糖尿病セミナー

1. 糖尿病とは「基礎編」

2017年10月 改訂

糖尿病はコントロールする病気です

 糖尿病による高血糖状態は、医師の指導を受け、きちんとした治療を守れば、確実によくすることができます。しかし、インスリンの作用が不足している状態は、加齢や長年の生活習慣の結果として起きたものですから、多くの場合なかなか元に戻すことはできません。つまり、治療によって一時的に血糖値が下がっても、治療を続け生活を正していなければ、血糖値はすぐまた高くなってしまいます。
 血糖値を下げてできるだけ健康な人と同じくらいに保とうとすることを、「血糖をコントロールする」といいます。糖尿病の人も血糖コントロールを続けていけば、高血糖によって起こるさまざまな病気(合併症)を防ぐことができます。寿命も健康な人と変わりません。
 しかし血糖コントロールを守らないと、合併症は知らず知らずのうちに進行します。そして合併症は一度発症してしまうと一般に治療は難しく、進行を抑えることが治療の主な目的となってしまいます。気付いたときにはもう取り返しのつかない状態になっていた、という患者さんは少なくありません。
 一生油断は許されないという意味で、糖尿病は「治る」とか「治らない」といった表現をあまり用いずに、「しっかり治療をしていれば、一生治ったと同じ状態を保てる病気」と表現することが多いようです。

糖尿病の症状はあまりあてになりません

 糖尿病の症状は気付きにくく、多少血糖値が高いくらいでは全く症状のない人がほとんどです。しかし、その程度の高血糖でも合併症は着実に発症・進行していきます。「症状がないから大丈夫」なのではなく、症状があれば血糖値はかなり高くなっているということです。
 高血糖がひどくなると初めて、のどが渇く、お小水が多い、トイレが近くなる、体がかゆい、できものができやすい、傷が治りにくい、足がつる、だるい、疲れやすい、物覚えが悪い、集中しない、眠い、お腹がすく、食べてもやせる、といった症状が現れてきます。さらに、血糖値がきわめて高い状態では、昏睡に陥ることがあります。

放置すると血管や神経が冒されます

 自覚症状がないからと糖尿病を放置していると、高血糖は全身のさなざまな臓器を障害します。とくに冒されやすいのは、神経と血管を中心とした臓器で、神経障害、眼球の網膜に出血する網膜症、腎臓の機能が低下する腎症の三つが起こりやすく、これを三大合併症と呼んでいます。

神経障害

 全身の神経の働きが鈍り、さまざまな症状が現れます。主な症状は、足先や手先がしびれる、麻痺した感じがする、痛い、足が冷たい・ほてる、力がぬける、勃起障害(ED)、生理が乱れてくる、閉経が早い、便秘・下痢になりやすい、たちくらみがする、額や顔に汗をかきやすい、などです。

網膜症

 糖尿病による網膜症は成人後の失明の主要原因の一つです。症状は、視力が落ちる、物がゆがんで見える、目の前にひもや点が見える、視野が欠けるなどですが、高度の視覚障害に至る直前まで症状がないことも少なくありません。

腎症

 腎臓の働きが低下してくると、だるい、疲れる、足がむくむ、貧血になる、吐き気がする、息苦しいなどの症状が現れますが、これらの症状が現れたときには腎機能はかなり低下していて、人工透析を受けないと生命を維持できない状態も近いといえます。年間1万人以上が、糖尿病による腎症が原因で人工透析を始めており、人工透析が必要になる原因の第一位を占めています。

その他

 足の壊疽〈えそ〉も合併症の一つで、足を切断しなければならないこともあります。また、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞の危険性も高くなりますし、感染症にかかりやすい、虫歯・歯周病や足の水虫になりやすいなど、糖尿病は全身の至るところに影響を及ぼします。
ここまでの話を整理しましょう
なぜ糖尿病を治療するのか?・・・糖尿病であっても、健康な人と同じ寿命を全うし、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)を維持するためです。
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それにはどうすれば良いか?・・・合併症が起きないようにする、たとえ起きたとしても、その進行を防ぐことです。
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合併症を防ぐ方法は?・・・糖尿病をしっかりコントロールしていけば良いのです。

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