いま、1型糖尿病は

2009年03月12日

血糖値が高くなったらインスリン注射をすればいい?

 インスリン注射をしている方は、インスリンが血糖値を下げることを知っています。しかし、いつもより多く食べることになって、またいまこんなものを飲むと血糖値が上がるな、とわかっていても、そこですぐインスリン注射の量を調節したり、食べる時間をずらしたりせずに、上がったらそのときに対処すれば、つまり血糖値が高くなったらインスリン注射をすればいいのだと思ってしまってはいませんか。
 これは、測定した血糖値が高かったら、ヤバい、と何も考えないですぐ追加のインスリン注射をしてしまう人と同じ考え方ですね。
インスリンは血糖値を下げますが・・・
 何かを食べてその後に血糖値がどんなふうな上がり方をするのか、ちょっと考えてみましょう。「食後の血糖曲線」ということですね。
 血糖曲線は食べはじめるとすぐ勢いよく(加速度をつけて)上昇するカーブを示します。加速度を付けて!ここが大事なところです。
 だんだん上がっていきますが、やがて食事も終了しますし、180mg/dL以上に上がると尿に排泄されることもあって、だんだん血糖値の上がる速度がにぶってきます。
 この時に、血糖値が高いからといってインスリンを追加注射すると、血糖値の上昇速度がにぶっているところに速効型ないし超速効型インスリンを注射することになりますので、インスリンによる血糖降下作用が加速度をつけて走り出します。つまり、加速度をつけて血糖値が下がり始めるわけですね。その結果、血糖値が想像した以上に、下がってしまうことが起こりやすくなります。低血糖になって失敗することになります。
 たしかに、血糖値が高すぎると、つい追加インスリンを注射したくなるものです。この気持ちはよくわかります。早く、血糖値を下げたいという気持ちです。ところが、現実は下がり過ぎてしまう。重症の低血糖になることもよくあります。
血糖上昇カーブとインスリンによる
血糖下降カーブをシンクロナイズさせる
 インスリンを注射しますと、注射した皮下の部位から吸収されて毛細血管に入って、そこから大きな血管に入っていき、体全体の細胞に行き渡っていき、それぞれの1個1個の細胞の表面に到達し、細胞の中に糖を取り込んでいく。そうやって、血糖が下がっていくカーブを描がくことになります。
 2つのカーブつまり食事による血糖上昇カーブとインスリン注射による血糖降下カーブ、をきちんと合わせる、つまりシンクロナイズさせると、食後血糖は、上がり過ぎず、下がり過ぎず、ということになります。
上手にシンクロナイズさせると
 HbA1c 6.5%前後の1型糖尿病の方に、食事(サンドイッチ2個分)前に血糖測定し、インスリン注射(超速効型インスリン注射量は自分で決めてもらった)をしてもらい、その後食事を取ってもらって、30分、60分、90分、120分と血糖値を測定したことがあります。食後はテレビをみたり、読書をしてもらったり、自由にしてもらいました。運動らしきものはしませんでしたが。
 さて、血糖値はどうなったでしょうか。びっくりするほど、食前80〜90mg/dLから食後は高くても150mg/dLまでで留まり、2時間すると食前にもどっていました。その後、次の食事まで低血糖は起こしませんでした。
 きちんとシンクロナイズさせると、食後は高血糖も低血糖もおこさないのだ、と実感した次第です。そして、長年血糖コントロールがうまくできている方は食事の量と内容をみてきちんとそれに合ったインスリン量を決めることがなんなくできるのに、またびっくりしたものです。
[ DM-NET ]



※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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