1型糖尿病の子供は、いくつかのメンタルヘルス上の問題を抱えることが多いとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学およびチェコ共和国国立精神保健研究所のTomáš Formánek氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Mental Health」に7月17日掲載された。
報告された研究によると、1型糖尿病の子供は糖尿病のない子供に比べて、気分障害を発症する可能性が2倍以上高く、不安症に苦しむ可能性は50%高く、また摂食障害や睡眠障害などの行動上の問題が発生する可能性は4倍以上高いという。
ただし、この研究結果は同時に、このようなメンタルヘルス疾患が、1型糖尿病という病態が原因で引き起こされるものではないことも示唆しており、「子供たちが抱えるこのようなリスクは、むしろ慢性疾患を継続的に管理し続けることにともなう『糖尿病の苦痛』が原因のようだ」と、著者らは述べている。
1型糖尿病は、インスリンを生成している膵臓のβ細胞を免疫系が攻撃することで発症する。β細胞がダメージを受けると、インスリンを生成する能力が失われるため、生存のためにインスリン療法が必要となる。
治療は生涯にわたり、日々、絶え間ない自己管理の負担に直面する。また、偏見や差別、自己効力感の低下、将来の合併症の不安、経済的な負担などによるストレスが生じやすく、これらを「糖尿病の苦痛(diabetes distress)」と呼ぶことがある。
これまでにもこのような糖尿病の苦痛が、1型糖尿病の子供たちのメンタルヘルス状態を悪化させたり、自己管理に悪影響を及ぼしたりする可能性が指摘されていた。
Formánek氏らの研究では、チェコ共和国の1型糖尿病の子供たち4,500人以上の患者登録データが用いられた。
データ解析の結果、1型糖尿病の子供たちに見られるメンタルヘルス関連の問題は、この病気を発症後には常に食事の摂取量を判断したり、血糖値をチェックしたり、インスリンを注射したりしなければならないといった、生活に大きな変化を強いられることに起因するものである可能性がみいだされた。
また、社交行事へ参加する機会が減ったり、ほかの子供たちや教師、さらには家族からも孤立していると感じたりすることも少なくないという実態が明らかになった。
その影響もあって前述のように、1型糖尿病の子供たちの間で、不安症や摂食障害、睡眠障害などが多く見られた。ただし、統合失調症などの精神疾患を発症するリスクは低く、同年代の子供たちの約2分の1だった。
論文の上席著者であるケンブリッジ大学のBenjamin Perry氏は、「1型糖尿病患者は『糖尿病の苦痛』を経験しやすいことが知られている。その苦痛には、血糖値に対する極度のフラストレーションや孤立感なども含まれると考えられ、成人でも燃え尽き症候群や絶望感、あるいはコントロールの放棄につながる可能性がある。そのため、1型糖尿病の子供たちが成人するまでの間に、メンタルヘルス上の問題が顕在化するリスクが高いとしても、不思議なことではない」と述べている。
[HealthDay News 2024年7月18日]
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