災害に備えて

2011年04月07日

【東日本大震災4】 被災地での救援活動と復旧支援

 被災した医療機関、避難所、保健所の多くで水、食料、燃料、医薬品が不足しています。しかし、被災地での救援や復旧支援にあたる方々の士気はいまだ高く、また、高速道路の多くは健在で、水道、電力、衛生などのライフラインの回復も急ピッチで進められています。
日本赤十字社 義援金は過去最高ペース
 震災被災者への支援のため、さまざまな団体や企業が義援金を受け付け、支援の輪が広がっています。今回の東日本大震災は被害の規模や範囲が大きく、「人ごとではない」「なんとか助けになりたい」と思っている方が多いようです。

 日本赤十字社に寄せられた義援金は、3月20日までの1週間で約223億円以上に上り、過去最高ペースで集まっていることがわかりました。これは2週間で約164億円が集まった阪神大震災を大幅に上回るペースです。

 政府は震災の支援を重くみており、義援金に対する税優遇を発表しました。最終的に国や地方公共団体が受けとり、そのことを税務署が確認すれば、個人の方が寄附する義援金は寄付金控除の対象になります。法人が寄附する場合は、支出額の全額が損金の額に算入されます。

 日本赤十字社の口座へ直接寄附した義援金、報道機関に対して寄附された義援金、赤い羽根募金などを行う中央共同募金会を経由した義援金なども、税優遇の対象になっています。

 義援金の募集は、郵便振替や銀行振込、インターネットの電子決済などで行われています。ショップサイトなどでたまるポイントを寄付に使える「ポイント募金」や、インターネットのサイト上のボタンを押せば寄付できる「クリック募金」など、寄付のかたちも多様になってきました。

学会が災害対策プロジェクトを立ち上げ
 東日本巨大地震から10日以上がたちましたが、被災地の医療機関や避難所の医薬品不足は深刻です。

 患者が医薬品を処方してもらうために、通常は被保険者証や処方せんが必要ですが、避難所などでこれらを喪失している方が多くいます。そのため厚生労働省は12日付で、被保険者証などがない場合も医薬品を受けとれるよう通知を発出しました。

 日本糖尿病学会は3月13日付で対策本部を設置。インスリン治療を行っている糖尿病患者にインスリン製剤や必要な医療資材を供給できるよう要請し、災地で診療に当たっている糖尿病専門医の協力を得て、相談連絡先となる電話番号の公開を始めました。

 また、日本循環器学会は18日、災害対策プロジェクトを立ち上げたと発表しました。同プロジェクトで、循環器疾患の治療を受けている患者への「薬剤の継続的な供給」が重要だとし、循環器専門医師などのサポートにより早急な支援を開始するとしています。

 さらに被災地で病状が深刻化しやすい「たこつぼ心筋症」や「肺血栓塞栓症」の発症予防の啓発と診断、治療も重要で、対策を立てる必要があるとしています。患者の支援体制、搬送体制の整備についても言及しています。これらの疾患は、2006年の中越地震の際に多くの患者が発生したことが報告されています。

 たこつぼ心筋症は、災害後などに過度のストレスを受けた人がかかりやすい心臓病のひとつ。自律神経がストレスを受け心臓の筋肉が収縮しにくくなり、正常に血液を送り出すことができなくなる状態をさします。また、肺血栓塞栓症はエコノミークラス症候群ともいい、長時間、足を動かさずおなじ姿勢でいると、足の深部にある静脈に「血栓」という血の固まりができ、これが肺の血管を詰まらせる病気です。

 同学会ではこれらの疾患を診断・治療できる医療チームの派遣を検討するほか、疾患の発症予防に向け専用サイトを公開する予定です。

支えあうメンタルヘルス
 多くの犠牲をともなった今回の東日本大震災は過去最悪の災害といわれています。家族を失った遺族や、住居などを失った被災者への精神的な支援の必要性も高まっています。

 災害時にまず急がれるのは、飲料と食料、医薬品の確保と配布、燃料と衣服、安全な住居の準備の搬送、さらにはライフラインの復旧と続きますが、生活に欠かせない物資の援助と同時に、被災者らへの効果的なこころのケア(メンタルヘルス)も急務となっています。

 被災後に数週間に、地震発生時の恐怖が起こり、強い感情が出てきてしまうことは、誰にでも起こる反応ですが、1995年の阪神大震災では、1年後も睡眠障害などの心の不調を訴えた被災者が1割に上ったと報告されました。地震発生時の恐怖が繰り返しよみがえるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ人も少なくありません。

 災害の影響は、直後の混乱期を過ぎてからも長く続きます。今回の震災でも、日赤チームなどが活動を始めています。震災時のガイドラインの多くで、災害発生の早期(急性期)から温かく見守り、支え合うことが大切としています。

 被害を受けて間もない時期には、生活や復旧に関する現実の心配が数多くあります。そうした問題の相談にのりながら、親身になって支援したり、励ましあえる信頼関係、支え合うネットワークをつくることが必要です。

関連情報
自然災害発生時における医療支援活動マニュアル(厚生労働省)
平成16年度 厚生労働科学研究費補助金 特別研究事業「新潟県中越地震を踏まえた保健医療における対応・体制に関する調査研究」
【災害医療情報】 災害医療活動のご一助に(日本内科学会)

[ Terahata ]

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