食塩を代替塩に置き換えると、低血圧リスクを高めることなく高血圧リスクが約4割抑制されるとする研究結果が報告された。北京大学臨床研究所(中国)のYangfeng Wu氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に2月12日掲載された。
世界保健機関(WHO)によると、高血圧は心臓病発症と心血管死の主要な危険因子であり、世界中で14億人以上の成人が高血圧に罹患していて、毎年1,080万人が高血圧に関連して死亡しているという。
Wu氏は、「人々は手頃な価格で容易に入手できる加工食品を利用することを通して、塩分を過剰に摂取してしまうことが少なくない。食品の選択が心臓の健康に及ぼす影響を認識して、減塩に対する人々の意識を高めることが重要だ」と述べている。
Wu氏らは、中国の介護施設居住者を対象とする無作為化比較試験により、食塩を代替塩に替えることの血圧への影響を調査した。
研究参加者は55歳以上で高血圧でない(140/90mmHg未満)611人(平均年齢71.4歳、女性26%、血圧121.9/74.4mmHg)。無作為に2群に分け、298人には通常の食塩を使った料理を提供し、313人には代替塩を使った料理を提供した。
代替塩は、ナトリウム濃度が62.5%に抑えられていて、カリウムが25%を占め、残りの12.5%はキノコやレモン、海藻などを利用した香料で構成されていた。
2年間の追跡期間中の100人年当たりの高血圧発症率は、通常塩群では24.3であるのに対して代替塩群では11.7であり、交絡因子調整後のハザード比は0.60(95%信頼区間0.39~0.92)と、代替塩群で有意なリスク低下が観察された(P=0.02)。
なお、高齢者では高血圧とは反対に、血圧が下がり過ぎてしまう危険な低血圧も起こりがちだが、代替塩群でそのような低血圧の増加は認められなかった〔リスク比1.10(95%信頼区間0.59~2.07)〕。
Wu氏は、「われわれの研究結果は、人々が食事を楽しみながら血圧を高めることなく、自分の健康を守り心血管リスクを最小限に抑えられる方法を示している」と述べている。
アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRik Olde Engberink氏が、この研究発表に対して付随論評を寄せている。その中で同氏は、「これまでのところ、人々に対して単に塩分摂取量を減らすことを訴えるだけの対策の効果は十分でないことが示されており、本研究の結果はそのような方法に代わる公衆衛生戦略となり得る」と述べている。
また、本研究において介護施設で提供する食事への加工食品の利用が週に1回までに制限されていたことに着目し、加工食品に含まれるナトリウム量の削減が重要である可能性も指摘。「食品業界全体で代替塩を採用して、加工食品中のナトリウム/カリウム比を改善していくべきではないか」と付け加えている。
[HealthDay News 2024年2月13日]
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