これまで長い間、食物繊維の摂取量を増やすべきとするアドバイスがなされてきているが、食物繊維摂取による健康上のメリットは人それぞれ異なることが報告された。単に多く摂取しても、あまり恩恵を受けられない人もいるという。米コーネル大学のAngela Poole氏らの研究によるもので、詳細は「Gut Microbes」に6月24日掲載された。
食物繊維は消化・吸収されないため、かつては食品中の不要な成分と位置付けられていた。しかし、整腸作用があること、および腸内細菌による発酵・利用の過程で、健康の維持・増進につながる有用菌(善玉菌)や短鎖脂肪酸の増加につながることなどが明らかになり、現在では「第6の栄養素」と呼ばれることもある。
また糖尿病との関連では、食物繊維が糖質の吸収速度を抑え、食後の急激な血糖上昇を抑制するように働くと考えられている。そのほかにも、満腹感の維持に役立つことや、血圧・血清脂質に対する有益な作用があることも知られている。
本研究では、食物繊維の一種である難消化性デンプン(resistant starch;RS)を摂取した場合に、腸内細菌叢の組成や糞便中の短鎖脂肪酸の量などに、どのような変化が現れるかを検討した。
59人の被験者に対するクロスオーバーデザインで行われ、試行条件として、バナナなどに含まれている難消化性デンプン(RS2と呼ばれるタイプ)と化学的に合成された難消化性デンプン(RS4と呼ばれるタイプ)、および易消化性デンプンという3条件を設定。5日間のウォッシュアウト期間を挟んで、それぞれ10日間摂取してもらった。
解析の結果、難消化性デンプンの摂取によって腸内細菌叢や短鎖脂肪酸などに大きな変化が生じた人もいれば、あまり変化がない人、または全く変化がない人もいた。それらの違いは、腸内細菌叢の組成や多様性と関連があることが示唆された。
研究者らは、「結局のところ、ある人の健康状態を腸内細菌叢へのアプローチを介して改善しようとする場合、どのような種類の食物繊維の摂取を推奨すべきか個別にアドバイスしなければならない」と述べている。
論文の上席著者であるPoole氏は、「過去何十年もの間、全ての人々に対して一律に食物繊維の摂取を推奨するというメッセージが送られてきた。しかし今日では、個人個人にどのような食物繊維の摂取を推奨すべきかを決定するうえで役立つであろう、精密栄養学という新しい学問領域が発展してきている」と述べている。
今回の研究でも、食物繊維の摂取によって短鎖脂肪酸の産生が増えるか否かは、その人の腸内細菌叢によって左右される可能性が浮かび上がった。また意外なことに、難消化性デンプンではなく易消化性デンプンの摂取によって、短鎖脂肪酸がもっとも増加していた。短鎖脂肪酸は、血糖値やコレステロールの改善に寄与することが明らかになりつつある。
研究者らは、個人の腸内細菌叢の組成を把握することで、その人がどのようなタイプの食物繊維に反応するのかを事前に予測でき、その結果を栄養指導に生かせるようになるのではないかと考えている。
「食物繊維や炭水化物にはさまざまなタイプがある。1人1人のデータに基づき最適なアドバイスを伝えられるようになればよい」とPoole氏は語っている。
[HealthDay News 2024年6月27日]
Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock
[ Terahata ]