いま、1型糖尿病は

2009年04月08日

学校ではインスリン注射は保健室で・・・

 小学生の高学年になると、1型糖尿病のお子さんのほとんどは4回注射になっているかもしれません。
 4回注射になると、昼食前に学校で注射することが必要となります。
自分でできるなら
 東京女子医大の糖尿病センターでは、2回とか3回注射でうまくいかなくなってそろそろ4回注射の時期かなと思われるとき、自分でできるなら、4回注射をおススメしています。無理に4回注射するのをお願いはしておりませんが、もちろん3回注射でうまくいっている場合は、3回注射のままでいいですね。
 3回注射でやっていても、学年が上がれば上がるほど生活が複雑になり、塾や課外活動、部活などで、夕食時間が遅くなりがちです。
 よって、夕食までに、なにかつまむこともあったり、部活仲間と一緒に何か食べるときもあるでしょう。これは友達付き合いだから、付き合いを大事にやっていきたいですね。もう間食の量が普通の食事の1回分になることもあります。血糖値をあまり乱すことなく、しっかりと食べていただきたいと思います。
 このような状況になりますと、頻回注射法のほうが、血糖値のコントロールをやりやすくなります。
 学年が上がると、そろそろなんでも自分でやってみたい、という自我が目覚めてきて、「自分で昼は注射できるよ」というようになってきます。
 この気持ちを大事にしたいな、といつも思っています。押しつけではなく自分からやってみる、という気持ちを大事にしたいです。
足慣らしに夏休みから
 「自分でできるかな?」、「できる?」と本人にしっかり聞いてから、頻回注射法に切り替えていきます。すこしでも、躊躇するようなら、無理強いはしません。
 また、足慣らしに、夏休みなど休み中だけ頻回注射をしてみる、というようなやり方でもいいですね。学校が始まったら、もとに戻す・・・。なんなら、日曜日など休みの日だけ4回注射にしてみる、というのもいいですね。
学校で注射すること
 当センターには小児慢性特定疾患(20歳未満の方ということ)に該当する患者さんが、たぶん全国でも1、2位を争うほど、多く、受診されています。よって、通学している小学校、中学校の数も多い、ということになります。
 数も多いのですが、都内だけでなく、関東甲信越に分布していますし、また小さい患者さんは全国からやって来られますので、小学校、中学校、また幼稚園も、全国に散らばっているといえます。
 全国の学校、幼稚園ともなりますと、それはいろいろありました。これまでにもいくつか、トラブルめいたこともありました。昼に注射する必要のあるインスリン療法に、学校側が慣れていなかったことが大きな原因でしょう。
 体育のときも普通でいいのに、どうしてよいか、わからないために「1人だけ帽子をかぶれ」と言われた学校もありました。もちろん、回避。
 養護学校でなければ通学はだめ、と言われて、こちらから学校に電話して説明して大丈夫になったことも、過去にはありました。夏のプールの課外活動もだめと言われたことも。しかし、お話しすると、学校の先生はわかってくれますね。
 最近では、全くといっていいほど、トラブルはありませんでした。
学校ではどこで?
 最近の学校の昼休み時間は短く、また給食なので、給食当番にでも当たったりしたら、それこそ時間が全くないようです。
 「保健室で注射したい」というお子さんもいますし、「教室でみんなが見ていても大丈夫、注射できる」というお子さんもいます。みな、それぞれです。
 みんなが見ることによって、「そうなんだ、○○ちゃんは注射してエネルギーをもらっているのだ」と理解するお友達も多いと聞きます。たとえ、低血糖になって変な行動をしてもお友達がかばってくれた、ということも聞きます。
 どんなに餓鬼大将がクラスにいても、注射しているお友達にはやさしいようです。自分がきらいな注射をいとも軽々とできるすごい子だ、というわけです。
 最近、教室内で、なんの問題もなく注射してできていたのに、「保健室で行うように」と学校側から言われたお子さんがいました。私はとてもびっくりしました。さっそく、校長先生に電話しました。「多くの学校に通学するお子さんを見てきましたが、このような学校ははじめてです」と柔らかくお伝えしました。何か教室で問題でもおこったのか、これはたいへんと思い、これもお聞きしましたが、「なにも問題はおきていない。予防的だ」という説明でした。「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」といいますが、「羹に懲りない前に膾を吹く」ような説明で、こんな学校もあることに、びっくりしました。
 是非、養護の先生や保健の先生にがんばってもらって、このような学校がなくなるように、お願いしたいと思います。
 教室内で注射できる勇気のあるお子さん達です。この気持ちを大きく伸ばしてあげてほしいと思います。

 このサイトをごらんになった養護の先生、保健の先生、是非、お声を上げてこのような学校がなくなるようにお願いします。もちろん、医師もがんばります。

参考 ○回注射とは?頻回注射法とは?
1日に何回インスリン注射するかという回数を表します。
2回注射法で代表的なものはあらかじめ2種類のインスリンが混ぜてある混合インスリン製剤を朝食、夕食前に注射する方法です。
3回注射法の代表的なものには、2回法で紹介した混合インスリン製剤の1日2回打ちに昼食前の超速効型(あるいは速効型インスリン)の1回、朝夕の混合型インスリン注射と間食時の超速効型(あるいは速効型インスリン)の1回、朝、昼の速効型(超速効型)インスリンと夕食前の混合型インスリン注射の方法があります。
1日4回以上のインスリン注射法を頻回注射法(インスリン強化療法)と呼び、朝食、昼食、夕食の食事の前に超速効型(あるいは速効型インスリン)を注射し、朝食、夕食、就寝前などに1回から2回の持効型溶解(あるいは中間型インスリン)の注射をするものです。
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