いま、1型糖尿病は
2009年07月16日
いつも注射している部位に注目!
その決まりきったところ、というのが、お腹のおへその左右のあたりか、太もものあたりか、左の腕あたりかと思います。
その部位が膨らんでいないか、手でなぞってみてください。昨年か1昨年でしたか、有名な医学雑誌のコラム的記事に、お腹のCT写真が載っていて、おへその左右に同じような皮下の膨らみが映っていました。「インスリンボール」などといった名称がついていましたが、もとを正せば、インスリン注射をその部位に集中して起こなった結果であります。
この膨らんだ部位に注射すると痛くないのですね。だから、またその部位に繰り返して注射してしまう・・・。
インスリンの吸収が悪いと、どうなるのでしょう。このインスリンが食前のインスリンだったら、食後血糖値のほうが先に上がってきて、そのうち注射したインスリンが血中をまわり血糖を下げるように作用し始め、食後3時間、4時間経過したときに異常なくらいにインスリンの効きがよくなって血糖値が低くなってしまう、このようなことが起こりやすくなるわけですね。
最近、注射部位を変更して、インスリン注射量が3分の2くらいに減った方がいました。
- 注射した部位から漏れることも
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また、同じ部位に繰り返し注射していると、その部位の皮膚が硬くなってきます。
そうすると、よく起こってくるのが、注射して5、ないし10を数えて針を抜いても、針を抜いたときに、皮膚の中から注射したはずのインスリンの液がもどってくるのです。漏れてくるという表現がいいですね。1、2単位のときもありますが、多く注射している方では、もっと漏れてきます。
- アルコール綿が吸い取る
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針を抜いたあとにアルコール綿を当てる習慣の方ですと、毛細管現象により綿に吸い取られると、英国の患者教育用の本に記載されていました(どちらにしても、針を抜いたあとは、アルコール綿をその部位に当てたり、押し付けたり、する必要はないのですね)。
このようなことから、20単位注射したいと20にダイアルを合わせて注射しても、皮下には20単位のインスリンが入っていないようなことが起こります。当然、血糖値は思うほど下がらないことになります。20単位が少ないのか、と思い、次に22単位を注射してみる。今度は皮下からの漏れがなかったのでよかった、と思っていたら、その後思った以上に血糖値が下がってしまいった、ということが起こりうることになります。
- 適切な注射量はいくつなのか?
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漏れたりしていることに気づかず、なぜ下がらないのだろうとフシギに思ったり、多くしたら低血糖になったり、自分の適切なインスリン量が、わからなくなってしまい、そのうち、なにがなんだか、測定した値にまで、信用できなくなってきてしまう・・・。
このようなことはよくあることです。いらいらしてきますし、なにより、自分の起こなっていることに不安を感じてきてしまいますし、医師の言うことも信用ならないし・・・となってきます。
こんなときはどうしましょう。漏れ量をあらかじめ計算して多目に注射する、ということも一案ですが、ちょっとこわいですね。
では、注射する部位の皮膚をちょっと上か、下にずらしてみて、それからその部位に注射してみましょう。注射が終了して抜いたとき、皮膚がもとにもどるので、注射した入り口と注射した皮下との間に、少しばかりの“断絶”が起こるので、これで、漏れを防ぐことができます。
このアイデアは私のアイデアではありません。先ほどの英国糖尿病協会のインスリン注射マニュアルに、大昔、記載されてありました。さすが、英国糖尿病協会!と思いました。
その後、このアイデアを、外来でお話して実行してもらっておりますが、どうも、よろしいようです。
ちょっとしたコツですね。本日の大事なことは、インスリンの注射部位。
同じところにいつも注射しないこと。そして、注射部位を大きくローテートさせてください。
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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