いま、1型糖尿病は
2009年12月14日
髪の毛が抜けるんです

「先生、髪の毛がごそっと抜けるんのです。大丈夫でしょうか?」たいてい、診察の最後になってお聞きになられます。心配そうに、お聞きになられます。もちろん、全員、女性です。
女性にとって、髪の毛は、大昔から、命と同じなのですね。命と同じで、とても大切なものなのです。ごそっと抜けるようになった、ブラシに長いものが付いてくる、髪を洗っていると、長いものが何本も抜けていく・・・、それも毎日・・・。これを見てびっくりされるのは、至極当然なことです。
インスリン注射を欠かせなくいことになった、ことに対して、ある意味、ショックであったろうと思いますが、退院後は、それはそれで仕方のないことと自分の中なかで理解はできるようになってきてはいても、そのころになって、ごそっと髪の毛が抜け始めるわけですから、気持ちが悪い、また別の病気になったのか、私の体はどうかなったのか、と疑心暗鬼(疑診案擬)になって、不安になって、自分に対して自信が持てなくなり始めるのは、とても、当然なことでしょう。
たいてい、微笑んで、私は言います。
「大丈夫ですよ、ちゃんと生えてきますからね」心配ないことには、心配ないのだと医療者がきちんとお話する、これはとても、大事なことですね。
「6ヵ月くらいしたら、もとに戻っていますからね」
1型糖尿病を例にとれば、発症したときには1個1個の体の細胞も、重症の糖分欠乏状態であったあることが想像されます。欠乏状態で死に絶える細胞もあるでしょう。我々の体の細胞は、毎日、古くなった細胞は死んで新しい細胞に置き換わることを行っています。お風呂に入ると垢がでますが、これは古くなった皮膚の細胞ですね。かぜをひいて直りかけのころの黄色い鼻漏もそうですね。
1型糖尿病が発症したとき、髪の毛を作る細胞、つまり毛根細胞が障害を受け、死に絶えたために、、多くの髪の毛が一度にごそっと抜けてしまうことが起きた、と考えられます。これから、新しい毛根細胞に置き換わっていくわけですね。
インスリン治療が開始されて血糖値が落ち着いてくると、新しい毛根細胞が細胞分裂してできあがってきますので、新しい髪の毛を作り始めます。よって、しばらくすれば、もとに戻るというわけです。
私は6ヵ月くらい様子をみます。6ヵ月くらい様子をみていても、生理が戻ってこなければ、婦人科の先生にご紹介します。婦人科的治療が始まると、生理がまた再開されます。体が元の生理の周期を思い出したような、そんな感じですね。
1型糖尿病発症する前から、きちんと生理がきていなかった方は、生理がきちんと来るまでに、いろいろ婦人科的治療が必要になることもあります。
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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