糖尿病セミナー

7. 肥満と糖尿病

2014年11月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
前 桐生大学学長
井上修二先生


I.肥満と糖尿病

肥満で糖尿病になる人が急増しています

 現代人は、過食や運動不足で肥満になりがちです。肥満になると、耐糖能(血糖を処理する能力)障害などの、軽い糖尿病状態になる人が増えますが、初期のうちに肥満を解消すれば、また正常に戻ることができます。
 しかし、そのまま肥満を放置し続けると、糖尿病になってしまう人が少なくないのです。このような、明らかに肥満が原因で発症する糖尿病を、「肥満糖尿病」といいます。

肥満がなぜ、いけないのでしょうか?

肥満糖尿病の患者さんがかかりやすい病気

網膜症 腎症 神経障害高血圧 狭心症 心筋梗塞 脳梗塞 下肢動脈閉塞高尿酸血症(痛風) 脂質異常症 脂肪肝 不妊症 関節障害など
 肥満は、おそらく私たちの体にとって、ひとつの異常事態だと考えられます。肥満の程度が高くなるほど、糖尿病や動脈硬化症など、さまざまな生活習慣病になりやすくなり、死亡率も高くなるからです。肥満になればなるほど、健康や長寿から遠ざかるということが、肥満の最大の特徴といえます。

肥満とはどんな状態をさすのですか?

 肥満は、単に体重が増えることではありません。摂取エネルギーが、消費エネルギーを上回った結果、予備のエネルギーとして蓄積された体脂肪が、必要以上に増えた状態なのです。つまり、肥満かどうかは、体内に占める脂肪の割合で決まるのです。
 しかし、体脂肪だけを正確に測定するのは大変なため、だれにでも簡単に計算できる体格指数(body mass index〈ボディー マス インデックス〉:BMI〈ビーエムアイ〉)を使って、肥満の程度を判定する方法が一般的になりました。BMIは、体脂肪量とよく相関する肥満指数で、国際的に使われています。

BMI25kg/m2だと「肥満」です

 BMIは、[体重 (kg) ÷身長 (m) ÷身長 (m)]で計算されます。この計算結果が22に相当する体重が標準体重です。なぜかというと、その体重が最も病気になりにくい、統計的に理想的な体重だからです。身長から標準体重を出すには、この式の答えが22になように逆算すること[身長 (m) ×身長 (m) ×22]で求められます。

肥満の判定基準

 BMIによる肥満の判定基準は、右の表のようになっています。25以上が肥満とされるのは、25を超えると、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症)など、多くの生活習慣病が起きやすくなるからです。最近の研究ではBMIが27で、糖尿病になる危険は2倍になることがわかりました。
 糖尿病の予防や血糖コントロールの改善には、BMI20〜24に相当する体重、つまり、身長×身長×20 と身長×身長×24の間の体重を目標とするのがよいと思われます。
例:身長160cmで体重70kgの人のBMIは?
 70÷1.6÷1.6=27.34。BMIは27.3(小数点以下2桁四捨五入)です。25以上ですから、この人は肥満になっているということです。
この人の標準体重は?
 1.6×1.6×22=56.32。身長160cm の人の標準体重(理想とされる体重)は、約56kgです。

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