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糖尿病患者さんの間食指導をどうする? トップページへ メールマガジン無料登録
IV. 指導症例(管理栄養士編)
間食を減らす工夫を患者さんと話し合って改善

報告者:吉田美香(管理栄養士、CDE)

【症例】
66歳 女性 主婦

【糖尿病歴】
65歳 健康診断で高血糖を指摘され近医を受診し、2型糖尿病と診断される。
(30〜40代の頃血糖値が高いと言われたことがある気がする)
家族歴:父親 糖尿病(服薬のみ)

【身体所見・嗜好など】
肥満なし (154cm 50kg BMI 21)
血圧:138/80mmHg
飲酒:機会飲酒
タバコ:10年前より禁煙

【治療方法】
アマリール1mg / 日

【これまでの経緯】
 近医を受診し、糖尿病と診断されてから自己流で食事療法とウォーキングを行う。2ヵ月後近くに糖尿病専門医があることを知り当院を受診。(アマリールの服薬開始)。

 食事はとにかく減らさなくてはいけないと思い、楽しみの外食もやめて食事はかなり制限した。血糖値は改善したものの、食事が楽しくなくなってしまったとの訴えがあり、この時点で一度栄養相談を行い、食事や外食についての説明を行う。(間食についての話はしなかった)その後経過が落ち着いていたこともあり、約1年間通院は継続していたが、栄養相談は行っていなかった。

4月 (HbA1c:5.8%)
5月 (HbA1c:6.9%)

約1年血糖コントロールは落ち着いていたが、急に悪化したため、栄養相談を行う。

【その後の指導過程】

栄養士:この1ヵ月くらいの食生活等の変化を確認
患者さん:この1ヵ月で1kgくらい増えた。以前は間食しなかったが最近は週2回ほど昼食を控えて(おにぎりのみ)友人宅へ行き、ケーキやおしるこなどを食べる。でもその分運動を増やしてウォーキングを40分くらいしている。
栄養士:間食に食べていたもののエネルギー量を確認。
    ・お汁粉(約230kcal)
    ・ショートケーキ(約250kcal)
 ウォーキングを行うというのは良い方法だが、体重が増加していることと、HbA1cの値が悪化していることから、運動で消費している量よりも間食で摂取している量の方が多いことを説明。
患者さん:「昼食も軽くしているし、運動もしているし、何がいけなかったのかしら?と思っていましたが、こんなにカロリーがあるものを食べていたのですね。」
栄養士:「昼食もおにぎりだけのように炭水化物だけの食事は食後の血糖値が上昇しやすく、空腹になるのも早いので、かえって間食の量が増えてしまう傾向にあります。  お汁粉などを間食にする場合には白玉やお餅が入っていますから、昼食の主食をいつもより軽くし、おかず、野菜はほどほどに摂取するほうが、バランスも崩れにくく間食も食べ過ぎなくてすむかと思います。改善のためには、何か変更する必要がありますが、変更できそうな点はありますか?」
患者さん:「お汁粉やケーキはどうしても食べたいというわけではないの。あると食べてしまうっていうだけで。 ただ、友達の家に行くのに、何も食べないでお茶だけというのは寂しい気がします。」
栄養士:写真やエネルギー量が掲載されている本を見ながら、お饅頭(120kcal)、焼き菓子(約110kcal)などを紹介。まずは今食べているものよりもカロリーの少ないものに変更して、様子をみることに。それでも改善が無い場合は低カロリーで血糖値が上がりにくい工夫がされている、和菓子やアイスクリームもあることを紹介し、資料を渡す。
6月 (HbA1c:6.0%)
患者さん:友人宅へ行く時は小さいお菓子を持っていったり、ご馳走になったりして楽しんでおり、間食についてのストレスは特に無くこのまま継続できそう。
栄養士:その他何か食生活での変化はあるか確認。
患者さん:友人にりんご酢(蜂蜜入り)が良いと聞き、朝食前に飲むようになった。骨密度が低いと健診で言われたので、乳製品をたくさん食べるようにした(自宅での間食にヨーグルト、カフェオレ(砂糖なし)、チーズが増えた)
栄養士:蜂蜜入りの飲み物のエネルギーと材料を一緒に確認し、血糖値が上がりやすいことを説明。乳製品のエネルギーを確認。乳製品はカルシウムの補給源としては最適だが、摂り過ぎると、体重増加や血糖値上昇につながることも説明。低脂肪の乳製品や乳製品以外のカルシウム含有食品を紹介。
患者さん:「酢は何でもからだにいいかと思って飲んでいたけど、言われてみれば、蜂蜜はダメよねー。これはもう止めるわ。チーズもそんなにエネルギーがあるとは思っていなかったわ。小さいからちょっと食べるのに丁度いいのよね。」
栄養士:乳製品は間食としては悪くないが、食べ過ぎは良くないことを確認。今後も体重の変化とHbA1cの数値をみながら、適量を把握していくこととした。
  9月(HbA1c:5.9%) アマリールの服薬中止
 11月(HbA1c:5.8%)
 週2回は甘いものの間食をしているが、服薬中止後も血糖コントロールが安定しているため、その後の栄養相談は行っていない。
【まとめ】  以前自己流の食事療法でがんばりすぎてしまった経緯がありましたので、間食については量を減らしながら様子をみるという方法をとりました。この患者さんは自分が食べている量が運動で消費できる量だと思っていたため、医師の診察時には間食はしていないと話していたとのこと。間食についての情報がまだまだ不足していることを痛感した症例でもありました。栄養相談の時間や回数は限られていますので、間食の詳しい話がなかなかできないというのが現状かとは思いますが、もっともっと患者さんが気軽に間食の話しを医療従事者とできる環境を作っていくことが、患者さんの間食状況を改善する一番の方法なのではないかと感じています。

Dr.浜野のひとこと
 一般に男性よりも女性の方のほうが食品のエネルギーに関する知識ないし大雑把にせよ“判断力”はあると思いますが、女性においてでさえ間食に関する知識不足が思った以上にありますので正しい情報提供が必要でしょう。厳しすぎる食事療法で燃えつきてしまうよりも、低カロリーおやつの提案をおこない、データの推移をみながら、その方の"許容範囲"をみつけていくことが長い目で治療の成功の鍵だったと思います。また、よくある運動と食事の交換方程式はたいていカロリーオーバーに傾く事実も数値でお示しする必要があります。
 ひとつ注意したいのは、この方がこれまで間食を食べる習慣がなかったのに糖尿病薬物療法の開始とともに間食をはじめていることです。SU薬では昼食前、夕食前の低血糖を起こす場合があり、低血糖までいかなくても空腹感から間食に結びつく可能性があります。特に低血糖症状を経験されると“予防的に食べる”という正当性から間食がいつのまにかだんだんと増えて、ひいては血糖コントロールの悪化、体重増加という悪循環になります。主治医との連携をとって低血糖をおこしている可能性はないかどうかも検討していく必要があるでしょう。


2010年01月

※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。

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