糖尿病セミナー
25. 糖尿病と感染症
2016年9月 改訂
主な感染症の症状と対策
糖尿病の人は、あらゆる感染症にかかりやすくなっているといえますが、とくに次のような感染症に注意してください。尿路感染症
女性に多い感染症です。通常は尿道から感染し、膀胱炎、腎盂炎、腎盂腎炎と重症化していきます。合併症の糖尿病性腎症がある場合、その進行を加速してしまうこともあります。症状 陰部のかゆみや排尿痛、残尿感、尿が濁る、トイレが近くなる(頻尿)など。腎盂炎、腎盂腎炎に進行すると、腰痛、発熱なども。
対策
◆水分を十分に摂取する。尿意を我慢しない。膀胱機能障害がある場合は、時間を決めて定期的にトイレに行く。
◆陰部の清潔を心掛ける。女性はなるべく温水洗浄便座を使用したり、排便後のトイレットペーパーの使い方を注意する(前から後ろへ拭く)。
〔SGLT2阻害薬を処方されている人へ〕
◆新しい糖尿病薬のSGLT2(sodium glucose cotransporter-2)阻害薬を服用すると尿糖が血糖と関係して増加します。このため陰部に炎症を起こしやすくなります。
◆SGLT2阻害薬を処方されている人は陰部を常に清潔にするように心掛けてください。また陰部のかゆみを感じたなら主治医に伝えてください。
上気道炎・肺炎、結核
上気道炎とは鼻やのどの炎症で、いわゆるかぜのことです。かぜをこじらすと、気管支炎、肺炎を引き起こします。結核は、かつて長い間、死亡原因のトップだった病気です。現在は結核で亡くなる人は少なくなりましたが、患者数自体はあまり減っておらず、油断できません。
症状 主にかぜの諸症状。感染症が重症になるほどひどくなり、胸痛、呼吸困難などが現れる。結核はかぜに似た症状のほか、喀血〈かっけつ〉など。ただし、これらの症状が出るのは発病後かなり経過してから。
対策
◆こまめにうがいをする。うがい薬を用いればなお良い。
◆インフルエンザのシーズン前には、なるべく予防接種を受ける。
◆かぜだと思っても症状をあまくみない。かぜより重い病気にかかっている可能性もあるので、医師の指示に沿い、必要ならレントゲン検査などを受ける。
歯周病
歯周病は、口の中の細菌による歯茎の慢性感染症です。糖尿病の人は歯周病になりやすいばかりでなく、歯周病のために血糖コントロールが改善しにくくなってしまいます。症状 口臭や歯茎が腫れたりすることがあるが、虫歯と違って痛みはない。徐々に歯茎の骨が溶けてゆき、支えを失った歯は揺れ出し、やがて抜け落ちます。
対策 毎日、歯をしっかり磨き、歯と歯の間は歯間ブラシや糸ようじを使って掃除する。定期的に歯科を受診する。
※ 歯周病について詳しくは、このシリーズのNo.23「口の中の健康」をご覧ください。
皮膚感染症・足病変
白癬〈はくせん〉(水虫)やカンジダ症などが、全身に起きやすく、とくに唇や陰部などの皮膚の薄い部分に出てきます。また、足の水虫が潰瘍へと進行し、壊疽〈えそ〉の原因になることもあります。症状 皮膚のただれ、かゆみ、痛み、できもの、口内炎、水虫など。水虫は、皮膚だけでなく、爪にも広がってきます。
対策 からだを清潔にしておく。毎日入浴する。また、足の手入れを習慣づけ、小さな傷や水虫も早めに治療する。
※ 足病変について詳しくは、このシリーズのNo.17「足の手入れ」をご覧ください。
胆のう炎
胆のう炎は、胆石があると起きやすい病気です。糖尿病の人は胆石を抱えている人が多く、また、神経障害により胆汁が滞りやすいことから、胆のう炎を発症しやすくなっています。症状 上腹部の痛み、黄疸おうだん、発熱など。
対策 脂肪分の多い食事を控え目にする、大食をしない(胆石ができる原因となったり、すでにある胆石を刺激し、胆のう炎を起こす)。
そのほかの感染症
頻度はまれですが、糖尿病の人に特徴的な感染症として、悪性外耳道炎、鼻脳ムコール症、非クロストリジウム性ガス壊疽、気腫性胆のう炎などがあります。自覚症状が現れにくい病気で、進行してしまうと治療が難しくなります。神経障害と尿路感染症・胆のう炎
糖尿病の三大合併症のひとつの神経障害がある人では、尿路感染症や胆のう炎になる危険がより高くなります。
健康な人では、排尿後、膀胱はいったん空〈から〉になります。しかし、自律神経が冒されていると、尿意をなかなか催さなかったり、排尿時に膀胱が十分収縮しないため、膀胱内に常に尿が残った状態になります。このため、膀胱炎などの尿路感染症にかかりやすいのです。
胆のう炎も同じような理由で起こりやすくなります。胆のうは、食べたものに含まれる脂肪分の消化・吸収に必要な胆汁を排出する臓器です。自律神経障害で胆のうの収縮が不十分になると、胆のう内に胆汁が残り、そこに細菌が増殖してしまいます。
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糖尿病3分間ラーニングは、糖尿病患者さんがマスターしておきたい糖尿病の知識を、 テーマ別に約3分にまとめた新しいタイプの糖尿病学習用動画です。
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- 03. 運動療法のコツ(1) 基礎
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- 05. インスリン療法(2型糖尿病)
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- 07. 肥満と糖尿病
- 08. 小児の糖尿病(1) 基礎
- 09. 薬物療法(経口薬)
- 10. 糖尿病生活Q&A
- 11. 糖尿病用語辞典(より簡潔に)
- 12. 病気になった時の対策 シックデイ・ルール
- 13. 結婚から、妊娠・出産
- 14. 糖尿病による腎臓の病気
- 15. 糖尿病による失明・網膜症
- 15_1. 眼科医からみた失明しないためのアドバイス 『生活エンジョイ物語』より
- 16. 糖尿病と脳梗塞・心筋梗塞
- 17. 足の手入れ
- 18. 糖尿病による神経障害
- 18_1. 糖尿病からの危険信号神経障害 『生活エンジョイ物語』より
- 19. 糖尿病の検査
- 20. 低血糖
- 21. 食事療法のコツ(2) 外食
- 22. 糖尿病の人の性
- 23. 口の中の健康
- 24. 動脈硬化と糖尿病 メタボリック シンドローム(代謝症候群)
- 25. 糖尿病と感染症
- 26. 食事療法のコツ(3) 腎症のある人の食事
- 27. 糖尿病と高血圧
- 28. 小児の糖尿病(2) 日常生活Q&A
- 29. 運動療法のコツ(2) 合併症のある人の運動
- 30. 骨を丈夫に保つには
- 31. 痛風・高尿酸血症と糖尿病
- 32. 糖尿病予備群
- 33. 小児2型糖尿病
- 34. 糖尿病とストレス うつとの関連、QOLの障害