ニュース

2018年03月01日

アルコールの飲み過ぎが「認知症」の原因に リスクは3倍以上に

 アルコールの飲み過ぎは、あらゆる種類の認知症、特に早期認知症のもっとも重要な危険因子であることが、3,000万人以上を対象とした大規模調査で明らかになった。
 「健診でアルコール障害を早期に発見し介入することで、認知症を減らせる可能性があります」と、研究者は指摘している。
アルコール障害が認知症リスクを3倍以上に上昇させる
 研究チームは2008〜2013年に、フランスの3,162万4156人の医療記録を解析した。期間中に110万9,343人が認知症と診断された。

 その結果、「アルコール使用障害」(AUD)は、あらゆるタイプの認知症、特に早期発症型認知症の発症のもっとも重要な危険因子であることが明らかになった。

 アルコール使用障害は、あらゆる種類の認知症のリスクを、男性で3.4倍に、女性で3.3倍にそれぞれ上昇させるという。

 また、全体の5.2%にあたる5万7,353人が65歳以前に発症する早期認知症と診断された。認知症全体では女性の発症が多かったが、早期認知症に限ると3分の2(64.9%)が男性だった。

 早期認知症と診断された患者の半分以上が、アルコールの飲み過ぎと関連していることも判明した。
アルコールが原因の認知症は予防が可能
 世界保健機関(WHO)は、慢性的な大量飲酒をアルコール換算で、男性の場合は1日当たり60グラム以上、女性の場合は40グラム以上と定義している。

 アルコール10グラムは、ビールでは250mL(ロング缶の半分)、ウィスキーでは30mL(シングル1杯)、ワインでは100mL(グラス1杯弱)に相当する。

 「アルコールの飲み過ぎが認知症のもっとも重要な危険因子であることが明らかになりました。特に早期認知症は死亡リスクが高く、飲酒と関連が深いことも分かりました」と、世界保健機関(WHO)とともに調査をしているカナダ精神衛生・依存症センター(CAMH)の精神・保健政策部のユルゲン レーム氏は言う。

 20歳以上の成人がアルコール依存症になると、平均余命が短縮するという報告がある。認知症が主要な死因となっている可能性がある。

 「アルコールがもたらす脳のダメージと認知症は予防が可能です。アルコールをコントロールすることで認知症の発症をくい止められる可能性があります」と、レーム氏は強調する。
健診でアルコール障害を早期発見 指導介入を
 喫煙習慣、高血圧、糖尿病、うつ病、難聴などがあると、アルコールによる健康障害が増える傾向も示された。これらはすべて認知症の危険因子でもある。アルコールによる健康障害は多面的に、認知症の発症リスクを上昇させるとみられている。

 「精神科医として高齢者を診療していると、実際に認知症患者にはアルコール使用障害が多いことに気付かされます。認知症の予防の観点からみると、アルコールによる健康障害を改善する介入が遅れるケースが多いのは残念なことです」と、CAMHの副理事長のブルース ポロック氏は言う。

 「定期的な健康診断で飲酒状況をスクリーニングして、慢性的な大量飲酒を早期発見し、アルコール使用障害を治療することを、早期プライマリケアで開始する必要があります」と、ポロック氏は指摘している。

 今回の研究では、アルコール依存症のもっとも重篤な症例である入院を伴う治療のみを対象としていたが、アルコール依存は不名誉なことなので、現実には隠れて飲んでいる患者も多いとみられる。アルコールの飲み過ぎと認知症の関連は、実際にはさらに強くなる可能性があるという。

 研究は、公衆衛生についての医学誌「ランセット パブリック ヘルス」に発表された。

Largest study of its kind finds alcohol use biggest risk factor for dementia(カナダ精神衛生・依存症センター 2018年2月20日)
Contribution of alcohol use disorders to the burden of dementia in France 2008-13: a nationwide retrospective cohort study(Lancet Public Health 2018年2月20日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲