キムチは古くから韓国の食卓の定番メニューであり、近年では米国でも人気が高まってきている。そのキムチを日常的に摂取することが、体重増加の抑制につながるのではないかとする研究結果が、「BMJ Open」に1月30日掲載された。
論文の上席著者である中央大学校(韓国)のSangah Shin氏によると、「男性では、1日当たり1~3人前分のキムチを摂取していることが、肥満リスクの低下と関連がある」という。
ただし同氏は、「キムチには塩分が多く含まれていることに注意が必要であり、またキムチ摂取量がより多い場合には、肥満リスクが上昇する可能性も示唆された」と付け加え、「キムチを多く食べるほど良い」と単純化した解釈をしないよう注意を呼び掛けている。
これまでの動物実験から、キムチ由来のプロバイオティクスには抗肥満作用があることが示されている。ただし、ヒトを対象とする疫学研究でのエビデンスはわずかしかない。
Shin氏らは、2004~2013年の韓国国民健康栄養調査(KNHANES)のデータを用いた横断的解析により、この点を検討した。解析対象は、40~69歳の成人11万5,726人(平均年齢51歳、男性31.8%)。肥満(BMI25以上)の有病率は、男性36.1%、女性24.7%。
キムチの総摂取量が1日当たり1食分未満の群を基準として、年齢や飲酒・喫煙・運動習慣、摂取エネルギー量、食物繊維・ナトリウム・カリウム摂取量、婚姻状況、教育歴、所得などを調整後、男性ではキムチ総摂取量が1日当たり1~2食分の群の肥満オッズ比(OR)は、0.875(95%信頼区間0.808~0.947)、1日当たり2~3食分の群ではOR 0.893(同0.817~0.978)であり、オッズ比の有意な低下が示された。一方、女性ではキムチ総摂取量と肥満との関連が非有意だった。
キムチの素材によって、体重との関連が異なることも考えられる。例えば、1食分の重量も水分含有量によって50~95gの範囲で異なる。そこで、素材別の解析を施行した。
すると女性でも、白菜を用いるキムチ(ペチュキムチ)の摂取量が1日当たり2~3食分の群でOR 0.921(95%信頼区間0.865~0.981)、大根を用いるキムチ(カクトゥギ)の摂取量が1日当たり1~2食分の群でOR 0.895(同0.855~0.938)という有意な関連が示された。なお、ペチュキムチ、カクトゥギの1食分の重量はともに50g。
男性では、ペチュキムチ、カクトゥギのいずれについても、キムチ総摂取量での解析結果とほぼ同様の結果が示されたが、カクトゥギについては1日当たり2~3食分の場合に肥満リスクとの関連が非有意だった。また、男性・女性ともに、その他の素材のキムチの摂取量は、肥満リスクとの関連が乏しかった。
研究者らによると、キムチに含まれているLactobacillus brevisやL. plantarumという植物性乳酸菌には、抗肥満作用があることが知られているという。
ただし、「本研究からは因果関係は証明されず、ほかの因子によってこの関連が生じているのかもしれない」と、研究の限界点を述べている。また、示された関連はJカーブのようであり、1日当たりのキムチ総摂取量が5食分以上の場合、肥満のオッズ比が性別を問わず、非有意ながら1を上回っていることも、留意すべき点として挙げている。
そのほかの留意点として、キムチには塩分が多く含まれているため、心臓には良くない可能性があることを指摘。一方で、野菜を発酵させて作るキムチにはカリウムが多く含まれているため、塩分による健康リスクが軽減される可能性もあるとのことだ。
研究グループでは結論として、「キムチに含まれる塩分やそのほかの成分の健康への影響を考慮した上で、適量を摂取することが推奨されるのではないか」と述べている。
[HealthDay News 2024年1月31日]
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