糖尿病「ねほり はほり」

2006年12月01日

早期糖尿病の進展抑制に関する
無作為比較臨床試験(JEDIS試験)(2)

この臨床試験の被験者の参加者をこれから募集いたします。

今回はそのお知らせです。

 財団法人日本糖尿病財団が研究助成する日本糖尿病進展抑制研究会(JEDIS)が、これから5年計画で行う臨床試験は、試験参加前6ヵ月以内に糖尿病の疑いあるので、精査の必要があると健診や人間ドックや高血圧や高脂血症などの疾患で診察時言われたことのある方々で、2,500名程度の人々に、JEDIS試験が今回設定した積極的糖尿病初期治療管理4コースのいずれかに、参加していただくものです。

この臨床試験の対象になる方々

 ご参加いただく条件は、年齢が30〜69歳で、初発の早期糖尿病の方です。75g糖負荷後血糖値200mg/dL以上と糖尿病の条件は満たしていますが、空腹時血糖が100〜125mg/dLまたは随時血糖値が140〜199mg/dLでHbA1c6.9%以下であることです。募集期間は2010年9月までとなっています。

 なお、臓器障害を伴う重症の高脂血症、高血圧症、あるいは、すでに糖尿病合併症が見られる方は対象になれません。

臨床試験を行う医療機関

 この臨床試験は、全国を大凡11地域に分け、それぞれの地域で研究責任者に統括をお願いし、全国で約100施設程度の医療機関の参加を予定しています。この参加施設を通じて、参加者の募集が行われます。参加施設の一覧はJEDISホームページ(作成中)でご覧いただけます。

仮登録と早期糖尿病の確定診断

患者登録から割付、介入観察までの流れ図


 試験対象条件を満たした方は臨床試験参加の同意をしていただき、仮登録を行います。そして早期糖尿病との診断が決まるまで、必要に応じてその施設の通常の生活習慣管理を受けていただきます。そして、糖尿病との診断確定を再度させていただくために、仮登録後3ヵ月以内に75g糖負荷試験などを受けていただき、早期糖尿病であり、糖尿病性合併症がないことを確かめ、この臨床試験の対象者としての再確認をさせていただきます。

本登録と4つのコースへの無作為配分

 そして、担当医師が本登録することにより、パソコンで無作為に貴方の治療法が決定されます。4種コースのうち3種の薬物治療法はそれぞれ血糖降下作用の有効性が確かめられていますので、どの治療法になっても血糖降下の効果の差の心配はありません。

 ただ、その有効性は血糖の高い確実な糖尿病患者で証明されたもので、まだそれ程血糖の高くない早期糖尿病の有効性は直接証明されていませんし、そのような患者さんを長期間血糖コントロールして、糖尿病が進展して合併症の発現が抑えられるどうかは、まだ証明されていないため、今回試験を行うわけです。

 もし、参加条件に合わなかった場合には、その医療機関での通常の診療の継続(保険診療)あるいは他の医療機関の紹介などを担当医師とよく相談をして、それ以上糖尿病を悪化させない治療や生活改善指導、またその他の合併する疾患の治療管理を継続するようにしていただきます。

臨床試験・・4つのコース

 この臨床試験の4種のコースはいずれも積極的かつ糖尿病進行抑制を期待して立案されています。そして、この4種の治療管理のなかでも、それぞれ微妙な違いがありますので、どのような早期糖尿病には、どの治療法が最も卓越した成果を上げるかを検討することを目的としています。そして、それらの治療法をその患者さんに合うように使い分けることにより、各種の糖尿病の重症化阻止、特に合併症発症抑制につなげたいと考えています。

 この臨床試験は糖尿病専門の医師、医療スタッフによる適確な糖尿病治療管理をサポートするために、現在、進歩が目覚しいIT通信技術を用いて被験者全体にいろいろな糖尿病に関する情報を送り続けます。

 標準コースは糖尿病学会が推奨する食事・運動療法を実施して、身体所見、生活活動量、検査値を中央センターで収集管理評価して担当医師の生活指導に反映するコースです。また3種(3種類の薬物投与)の比較対照コースは既に血糖降下の有効性が証明され、広く世界でも使用されている糖尿病治療薬をごく少量・早期から投与するコースで、合わせてこれら4コースを参加される方々に無作為に割り付けられます。以下に具体的に記しました。

(1)糖尿病学会推奨の生活習慣を改善するコース

 オムロン社製体重計、カロリー表示付き万歩計、家庭血圧計などが貸与されます。

 毎日、計測結果をJEDIS健康管理手帳に記入して、来院時提出し、その結果を中央センターでグラフ化され、次回の担当医師の治療に反映されます。

(2)経口血糖降下薬(グルコバイ)を服用するコース

 同じくオムロン社製体重計、カロリー表示付き万歩計、家庭血圧計などが貸与されます。また、グルコバイを服用していただきます。一般にαグルコシダーゼ阻害剤と総称される薬剤で、食物の中のデンプンや糖分の吸収を遅らせることで、食後血糖値を下げる薬です。食事の直前に服用し、1日1錠50mgからはじめて、血糖コントロール状態を見ながら300mgまで増量します。

(3)経口血糖降下薬(メルビン)を服用するコース

 同じくオムロン社製体重計、カロリー表示付き万歩計、家庭血圧計などが貸与されます。また、メルビンを服用していただきます。一般にビグアナイド剤と総称される薬剤で、肝臓で糖が合成されるのを抑え、筋肉などでの糖の利用を促進することにより、分泌されるインスリンの効きを改善することで、血糖値を低下させる薬です。食後に服用します。1日1錠250mgからはじめて、血糖コントロール状態を見ながら750mgまで増量します。

(4)経口血糖降下薬(グリミクロン)を服用するコース

 同じくオムロン社製体重計、カロリー表示付き万歩計、家庭血圧計などが貸与されます。また、グリミクロンを服用していただきます。一般にスルホニル尿素剤と総称される薬剤で、インスリンを産生している膵臓に直接働きかけて、ご自分のインスリンの分泌を促進することで、血糖値を低下させる薬です。食後に服用します。1日5〜10mgからはじめて、血糖コントロール状態を見ながら40mgまで増量します。

 こうして、臨床試験終了の2010年9月まで、参加者全員の方が2ヵ月1回の通院検査を受け、この臨床治験参加施設の医師や糖尿病療養指導士による糖尿病治療ガイドに基づく診察・検査、食事・運動療法の相談指導などが行われます。なお、少量投与ですが、薬物には副作用もあり、一部の薬剤には希に低血糖を起こすものもありますので、担当医師による投薬指導管理が注意深く行われます。

参加へのお勧めとお願い

 なお、この臨床試験は、新薬開発の治験などと違い薬代(健康保険適応)、交通費などが自費になります。しかし、糖尿病と分かった初期から経験豊富な糖尿病専門の医療スタッフによる積極的対応と治療が受けられ、糖尿病初期に参加される方が、糖尿病に対する正確な知識と糖尿病進展抑制に確固たる意志をもたれ、生活習慣改善に努められれば、ご本人にとってこれからの人生を通しての何ものにも代え難い宝物になるでしょう。この試験はそれをサポートするものです。また、参加者の皆さんの試験結果が、今後も現れ続くであろう参加者皆さんと同じ早期糖尿病患者に対する重要な治療情報を提供することともなり、それらの人々の今後の糖尿病治療の助けになるものです。

 この臨床試験の被験者対象条件とご自分の日常生活条件をクリアされた多くの方々に参加していただけることを大いに期待する次第です。

[ DM-NET ]

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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