災害に備えて
2011年08月17日
糖尿病患者さんが準備しておきたい「非常用持ち出し品」
東日本大震災では、糖尿病治療薬特にSU薬などの経口血糖降下薬、およびインスリン治療中の患者さんは薬がない、食事を食べられないという非常事態に直面しました。これらの教訓をふまえて、「非常用持ち出し品」として準備しておきたいものをリストにしてみました。
しかし西日の当たる部屋は夏場暑くなるので禁物です。湿気を呼ぶので密閉した容器やビニール袋の中に入れるようにしましょう。また薬は1年以上などの古いものがずっと予備として残らないように順番に廻して服用するようにしましょう。
しかしいつでも手帳を持ち出せるとは限りません。救援で駆けつけた医師・医療スタッフに「白い小さい薬」では分かりません。主な自分の薬の名前を覚えていますか?自分の「血糖と血圧に関係する薬とワーファリンなどの特別な薬」は言えるように、早速頭に入れてみて下さい。覚えられないという先入観は禁物です!
しかし、室温が30℃を軽く超えた平成22年の夏や毎月きちんと交換使用出来る方がどれだけいるかと考えると心許なくなります。また注射器を他人と共有することは絶対にいけません。考えてみると避難用品持ち出しは本震がおさまってからなので、「インスリン・血糖測定器・薬!」と書いたものを避難リュックに張っておき、使用中のインスリンセット、血糖測定器と冷蔵庫の予備を持って避難するのが現実的と当院では指導しています。
東北では1型の方はさすがに多くの方がインスリンを持ち出せたと回答していますが、2型糖尿病患者さんでもインスリン分泌の能力が失われている方は命に直結する問題として予め準備が必要です。また必ずインスリンの種類と単位を暗記しておいて下さい。
ペットボトルの水には使用期限が書いてありますが、使用期限を過ぎてしまった水は加熱使用したり、怪我した傷口を洗ったりいくらでも使用方法がありますから安易に捨てないで下さい。また配給がやっと始まったときに容器が無くて困らないように用意が必要です。
なお、風呂の水はすぐに捨てずに貯めておき、初期消火用のバケツを用意しておきましょう。防災の日は、地域でバケツリレーの訓練等に参加しましょう。周囲の住民の方々と顔を合わせておくことは、いざというときに極めて重要です。
【糖尿病患者さんの災害事前対策】
それでは囲みのリストに沿って説明致しましょう。
- 常用薬は常に最低でも2週間予備を持つ
- お薬手帳、糖尿病連携手帳、保険証またはそれらのコピー
- 「インスリン・血糖測定器・薬!」と書いたものを避難リュックに張る
- マスク、消毒綿、ウェットティシュー
- 水2リットル/日を1週間分以上。配給水用のポリ容器、初期消火用バケツ
- 非常食1週間分以上
- ペンライト、携帯電話(非常用電池パックも)
- 屋内・屋外避難時のスリッパ・靴、靴下、下着など
- ホイッスル、筆記具、ヒモ、安全はさみ、マッチなど
1. 常用薬は常に最低でも2週間予備を持つ
薬は震災後2週間経たなければ入手できないと思いましょう。東北では首都圏がやられていませんでしたので、救援は早いほうだったと思いますが、首都圏自体が巨大地震に遭遇したときは、当分の間薬の供給はありません。幸い飲み薬は長時間室温保存が可能です。しかし西日の当たる部屋は夏場暑くなるので禁物です。湿気を呼ぶので密閉した容器やビニール袋の中に入れるようにしましょう。また薬は1年以上などの古いものがずっと予備として残らないように順番に廻して服用するようにしましょう。
2. お薬手帳、糖尿病連携手帳、保険証またはそれらのコピー
お薬手帳、糖尿病連携手帳、保険証またはコピー。これらの手帳が東北大震災では大きな威力を発揮しました。手帳を持ち出せた方への指導・処方は容易だったのです。しかしいつでも手帳を持ち出せるとは限りません。救援で駆けつけた医師・医療スタッフに「白い小さい薬」では分かりません。主な自分の薬の名前を覚えていますか?自分の「血糖と血圧に関係する薬とワーファリンなどの特別な薬」は言えるように、早速頭に入れてみて下さい。覚えられないという先入観は禁物です!
3. 「インスリン・血糖測定器・薬!」と書いたものを避難リュックに張る
「インスリンの未使用品は冷蔵庫で保存」とされているのですが避難リュックは室温ですから、災害対策は少々やっかいです。ノボラピッド注フレックスペン、ヒューマログ注ミリオペン等は共に未開封30℃で約1カ月安定であることが確認されています。従って避難リュックに1本入れておき、毎月きちんと替えて使用出来ればそれも一法です。しかし、室温が30℃を軽く超えた平成22年の夏や毎月きちんと交換使用出来る方がどれだけいるかと考えると心許なくなります。また注射器を他人と共有することは絶対にいけません。考えてみると避難用品持ち出しは本震がおさまってからなので、「インスリン・血糖測定器・薬!」と書いたものを避難リュックに張っておき、使用中のインスリンセット、血糖測定器と冷蔵庫の予備を持って避難するのが現実的と当院では指導しています。
東北では1型の方はさすがに多くの方がインスリンを持ち出せたと回答していますが、2型糖尿病患者さんでもインスリン分泌の能力が失われている方は命に直結する問題として予め準備が必要です。また必ずインスリンの種類と単位を暗記しておいて下さい。
4. マスク、消毒綿、ウェットティシュー
マスクは必須です。津波で運ばれたヘドロや粉塵を吸入していると、糖尿病患者さんは肺炎を起こしやすくなります。また避難所での感冒などの感染予防のためにも必須です。なおインスリン注射は、皮膚が泥などで汚れていなければ、消毒用アルコール綿が無くとも注射可能です。また針が足りなければ複数回使用も可能です。
5. 水2リットル/日を1週間分以上。配給水用のポリ容器
食料が無くとも1週間以上ヒトは生きられますが、水がなければ生きられません。非常用水は大変重要です。都市部の大災害ではその内給水に来るだろうという考えは危険です。東北大震災のあった夜を考えれば分かるように道は車と帰宅困難者(下手に家を目指すのは非常に危険!)。そこに多数同時に起こる火災で幹線道路は至る所で寸断されるからです。糖尿病の方は血糖上昇と脱水で血液がドロドロになりやすいため、水は特に必要です。ペットボトルの水には使用期限が書いてありますが、使用期限を過ぎてしまった水は加熱使用したり、怪我した傷口を洗ったりいくらでも使用方法がありますから安易に捨てないで下さい。また配給がやっと始まったときに容器が無くて困らないように用意が必要です。
なお、風呂の水はすぐに捨てずに貯めておき、初期消火用のバケツを用意しておきましょう。防災の日は、地域でバケツリレーの訓練等に参加しましょう。周囲の住民の方々と顔を合わせておくことは、いざというときに極めて重要です。
6. 非常食1週間分以上
非常食を一人1週間分以上。すぐにカップ麺を連想しますが、熱湯が得られないことも想定しての非常食の準備が必要です。なお、NHKの『ためしてガッテン』(平成23年7月27日放映分)で紹介された「フライパンと透明耐熱ぶた」を用いて少量の水で蒸し調理する方法は、水とコンロ等の燃料節約に極めて有効で、震災後の調理に極めて有効と思われます。あり合わせの野菜、卵などが短時間で調理でkます。貴重な熱源を用いて糖尿病患者さんの食事の偏りを少しでも是正するために用意したいものです。
7. ペンライト、携帯電話(非常用電池パックも)
ペンライトは常に重要です。普段のカバンの中にも入れておきましょう。また携帯電話も重要です。非常時につなぐ携帯電池パックも用意しておきましょう。インスリンの単位合わせは携帯付属のライトで可能です。災害伝言ダイアルも予め使用方法をチェックしておくことです。なお、震災の火災原因では、調理・暖房からの引火のみでなく、損害を受けた家屋からの漏電がとても多いと言われます。避難時は「ブレーカーを落とす」、「ガスの元栓を閉める」、「水道の元栓を閉める」ことも、極めて重要です。
8. 屋内・屋外避難時のスリッパ・靴、靴下、下着など
室内にガラス、陶器の破片が散乱、外にも種々の障害物。足に怪我をしたら逃げられません。靴がないと移動が出来ません。また靴下や下着の替えを予め入れておきましょう。
9. ホイッスル、筆記具、ヒモ、安全はさみ、マッチなど
もし半壊した家に閉じこめられたらホイッスルが威力。その他小物は各人が考えてみて下さい。
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