28. 小児の糖尿病(2)日常生活Q&A

2002年6月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
三木裕子先生

     このページは、1型糖尿病の子どもやご家族が疑問を抱くことの多い事柄を、Q&Aで三木先生に答えていただく形式でまとめたものです。小児の糖尿病の全般的なことについては、このコーナーの「小児の糖尿病(1)―基礎―」で解説していますので、必要に応じてご参照ください。

    三木裕子みきゆうこ先生プロフィール
     1957年生まれ。12歳のときに1型糖尿病を発病し、そのときに抱いた「将来は医師になる」という夢をかなえ、東京大学医学部附属病院で小児科医として勤務。29歳で結婚。発病から糖尿病を受容できるまでの期間が長かったこともあり(自称・劣等生患者)、網膜症を発症、レーザー治療を受けたこともあるが、その後コントロールを改善、35歳のときに元気な男の子を出産。その後も、医師として、そして同じ病気の患者として、糖尿病の子どもたちに接してきました。2005年、糖尿病とは異なる病気のため、惜しくも逝去されました。この小冊子の編集にあたって三木先生は、読者のみなさんへ、「よく『糖尿病だからといって、できないことはなにもない』といいますが、本当にそうだと思います。中学生になったらやってみたいこと、高校時代にかなえたい夢、将来こんな大人になりたい、結婚、出産…。どれも糖尿病を理由にあきらめなければいけないことではないはずです」と、メッセージされています。


    Q1
    私が1型糖尿病になったのは、なにが悪かったのですか?
     なにも悪くありません。1型糖尿病は食べすぎなどの生活習慣とは関係なく発病します。糖尿病がどうして発病したのかを知ることは、病気の理解を深めるためにもよいことですが、「なにが悪いのか」と考えても、何も生まれてきません。
    Q2
    先日、うちの子が糖尿病と診断されました。親としては、何から始めればよいのか教えてください。
     治療や生活面については他のテキスト類を参考にしていただくとして、ここでは気持ちの持ち方についてアドバイスします。
     保護者の方が陥りやすいのが「うちの子はなんて可哀相、なんて不幸なんだ」という心情です。ところが実際は低年齢で発症した場合、本当に大変なのは、食事やインスリン注射を管理する保護者なのです。本人は大抵それほど大変だと思っていません。私もそうでしたし、診察中に子どもに「何か大変なことある?」と聞いても、「何が?」と逆に聞き返されます。
     周囲から可哀相がられてばかりだと、子ども自身も「自分は可哀相なんだ」と思い込むようになり、それはあまりよいことではありません。保護者の方は、「一番大変なのは自分なんだ」ぐらいに考えて、過保護、過干渉にならないように注意が必要です。兄弟がいるのであれば、糖尿病でない子と分け隔てなく接するようにしてください。
     また、糖尿病のコントロールには、糖尿病であることを受容することが一番大切です。小児糖尿病の場合、まず、親が子どもの病気を受容できるかどうか、それがキーポイントになります。
    Q3
    糖尿病だからやってはいけないこととは、どんなことですか?
     ありません。スポーツにしても、オリンピックを目指して1日3〜4時間スイミングをしている子もいますし、トライアスロンをやる人もいます。ただ、どんな場合にも、自分の血糖値を自分で管理すること(低血糖の処置など)ができなければ、やっていいこともできなくなります。
    Q4
    なぜ、血糖コントロールの良い子と良くない子の差が生じるのですか?
     病気を受容できていない、病気であることを無視して生きようとしている子どもほど、コントロールがよくありません。しかし、こういう子も多くは何かがきっかけで、自分に糖尿病があることを認めたとき、コントロールが改善します。
     悪い見本が私自身で、本当の意味で受容できたのは30歳を過ぎ、網膜症が進行していると診断されたときでした。それまでは、自分も糖尿病でない人と一緒だと思いたいので、血糖測定もせず、1週間ほとんど眠らずに働くような生活をしていました。しかし、私のような劣等生患者はそう多くはありません。
     ひとつの出来事をきっかけに、コントロールが改善した例を挙げます。発病して6年間HbA1c10%前後が続く中学生の女の子がいました。彼女は高校受験のとき、面接で自分の病気のことを話したそうです。その結果見事に合格し、病気のある自分に自信を持つようなり、それからは素晴らしいコントロールになりました。多分、彼女の中で糖尿病に対するイメージが、マイナスからプラスに変わったのでしょう。マイナス思考を変えるには、言葉としては適切でないかもしれませんが、「病気を味方にして利用する」考え方も、必要だと思います。
    Q5
    子どもの糖尿病の食事療法で、大人の食事療法と異なる点はありますか?
     子どもは成長しているということです。栄養は十分に摂らなければいけません。摂取カロリーは〔1,000+年齢×100〕を目安に、体格にあわせて決めますが、成長にあわせて増えていきます。一旦摂取カロリーを決めると、2年ぐらいそのまま気付かずに過ぎてしまうといったことが意外に多いようですので、できれば保護者の方が、ときどき主治医に確認するのがよいのかもしれません。厳しい食事制限は不要です。必ず後にしわ寄せ(摂食障害など)が生じます。
    Q6
    食事は決まった時間に食べないといけませんか?
     1時間ぐらい前後するのは問題ありません。毎日きっちり同じ時間に3食摂るのは、実際には難しいことです。例えば、学校が休みの日にはいつもより寝坊したいものです。それをいつもどおり起きて、注射と食事をしてからまた寝るといった無理をしたとしても、そういう不自然な行動は長くは続かないでしょう。ただし、食事時間の変化による血糖値の変動が激しい子は、その対策を考えてください。

    糖尿病3分間ラーニング 関連動画

    糖尿病3分間ラーニングは、糖尿病患者さんがマスターしておきたい糖尿病の知識を、テーマ別に約3分にまとめた新しいタイプの糖尿病学習用動画です。

更新情報配信中!