ニュース

2018年05月28日

糖尿病患者の薬物療法の負担を測定 負担が強いとHbA1c値は悪化

 奈良県立医科大は、2型糖尿病患者の薬物療法の負担感と満足度を測定する調査方法「DTBQ」を開発し、試験を実施した。
 血糖コントロールが悪かったり、服薬コンプライアンスが良くない患者ほど、治療の負担が強いことが示された。
 糖尿病の治療は多様化している。患者のライフスタイルに合った治療を選び、患者の負担を減らす必要があることが浮き彫りになった。
患者のライフスタイルに合わせた治療を選択
 奈良県立医科大学は22日、日本イーライリリーの支援を受け、2型糖尿病患者の薬物療法の負担感と満足度を測定する調査方法「DTBQ」(Diabetes Treatment Burden Questionnaire)を開発し、236人の成人患者を対象に試験を実施した。

 糖尿病の治療は進歩しており、さまざまな治療薬や薬物療法が登場しているが、血糖コントロールが十分に改善されない患者は依然として多い。

 糖尿病の治療薬の種類が増えたことを背景に、糖尿病データマネジメント研究会の調査で、複数剤を併用する患者が増加している一方で、服用頻度が高ければ高いほど服薬コンプライアンスが悪い状況が示されている。

 服薬コンプライアンスは、患者が薬剤を決められたとおりに服薬すること。服用法を正しく守らず、飲み忘れたり飲み間違えたりすると、治療効果が上がらなかったり副作用が生じたりする。

 最近の糖尿病治療では、多くの治療薬・治療方法が出てきたことを背景に、患者中心のアプローチが重視され、患者の意向や負担を考慮し患者のライフスタイルに合わせた治療薬・治療方法の選択が望まれている。
患者の心理的負担を評価する「DTBQ」
 新たに開発された「DTBQ」は、糖尿病患者の治療に関する負担感と満足度を評価するための質問票。

 従来の「PAID」や「DDS」は、糖尿病の治療にともなう負担を包括的に評価することができる一方で、薬物治療に対して患者が感じている負担を評価するのは難しかった。

 「DTBQ」は、患者の基本情報を聴取するパートと、最近1ヵ月で受けた薬物療法への負担感を評価するパートの2部で構成される。負担感を尋ねる質問は18項目。それぞれ患者の心理的負担を7段階で評価し、そのスコアをもとに治療負担を評価する。
HbA1c値や低血糖が患者の負担に強く影響
 今回の調査で、患者の負担を、236人の患者のDTBQのトータルスコアによりみたところ、主に次のことが分かった。

(1)投与法、投与回数別をみたところ、患者の負担は、週1回の経口薬がもっとも低く、次いで1日1回の経口薬の服用、次に週1回の注射薬の服用の順となり、1日複数回の経口薬服用は患者負担が高いことが明らかになった。

(2)HbA1c値が7.0%未満の患者と7.0%以上の患者を比較すると、HbA1c値が7.0%以上の患者の方が負担が重い。HbA1c値が高い患者の方が薬物療法における負担を感じていることが分かった。

(3)低血糖の経験のない患者よりも経験のある患者のスコアが有意に高く、低血糖経験のある患者の方が治療に対して負担を感じていることが分かった。

(4)投与頻度をみると、注射薬、経口血糖降下薬ともに、コンプライアンスの良い患者は負担のスコアが低く、治療に対する負担が軽度であるという結果になった。
患者のライフスタイルに合わせた治療を
 これの結果について、奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井均教授は、「患者さんの血糖値やHbA1c値、また薬物療法の効果のみならず、患者さんのライフスタイルを背景としたさまざまな治療負担を考慮して、治療法を決定していくことが望まれます」と、強調している。

 さらに「今回の検証により、糖尿病薬物療法の負担感と満足度に関するDTBQの質問票の信頼性と再現性が確認された」とした上で、「患者さんに合ったより良い治療方針を決定していくことに役立つことを確信しています」との見方を示している。

 調査は2016年11月〜17年2月に実施された。詳細は学術誌「Diabetes Therapy」に発表された。
奈良県立医科大学
日本イーライリリー
Reproducibility and Validity of a Questionnaire Measuring Treatment Burden on Patients with Type 2 Diabetes: Diabetic Treatment Burden Questionnaire (DTBQ)(Diabetes Therapy 2018年3月29日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲