糖尿病セミナー

34. 糖尿病とストレス
うつとの関連、QOLの障害

2002年3月 作成

QOL障害によるストレスと、その考え方

 糖尿病との付き合いは長く続きます。食事療法や運動療法あるいは薬物療法を、毎日規則正しく続けていくことが求められます。患者さん自身が「自分が糖尿病であること」を受け入れないとこれは難しく、糖尿病の治療そのものがストレスになってしまいます。よい血糖コントロールを維持し、治療に伴うストレスを少なくするには、まず、糖尿病を受容することが大事です。
 といっても、医師に糖尿病と診断され治療方法を説明されたとき、すぐにそれを理解し実行できる人は、大変恵まれた人といえるでしょう。実際には、「なんで自分が糖尿病なんかに」と落ち込んだり、「いったいなにが悪かったというのだ」と怒ってみたり、「医者の診断ミスだ」と病気を否定することのほうが多いものです。しかし、時間の経過とともに少しずつ冷静になり、やがて糖尿病であることを認め治療に取り組むようになります。
 このような経過は、それに要する時間に差はありますが、誰にでもあることで、糖尿病を受容するために必要な時間といえます。

糖尿病を"受容する"とは、
人生のなかの糖尿病の部分は"あきらめる"ということ

 食べたいのに食べられないなど、糖尿病治療に伴う快適さの制限(QOLの低下)を苦痛に感じることを、QOL障害と呼びます。食事に関することのほかにも、定期的な通院の必要性、薬物療法をしている場合の低血糖、合併症がある場合の身体的な症状などがあてはまります。
「糖尿病を受容する」とは、このようなQOLの低下を、怒りや否認などを経た後に、「仕方がないもの」としてあきらめるということです。もちろん、あきらめてなにもしないのではなく、あきらめきったうえで「それならばどうすればよいか」と考え直すという意味です。
 改めて書くまでもありませんが、人の幸せは、その人が糖尿病であるかないかだけで決まるものではありません。誰でもなにかしらの荷物は背負っています。
 確かに糖尿病によってQOLが下がることはありますが、それを"障害"と思わず、自分という人間をかたちづくるひとつの要素として考えてみてはいかがでしょうか。それまで気付かなかったことが、いろいろな意味で、よく見えるようになります。「災い転じて福となす」ということです。糖尿病によって失う部分は、あなたの可能性・人生の幸せからみれば、ずっと小さなものではないかと思います。
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