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2016年01月08日
膵臓のβ細胞を皮膚から生成するのに成功 インスリン分泌を確認

生成した細胞を糖尿病のマウスに移植する実験も行い、インスリンを分泌し血糖値が改善することも確認した。
今回の研究は、iPS細胞の研究で有名な京都大学の山中伸弥教授が上席研究員を務めることで知られるグラッドストーン研究所とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームによるもので、医学誌「Nature Communications」に発表された。
1型糖尿病は膵臓のβ細胞が自己免疫などを原因として破壊されることで発症する疾患だ。皮膚細胞からつくりだした健康なβ細胞を補う治療法が開発できれば、1型糖尿病を根治できる可能性がある。
「ヒトの皮膚細胞がらβ細胞に近似する細胞を効率的に、しかも早く生成することに成功しました。生成した細胞を1型糖尿病患者に移植する再生医療の実現に向けた大きな前進です」と、カリフォルニア大学糖尿病研究センターのディレクターであるマティア ヘブロック教授は言う。
研究チームは同じ方法ですでに心臓や脳、肝臓の細胞をつくるのに成功している。今回の研究では、4つの分子を加えることで内胚葉細胞を1兆倍以上に増やすのに成功した。生成した細胞は腫瘍形成の兆しをみせず、早い段階で器官特異的細胞として同定された。
新たに開発した方法であれば、iPS細胞やES細胞のような多分化能のある幹細胞を使わなくとも、より簡便で早い方法でβ細胞をつくりだすことができるという。
研究チームは作成した内胚葉細胞を使い、(1)膵臓の前駆細胞を生成し、(2)完全に機能する膵臓のβ細胞を生成する、という2つのステップを成功させた。
「重要なことは、つくりだした細胞が血糖値の変化に応じてインスリン分泌する能力があることが、マウスを使った実験で確かめられたことです。今回の研究は、細胞の直接的な再プログラミングの手法により、β細胞を生成した最初の例です」と、グラッドストーン研究所のサイヤング ズゥ氏は言う。
再生医療は2型糖尿病の患者にも効果的だ。インスリン療法を行っている患者数は世界で数百万人に上る。今回の研究は患者をインスリン注射から解放する手段となる可能性がある。
「皮膚の細胞サンプルは簡単に採取できます。その皮膚細胞からβ細胞を生成するのに成功したのは驚くべきです。患者自身の細胞から再生したβ細胞は、移植しても拒絶反応を引き起こしません。実際に臨床に応用するまでにまだ多くの研究が必要ですが、大いに期待しています」と、研究資金の一部を提供した「小児糖尿病研究財団」(JDRF)のカレン アディントン氏は述べている。
Insulin-Producing Pancreatic Cells Created from Human Skin Cells(グラッドストーン研究所 2016年1月6日)
Scientists Create Insulin-Producing Pancreatic Cells from Human Skin Cells(カリフォルニア大学糖尿病センター 2016年1月6日)
Human pancreatic beta-like cells converted from fibroblasts(Nature Communications 2016年1月6日)
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