糖尿病Q&A1000

Q.980 神経障害のしびれ、足の痛みをブロックする方法はないのですか? 6年経過し、最初の3年間は自殺をしたいぐらいでした。

 神経障害による手足のしびれ・痛みに関する質問が四つありましたので、まとめてみました。
 まず最初に、糖尿病による合併症はすべて「糖尿病性○○○」と呼ばれることからわかるように、「糖尿病によって起こる○○○という病気」という意味だということを理解してください。つまり、糖尿病でなくても○○○という病気は起こるし、糖尿病の人が高血糖以外の原因で○○○という病気になることもあるということです。その原因がはっきりわかることもありますし、よくわからないこともあります。神経障害については原因として可能性が考えられる病気が数多くあるため、他の合併症に比べてもより診断(確実に糖尿病が原因なのかそうでないのか)が難しい点があります。
 さて、最初の方のご質問ですが、「神経症状が出てきたら悪化したということか」については、糖尿病が悪化したというよりも、今までの治療が不十分だったと思われる、ということです。
 治療法は、血糖コントロールを中心とした原因療法と、症状をとる対症療法です。対症療法としては、痛み止めのほかに一部の抗不整脈薬や漢方薬が使われる場合もあります。また、抗けいれん薬や抗うつ薬が効果があるときもあります。二番目の方のご質問に「自殺したいくらい」だったとありますように、神経障害のしびれや痛みはときに精神的な苦痛にもつながります。時間がかかることはあっても少しずつ、必ず良くなりますから、希望をもって治療を続けてください。
「糖尿病性神経障害は手と足、同時にこない」という点については、確かに足が先のほうが圧倒的に多いものの、手足同時のケースが絶対にないとは言えません。
 三番目の方は境界型糖尿病とのことですが、境界型でも糖尿病に近いあたりで行ったり来りしている状態が長年続けば、合併症が出てくることもあるでしょう(その場合、学問的に病名を糖尿病性神経障害としてよいかどうかという問題はありますが)。また、最初に述べたように、足のしびれは糖尿病以外の病気でも起こります。例えば血行がよくないとか、脊柱管狭窄症などです。それら、それぞれの小さな原因が重なり合って、神経障害の症状が現れている可能性もあります。
 診断基準については、神経障害は血液検査のように数値で異常値の基準を設けることができず、臨床的な症状などから総合的に診断します。このあたりの事情は世界共通で、海外でも糖尿病性神経障害の診断基準がこれまでいろいろ提唱されてきました。
 四番目の方のご質問に対する答えは、既にお話ししたことと重複になりますが、まとめると、血糖値をしっかりコントロールしていれば糖尿病性神経障害として神経障害が現れる可能性は低いものの、絶対とは言い切れません。しかし、血糖値を正常域近くにコントロールしているほど起きにくいことは間違いありません。
 罹病期間との関係は、罹病期間が長いほど起きる確率は高くなります。しかし2型糖尿病の場合、糖尿病と診断される前に、見過ごされている期間があったり、予備軍でいる時間の長さや程度もかなり違うので、「何年たったら神経障害が現れる」とは一概に言えません。合併症の中で神経障害が一番最初に現れるとも限りません。
2006年05月24日

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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