目と健康シリーズ Eye & Health
2015年06月01日
No.13. 色覚の異常
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八重洲大島眼科院長
岡 島 修 先生
も く じ |
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色覚に異常があるってことは、色がわからないってことかなぁー。
きれいな景色もカラーテレビも、白黒にしか見えなかったら寂しいな。
治す方法はないのかな?
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●色は人によって違って見えるもの
色覚の異常とは、どんな状態?
"物を見る"という機能は、視力、視野、色覚の三つに支えられています。視力は細かい物を見分ける力、視野は同時に見渡せる範囲、色覚は色を識別する感覚のことです。この三つの機能は、網膜(カメラのフィルムまたは撮像素子に該当する組織)にある光を感じとる「視細胞〈しさいぼう〉」の働きに委ねられていて、視細胞がうまく機能しないと、視力が低下したり、視野が狭くなるなどの異常が生じます。色覚についても、視細胞の機能次第で色を識別しにくくなる状態があり、それを色覚の異常と呼んでいます。
先天色覚異常と後天色覚異常
色覚の異常には、先天性と後天性があります。先天性の場合は原因が遺伝的なものなので、現時点では有効な治療法がない一方、色覚異常の程度は変化せず、また色覚以外の視機能は問題ないことがほとんどです。後天性の場合は、なにかの病気(緑内障や網膜の病気など)の一つの症状として、色覚に異常が現れます。ですから色覚以外の視力や視野にも影響が出たり、病気の状態によって色の見え方が変わることがあります。
後天色覚異常では、もとにある病気自体が治療対象となり、色覚の異常だけがクローズアップされることはあまりありません。そこでこの小冊子〈パンフレット〉では、先天性の色覚異常を中心に話を進めることにします。
先天色覚異常と後天色覚異常 | |||||||||||||||
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男性の20人に1人。色覚異常はまれではない
先天性の色覚異常は、日本人男性の5パーセント、女性の0.2パーセントの頻度で起きていて、国内で300万人以上が該当し、まれなものではありません。ただしその程度は人によって異なります。検査で指摘されない限り気付かない人もいれば、社会生活に支障を感じる人もいますが、多くのケースでは、色覚の異常のため日常生活に困ることはありません。●色覚異常の分類〜見え方の違いについて
すべての色は、光の三原色といわれる赤、緑、青の三つの光の組み合わせで作られます。色を感じとる視細胞も、赤に敏感なタイプ、緑に敏感なタイプ、青に敏感なタイプの3種類があります。色覚の異常は、この3種類の視細胞のうちのどれかが足りなかったり、十分機能しないために起こります。●2色覚...3種類の視細胞のうち、どれか一つが欠けている場合を2色覚(いわゆる色盲)といいます。赤を感じる視細胞がない場合が1型2色覚、緑を感じる視細胞がない場合が2型2色覚です。
●異常3色覚...視細胞は3種類あっても、そのうちどれかの機能が低下している場合は異常3色覚(いわゆる色弱)といいます。赤を感じる視細胞の感度が低い場合が1型3色覚、緑を感じる視細胞の感度が低い場合が2型3色覚です。
このほか、青を感じる視細胞に異常がある3型色覚や、1種類の視細胞しかない1色覚(全色盲)などもありますが、頻度はごくまれです。
区別がつきにくいのはどんな色?
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では、どんな色が区別しづらいのでしょうか。頻度の多い2型色覚(2型2色覚と2型3色覚)の人が間違えやすい組み合わせは、赤と緑、オレンジと黄緑(きみどり)、緑と茶、青と紫、ピンクと
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もちろん色覚に異常がある人のすべてがこれらの色を間違える(誤認する)わけではなく、一つしか該当しない人もいれば、ほとんどすべてがあてはまる人もいます。また、同じ人がいつも同じように誤認するのではありません。色を誤認しやすくする要因が、いくつかあげられます。
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●色覚の検査
先天色覚異常の場合、色の見え方が変化することはないので、一般の病気の治療のように、定期的に検査を受ける必要はありません。しかし、色覚の異常を見つけ、それがどの程度でどういう誤認を起こしやすいかを知るためには、検査が必要です。![]() | |
●パネルD-15...15色のパネルを、基準となる色に近いと思うものから順に並べていく検査です。色覚異常の程度を把握するのに適していて、生活上の実際的な問題(色誤認を起こしやすいか否か)とよく相関した結果が得られます。
●アノマロスコープ...色覚異常を正確に診断するための重要な検査で、色光〈しきこう〉の色合わせによって判定します。しかし機器が高価で扱いも難しいため、あまり普及していません。
●色覚の異常との付き合い方
色覚に異常があることをどう考えるか
今の医学では、先天性の色覚異常を治すことはできません。しかし、色覚異常は色の見え方が少し違うだけで、それが悪化する心配はありません。また、頻度的にもごくありふれたものです。色覚は、その人の生き方を左右するたくさんの条件の中の一つにすぎず、色覚に異常があるからといって人生が決定づけられることはありません。色覚の異常を自分という人間を形づくる一要素として受け入れ、マイナス思考を排除することが、より充実した生活を送るコツと言えます。
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プラス思考を大切に | |
自分の色覚の"くせ"を知っておくことのメリット
間違えやすい色、区別がつきにくい色は、人それぞれ異なります。色覚に異常があることがわかったなら、なるべく早めに検査を受けて、自分の色覚の"くせ"を理解しておくようにしましょう。そのことで、色誤認しやすい状況・注意すべきポイントがよくわかりますし、就職後に問題に気付いて転職するなどの回り道も少なくできます。色覚の異常は一つの弱点には違いないので、早くそれに気付いたほうが、後から余計な無理をしなくて済むはずです。色誤認の具体的な例をあげてみましょう |
◇日常で...
緑の木々の中の紅葉がわからない/熟れたトマトとまだ緑のトマトを区別できない/1灯式の信号が赤の点滅か黄色の点滅かわかりづらい/充電完了ランプの色の変化がわからない/桜の花はピンクではなく白だと思っていた/カレンダーの祝日が見分けられない/靴下を左右色違いで履いてしまう/色で区別されているコードの接続に苦労する カードゲーム 色に意味をもたせてあり、色覚の異常があると遊びづらいゲームです。
◇学校で...
緑の黒板の赤い文字が読めない/強調のために赤で書かれた文字もほかの黒文字と同じに見える/仕切り線が入っていないと円グラフが読み取れない/描いた絵の色使いがおかしいと言われた
◇職場で...
コンピューター画面の色のみによる情報分類が難しい/注文と違う色の製品を納入してしまった/電鉄会社に就職後に色覚の異常がわかり配置転換になった/新鮮な食材と傷んだ物の区別がつかず、板前修行をあきらめた
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色だけで区別された路線図 |
色覚が正常な人には便利ですが、色覚に異常がある人は、読み取るのに苦労します。 |
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Q | 先天性の色覚異常は遺伝するそうですが、父親が色覚に異常があれば、必ず子どもも色覚の異常が起きるのですか? |
色覚の異常が結婚の妨げになったり、結婚後、生まれた子どもに色覚の異常があるとわかったときなど、遺伝のことで両者が不和になることもありますが、それは残念なことです。ご家庭や子どもの幸せは、当然ながら色覚のことだけに左右されるものではありません。ご夫婦で互いにそれを受け止め、より豊かな人生を送るように、前向きに考えたいものです。そもそも遺伝による病気や身体的ハンデキャップは、まだ遺伝子が明らかになっていないだけで、色覚の異常以外にもたくさんあるのですから。
なお、日本人女性の10人に1人が保因者であることがわかっています。ただし、検査をしても、その女性が保因者かどうかは、正確にはわかりません。
Q | 色覚異常にもよい治療法がある、という情報を耳にしましたが... |
また、色が見やすくなるメガネなども出回っていて、それらを用いると、確かに特定の色を見分けやすくなることがあります。しかし、特定の色以外は逆に見にくくなるため、実用性は限られています。
Q | 色覚に異常がある人は、進学や就職が不利だと聞きましたが、実情を教えてください。 |
実際に職業を選択する場合には、職業適性の一つとして色覚のことを考慮しておいたほうが、結果として効率がよいこともあります。自分の色覚異常は軽度だから大丈夫と思っていたのに、働き出してから意外な問題に気付き、色覚外来に相談に訪れるというケースが確かにあります。制度上の制限、実際的な問題、自分の色覚異常の程度・傾向について、ふだんからできるだけ情報を多く集めておくことが、就職の際の強い味方になると言えます。
就職後は、自分の色覚の異常を打ち明けられる人間関係を築くことが理想です。「微妙な色については教えてください」。これが受け入れられれば、色覚に異常がある人の悩みは解決します。これからの社会が、個人のハンデキャップに、より寛容になることが望まれます。
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企画・制作:(株)創新社 後援:(株)三和化学研究所
2016年2月改訂
もくじ
特集
- No.1. 目で見る眼の仕組みと病気
- No.2. 糖尿病網膜症
- No.3. 糖尿病黄斑症
- No.4. 高血圧網膜症
- No.5. 網膜静脈閉塞症
- No.6. 網膜動脈閉塞症
- No,7. 加齢黄斑変性
- No.8. 中心性漿液性脈絡網膜症
- No.9. 網膜色素変性症
- No.10. 緑内障
- No.11. 白内障
- No.12. 網膜裂孔・網膜剥離
- No.13. 色覚の異常
- No.14. ドライアイ
- No,15. 屈折異常・調節異常─近視・遠視・乱視・老眼─
- No.16. 子どもの目の病気
- No.17. 結膜炎
- No.18. 角膜の病気
- No.19. ぶどう膜炎
- No.20. 黄斑円孔・黄斑前膜
- No.21. 眼の神経の病気
- No.22. 涙道や涙腺やまぶたの病気
- No.23. 目の外傷
- No.24. 目の病気の手術治療
- No.25. 目の病気の薬物治療
- No.26. バセドウ病と目の病気
- No.27. まぶたの病気とQOL
- No.28. 眼精疲労
- No.29. アレルギーによる目の病気
- No.30. コンタクトレンズ
- No.31. 飛蚊症
- No.32. ロービジョンケア
- 別冊:視神経乳頭の"異常"と"正常"
リラックス アイ
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