災害に備えて
2011年08月17日
2011年/災害時の備えに関するアンケート調査結果(医療スタッフ)
甚大な被害をもたらした「東日本大震災」。被災者の健康悪化が懸念されますが、糖尿病患者さんについても、血糖コントロールの悪化や震災に伴う疾患、ストレスなど、心配は尽きません。今回の震災を受けて、糖尿病患者さんへの災害時の備えに対する指導状況、また医療スタッフ側の備え等について伺いました。
【調査概要】
【調査概要】
- アンケート対象者:糖尿病ネットワークのメールマガジン登録者(医療スタッフ)
- アンケート回答方法:インターネット
- アンケート実施期間:平成23年5月16日〜5月23日(8日間 )
- 有効回答数:医療スタッフ53名
- 性別:男性 18名/女性 35名
- 職種:医師 8名/看護師19名/准看護師1名/管理栄養士13名/臨床検査技師2名/薬剤師5名/その他3名/そのうち健康運動指導士1名日本糖尿病療養指導士18名
- 勤務先:国立病院2名/大学病院 6名/200床以上の病院 17名/200床以下の病院 5名/診療所・クリニック(糖尿病を専門とする) 7名/診療所・クリニック(とくに糖尿病を専門としていない) 10名/薬局・薬店 4名/その他2名
- 調査結果のまとめ:ネットワークアンケート No. 29
Q. 貴院では、糖尿病患者さんへ、災害時に備えて指導を行っていますか? (n=53)
- 以前から指導を行っているが、今回改めて行った 34%
- 指導を行ったことはない 26%
- 以前、行ったことはあるが、今回の震災後、とくに改めては行っていない 17%
- 今回の震災を機に指導を行った 15%
- わからない 4%
- その他 4%
Q. お勤めの医療機関で、下記の内容について指導や説明を行っていますか?該当するものすべてにチェックしてください。(複数回答可 n=53)
- 糖尿病連携手帳(糖尿病手帳)やお薬手帳の携帯や管理について 70%
- 処方されている薬剤名を覚えておくことについて 66%
- 緊急時に備えたインスリン製剤の備蓄、保管方法について 47%
- 緊急時に備えた経口薬の備蓄について 42%
- 緊急時に備えた血糖自己測定機の管理、注射針などの消耗品の備蓄について 30%
- 避難所等での低血糖対策について 28%
- 糖尿病療養生活に必要な「非常用持ち出し品」の準備について 26%
- 病院や主治医などとの連絡方法について 25%
- 避難所等での高血糖対策について 17%
- 避難所等での食事療法について 17%
- 避難所等での運動療法について 17%
- その他 4%
- とくに行っていない 9%
Q. 災害時の備えについて、どのような糖尿病患者さんへ指導を行う必要があると思いますか?(複数回答可 n=53)
- 糖尿病患者さん全員 72%
- インスリン療法を行っている患者さん 51%
- 患者さんのご家族 47%
- 1型糖尿病患者さん 38%
- 高齢の患者さん 26%
- 妊婦さん 25%
- 小児の患者さん 23%
- 2型糖尿病患者さん 21%
- 質問や相談があった患者さん 19%
- その他 0%
Q5. 緊急対応用に、薬剤の予備は何日分準備するよう指導されていますか?(通院の直前であっても、手元には何日分くらいの薬が残るよう指導していますか?) n=53
- 1週間分程度 45%
- 2〜3日分程度 19%
- わからない 15%
- 1〜2週間分程度 13%
- 2〜4週間分程度 8%
- 4週間分以上 0%
- とくに予備を持つ必要はないと思う 0%
Q. 被災地で、糖尿病患者さんが最も心配なことはどのようなことですか?上位5つを選択してください。(複数回答可 n=53 )
- 処方されている薬剤を服薬できない 85%
- 高血糖・低血糖の対処 75%
- 処方されている薬剤名を覚えていない 64%
- 食生活の乱れ 62%
- 感染症 60%
- ストレス 58%
- 自分が糖尿病であることを言い出せない 32%
- 血糖測定ができない 21%
- 運動不足 21%
- その他 4%
Q. 今回、もしくは過去に被災地で活動された方へおうかがいします。現地で糖尿病患者さんを診てお感じになられたことや、患者さんへ日頃から指導・注意すべき点、今後の教訓となるようなことがありましたら、ご記入ください。(自由記述)
- 患者がいて、看護師がいて、食事担当がいても、患者の様子を的確に伝えてくれる人がいないので、対処が断片的になっている。
- パニックに陥らないよう、日頃の訓練が大切。
- 避難所で過食となり、また運動不足も加わって体重が数キロ増えた患者もいた。
- 薬の名前を知らない人が多かった。また、今回は救援が来るまでに1か月を要した方もいて、予備の薬は1か月くらいは持っていた方が良いのかとも感じた。今回、寒い地域での災害だったため、冷蔵庫が使用できなくてもインスリンは常温で保存していたのだが、これが気候の暖かい地域や夏であったらインスリン自体が持たないのではないかと感じた。地震から津波が来るまでの間に、何を持ち出すことができるのかを考えた時、今までの指導が甘いものだったのではないかと思い、これからどのように指導しようかが私にとっての課題となった。ただ、日頃から、持出し用の荷物についてなど、糖尿病患者さんと一緒に話すことは必要であるし、災害時のシミュレーションとして有効なのではないかと感じた。
- 普段からの食生活を大事にしているものの、避難所生活では、「食べられるものがあれば」という考えにならざるを得ない。その中で、エネルギー的には充たされるものの、ビタミンやミネラル、食物繊維は欠如するので、その中でも、運動だけは行って欲しい。
- 避難所から高血糖症状で緊急入院した患者の食事指導を行いました。避難所では菓子パンとカップ麺の一日2食で野菜ジュースなど他の食料は入手できないようです。避難所リーダーの糖尿病に対する理解力も物資調達に大きく左右されているようです。糖尿病や腎臓病など食事療法が不可欠な方の避難場所をまとめられれば、物資調達も容易になり患者同士での連帯感も生まれるのではと感じました。
- インスリン注射のストックや非常時の食事確保、常に自分の治療を理解しておく必要があると思います。糖尿病の手帳を有効に活用する必要がある。
- カロリーが高い物を多く摂ってしまう、外に出ない、薬がなくなっても取りに来ないなどで、血糖コントロールが悪くなる。
- とにかく命が大事なので、薬剤を取りに引き返すことがないようにして欲しい。まずは逃げて欲しい。今、自分が使用している薬剤の名前や量くらいは覚えていて欲しい。
- 食事が食後血糖上昇しやすいもの、塩分摂取が多くなるものが中心です。一度に摂取せず、分食を勧めます。
[ DM-NET ]
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