糖尿病「ねほり はほり」

2008年10月17日

糖尿病腎症からの透析導入は半減できる

糖尿病腎症からの導入が一番多い

 透析療法が必要になる患者さんは、昔は慢性糸球体腎炎の方が多かったですが、近年糖尿病腎症からの透析導入の方が急激に増え、1998年に慢性糸球体腎炎からの導入数を超えて一番多い導入原因疾患になりました。今日では糖尿病腎症から透析療法を導入する人が全体の43.4%(2007年)と2番目に多い糸球体腎炎から導入24.0%(2007年)に比べ圧倒的に多い原因疾患になっています。

年別透析導入患者の主要原疾患(2007年末)

日本透析医学会:図説我が国の慢性透析療法の現状,図11,p.12より
http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2008/p012.pdf

 現在の透析患者総数27.5万人(2007年)のうち、33.4%(2007年)が糖尿病腎症の方ですが、現在原因疾患として一番多い慢性糸球体腎炎40.4%を抜いて、一番多い原因疾患になるのも時間の問題です。

年末患者の主要原疾患の割合推移(2007年末)

日本透析医学会:図説我が国の慢性透析療法の現状,図14,p.15より
http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2008/p015.pdf

透析療法は生活全体の大きく制限する

 透析療法の95%以上を占めている血液透析(HD)は、透析設備のある医療機関に通院して行い、だいたい1回に約4時間を要します。これを週に2〜3回行うのが一般的です。夜間に受ける方もおられます。日数を要する旅行や出張では出先での透析施設を予約しておくことが必要になります。わが国は腎臓移植がなかなか進まない状態ですが、透析療法については、透析施設の数、技術など恵まれた国といえます

 残りの数%の方が腹膜透析(CAPD)をしておられますが、CAPDは昼夜継続して切れ目なく行います。1日に約4回のバッグ交換が必要になりますが、バッグ交換は自宅や職場などで自分で行うことができますから、HDのように完全拘束される時間が少ないのが特徴です。順調に管理できているときは月1回程度の通院で済みますので、仕事を持っている方が行なうことが多いですね。

 しかし、いずれにしても透析療法を始めれば生活上の制約は大きく、特に、糖尿病腎症の透析は血糖コントロールが必要であることやほとんどの場合糖尿病腎症以外の合併症が進行していて、感染症、心血管疾患などが起きやすいといった困難にしばしば直面します。平均治療期間も慢性糸球体腎炎からの透析例に比べ伸び悩んでいます。ご本人もご家族も心身ともにご負担が大きいと思います。

 このようにきびしい病態を支援するために透析治療の本体部分は国費などで完全にカバーされていて個人負担がほとんどありませんから、わが国の透析に関する医療制度はよく整備されているといえるでしょう。反面、ひとり年間約500万円かかる医療費は27万人で年間1兆3500億円に達し他の医療費を圧迫しているのも事実です。 適切な治療で透析は避けられる

 糖尿病は、早い時期に治療をはじめ、塩分制限など必要な食事改善、血糖と血圧の管理など適切な治療を中断することなく続けていれば、多くの人は腎合併症をひどくしないで寿命を全うできます。

 わたしは自治医大で診療していたとき、自治医大で透析療法を導入された糖尿病患者さんについて調査を行ったことがありますが、驚いたことに7割の方に治療の中断歴があって、約3割の方に合併症出現後はじめて糖尿病の治療を開始という大変な遅れが見られるという結果でした。

 このことから、早期から糖尿病治療を開始し、生命の続く限り医師や医療スタッフと患者さんの継続的な協力関係が崩れることなく続くことこそが治療の根本であり、糖尿病の治療にごく早期から取り組んでいれば、多くの方は透析療法どころか合併症の発症・進展も遅くしたり止めたりすることができると確信するようになりました。

糖尿病腎症の進展抑制は効果を上げつつある

 このごろの糖尿病腎症治療は、食事・運動療法に力を入れる一方、経口薬・インスリンへの取り組みも積極化し、HbA1c値による血糖管理、高血圧、高脂血症の是正の徹底も進みつつあり、さいわい塩分摂取は社会風潮としても減少傾向です。そして腎臓や眼科など専門医との連携も進んでいます。

 糖尿病治療を得意とする医療機関では、既に糖尿病腎症をはじめとする糖尿病合併症の発症・進展を強力に抑制する方向に向かっているといえます。さらに医療機関全般の方々のご協力を得ることで、わが国全体の糖尿病および糖尿病腎症の治療成績を格段に改善させることができるはずです。 糖尿病腎症からの透析導入を減らそう

 世界的に見ても、昨年国連が世界的な糖尿病増加に対処するため「世界糖尿病デー」を定め、国際的にもさまざまな糖尿病対策が動きだそうとする時期でもあります。

 生活習慣病を減少させるという試みは簡単なことではありませんが、その中でも識字率が高いなど国民の理解力が抜きんでて高いわが国は、生活習慣病によるさまざまな合併症を予防・発症後の進行防止に高い可能性を持っている国といえましょう。

 また、近年のメタボリックシンドロームの撲滅運動、今年4月にはじまった特定健診・保健指導なども糖尿病治療のよい追い風になるといいですね。

 わたしは折をみては、「糖尿病腎症の透析導入は"患者への強力な血圧正常化により"半分から1/4に減らせるのではないか」と申し上げていますが、国、学会、医師会、協会などが協力して、糖尿病腎症の透析導入半減10年戦略というような取り組みをぜひ進めて行きたいと思うところです。

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