている。
今回の事件では、移植を手がけた医師が同学会の会員ではない、患者に分かるように十分な説明をしたうえで手術の同意書を取っていない、病院に倫理委員会を設置していないなど、同学会の指針に反していた増える透析人口 臓器提供数を増やす仕組みも必要
こうした事件が起きた背景に、日本では腎臓移植を望む患者の増加に比べ、脳死による臓器提供が不足しており、腎臓などの移植は生体からの移植が多くを占めるようになったことがある。
日本透析医学会が毎年実施している調査によると、2004年12月31日現在の国内の透析人口は24万8,166人で、1989年から2倍以上に増えた。うち糖尿病性腎症の患者は約3割(7万1,394人)を占め、1年間に新たに透析を始めた患者の原疾患も、糖尿病性腎症が最も多く、1万3,920人と4割以上を占める。
透析療法以外の治療法は臓器移植しかなく、移植を望む患者は多い。しかし、心停止後の腎臓摘出による移植は2005年は144件にとどまり、脳死からの腎移植は16件と少ない。
一方で、腎臓移植は以前は血液型の適合が必要だったが、現在では拒絶反応を抑える薬が進歩し、血液型が適合しない場合でも移植が可能になった。そこで、日本移植学会は昨年に倫理指針を改定し、血縁者間に限っていた生体間の臓器提供を、非血縁である夫婦や配偶者の3親等以内まで認めるようにした。
非血縁者のドナーは年々増え、昨年に国内で行われた生体腎臓移植830件余りのうち、非血縁者ドナーは全体の25%を占める。
参考文献:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2004年12月31日現在)」
●詳しくは独立行政法人福祉医療機構のサイトへ第23回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会
●日本移植学会のサイトへ
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所